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第248話

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 俺たちが婚約式を済ませてから数日、ここ最近の状況から考えても珍しいくらいに、魔法学院に静かで平穏な時間が流れていた。というのも、ローラ嬢が王妃教育の為にと、ここ数日間王城に毎日登城とじょうして忙しくしているからだ。
 この王妃教育に関しては、かつて婚約者だったマルグリットも幼い頃からこなしており、毎日の様に登城しては沢山の事を叩き込まれていたそうだ。王妃教育を任されている者は、例えどんな爵位の娘であっても関係なく、王妃に相応しい女性になる様に厳しく接するとの事。
 マルグリットも、その担当者に認めてもらえる様に努力し、最後には王妃教育を任された者が笑みを浮かべ、合格をもらう事が出来たと教えてくれた。その時、何処か懐かしそうでいて悲しそうな顔をしていたので、俺はマルグリットの手を優しく握ってあげた。俺の気持ちが伝わった様で、マルグリットも過去の事であると、笑みを浮かべて何時もの様子に戻ってくれた。

「ここまで静かな学院は、本当に久しぶりです」
「ローラさんが好き勝手していて、毎日学院のどこかで騒がしい声が響いていましたから」
「アルベルト殿下たちの婚約者の座を狙っていた彼女たちも、一旦はローラさんの例のあれで大人しくなりましたけど、何かしらを企んでいるという噂も聞きます」
「もしそれが本当だったとしても、皆さんは攻撃されない限りは何もせずに、協力して彼女たちの争いから逃げてください」
『はい』

 一番嫌な展開となるのは、イザベラを筆頭にした派閥に属している生徒たちが、ローラ嬢と女豹たちの争いに巻き込まれる事だ。現段階において、特にローラ嬢側からちょっかいをかけられてはいないが、この先もそうであるかは限らない。その時が何時起こってもいい様に、何かを仕掛けられた時の行動について、こうしてお茶会で集まる度に言い聞かせている。

(頭も良いし、行動力もある彼女たちだから、イザベラの言葉に従って直ぐに争いから逃げてくれるだろう)

 一般生徒である平民の生徒たちも、この派閥限定になってしまうが、昔に比べると自分と貴族令嬢たちと仲が良くなっている。互いに笑みを浮かべながら談笑もしているし、休日には一緒に王都に出掛けて遊んで楽しんでいる程に、爵位などの身分差も関係ない友人となっている。
 ローラ嬢がもし何かを仕掛けるとしたら、俺やイザベラたちに仕掛けてくるのではなく、まず派閥に属している彼女たちを狙うだろう。派閥に属している彼女たちの存在は、魔法学院という若い男女が集まる場所において、イザベラが持っている力を簡単に可視化出来る力であるからだ。彼女たちがイザベラを支持しているという事が、そのまま魔法学院において大きな力となる為、先に派閥の切り崩しを狙ってくると予想している。
 彼女たちはイザベラたちだけでなく、最近仲良くなった俺にとっても、派閥や身分など関係なく親しい友人だ。もしもの時は、マルグリットを救う時と同じ様に、王族を敵に回してでも彼女たちを悪意から守る。友人たちをローラ嬢から守るために、俺たちは持ち得る力を揮う事に一切の躊躇ちゅうちょはない。
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