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第238話

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 驚きに身体が固まっていたレギアス殿下だったが、暫くした後にハッと我に返って、冷静にアモル神の分霊を観察し始める。その切り替えの早さは、流石は海千山千うみせんやませんを潜り抜けてきた王族といったものだ。そんなレギアス殿下を、アモル神はどこか懐かしそうにしながら、愛の神らしく優しい瞳で見つめている。

(レギアス殿下も、古の勇者の血を引く直系の末裔。その関係から、アモル神は懐かしさを感じているんだろうな)
「初めまして、レギアス。私は、神々の一柱にして愛を司る女神、アモルといいます」
「…………お初にお目にかかります、アモル様。アイオリス王国の第二王子、レギアス・アイオリスと申します」
「突然現れて、私が本物の神であるのかを信じられないのも分かります。貴方を責める事もありませんし、気分を害した訳でもありませんので、安心してください。ただ、これから語る事は、私たち神々や世界に関わる事になります。それだけは、レギアスも心して聞いてください」
「分かりました」

 アモル神が俺たちを代表して、レギアス殿下に神々の力から、聖獣の存在や力に関して説明していく。その際に、クララやそのお母さんであるセラスさんが、聖女ジャンヌの血を引く直系の末裔だという事も伝えられた。衝撃の事実を伝えられたレギアス殿下は、聖女ジャンヌの血が現代まで生き残っていた事や、そんな聖女ジャンヌの末裔が自分の一つ上の世代という近さに驚いていた。アモル神はレギアス殿下に神としての圧を掛けて、この事はこちらから明かすかしない限り、一切の他言無用という事を約束させた。

「まさか聖女ジャンヌの血筋が、まだこの国に残っていてくれたとはな」
「王族ではどういう風に伝わっているんですか?」
「他の者たちは分からないが、私や叔父の考えでは、聖女ジャンヌはその消息を絶った時に他国に出たと考えていてた。あの当時の状況や、先祖である勇者が書き記した日記の内容からも、その可能性が一番高いと予想出来たからな」
「なる程」
「それに加えて、先祖の日記には神に力を授けられた事も、この古き森に聖獣と呼ばれる存在がいる事も記されてはいなかった。正直、聖女ジャンヌの末裔が存在した情報だけでも驚くのに、さらに大きな二つの情報も加わって混乱している」

 確かに、こんな国家機密みたいな情報を一気に三つも連続して知らされたら、誰であっても混乱する程に驚くのも無理はない。だがこれらの情報は、ローラ嬢の疑惑に関して説明する為に必要な情報だ。レギアス殿下には悪いが、今伝えた情報を出来るだけ早く整理してもらい、ローラ嬢に関する情報に集中してもらわないといけない。   
 アモル神や俺たちが考えている最悪の想定が合っていた場合、聖女ジャンヌの後継者でありアルベルト殿下の婚約者となったローラ嬢は、嘘まみれの悪知恵が働く女性というだけでは済まなくなるからだ。
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