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第190話
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雲一つない快晴の下、魔法学院にある実習用の闘技場において、ナタリーさんをかけた決闘を行う。観客席には、魔法学院の生徒たちや先生たち、アイオリス王国の貴族たち、それから陛下に王妃といった王族たちなど錚々たる面子が座っている。そしてその中には、魔法競技大会で見事優勝を勝ち取った、第二王子であるレギアス殿下の姿もある。レギアス殿下は、ジッと闘技場内にいる俺とアルベルト殿下たちを見つめて、静かに何かを考えている様だ。
他にもコーベット男爵夫妻にナタリーさん、カノッサ公爵夫妻にイザベラ嬢たちといて、俺の事を見守ってくれている。イザベラ嬢たちに視線を向けると、皆少し不安そうにしているので、俺はニッコリと微笑んで安心させてあげる。イザベラ嬢たちはそれを見て少しは安心してくれたのか、不安そうにしつつも微笑みを返してくれた。
最後にジャック爺とカトリーヌさん、そしてその傍に座っている、ローザ・‟ナターシャ”・アウレリアとラインハルト王弟殿下を見る。二人ともニヤリと不敵に笑いながら、同時に右手で親指で首を掻き切る動作をして親指を立てる。あの二人は、立会人のお願いをする為に初めて会った時から、俺を妙に気に入ってくれている。今回の決闘の立会人に関しても乗り気で、相手であるアルベルト殿下や側近たちを、徹底的に叩きのめせと言ってきたからな。俺は過激な行動をする二人を見なかった事にして、スーッと二人から視線を外した。
「これより、アイオリス王国の法に基づく、正式な決闘を始める!!」
この決闘の審判を務める男性が声を上げ、遂に決闘が始まる事になった。事前に立会人によって決められたルールは、第三者が用意した木剣を使用し、相手が降参または戦闘不能となるまで戦うというものだ。相手の命を奪う事は、陛下の鶴の一声により禁じられているので、どの様な理由であろうとも破れば重罪となる。破られた時点で即刻決闘は中止となり、拘束されて投獄の流れから、最悪の場合処刑となるだろう。
「今回の決闘は、ウォルター殿と殿下たち四名による、一対一の連戦という変則的な決闘となります。事前に定められた規則により、武器はこちらの木剣を使用してもらいます。制限時間は無制限、魔法の使用も許されています。そして、勝敗は相手の降参の宣言、または戦闘不能となる事で決まります。ですが、相手の命を奪う事は固く禁じられています。これを破った者は、例え殿下であろうとも罰せられます」
「分かっている。要は、この男を殺さなければいいだけの話だろう?」
「…………極論ではありますが、その通りです」
審判の男性の答えに、アルベルト殿下と側近たちは満足そうに笑みを浮かべる。そして俺に視線を向けて、ハッキリと見下しながら、その笑みをニタリと変えて嘲笑ってくる。第一王子としての、優秀な魔法使いとしての絶対的な自信をその身から溢れさせ、自身の勝利を疑う様子は一切ない。傍にいる側近たちも同様で、自分の勝利を一切疑っていない。
「勝者は、コーベット男爵家のご令嬢であるナタリー・コーベット嬢との、今後一切の接触禁止を相手に課す。そして敗者は、これに必ず従う事とする。殿下たちもウォルター殿も、この条件に相違ありませんね?」
「はい、相違ありません」
「私たちも相違ない。まあ、属性魔法を使えぬ様な半端者に、私たちが負けるはずがないがな。ナタリーも、貴様の無様な姿に目を覚ますだろう」
「…………」
「だんまりか。まあいい。直ぐに貴様は私の力を思い知る。殺しはしないが、存分に痛めつけてやるから覚悟しろ。私のナタリーに手を出した罪を、貴様の血によって贖わせてやる」
「ナタリーは、俺の大切な人は、決して殿下の物ではありません。当然俺の物でもありません。彼女は一人の人間で、好きもあれば嫌いもあります。それが分からない限り、俺に勝ったとしても彼女が振り向く事はありません。――――絶対に」
「命乞いでもするのかと思ったら、……言いたい事はそれだけか?ナタリーは、私の妻になる女性だ。それこそ、私の運命に定められた絶対だ!!」
他にもコーベット男爵夫妻にナタリーさん、カノッサ公爵夫妻にイザベラ嬢たちといて、俺の事を見守ってくれている。イザベラ嬢たちに視線を向けると、皆少し不安そうにしているので、俺はニッコリと微笑んで安心させてあげる。イザベラ嬢たちはそれを見て少しは安心してくれたのか、不安そうにしつつも微笑みを返してくれた。
最後にジャック爺とカトリーヌさん、そしてその傍に座っている、ローザ・‟ナターシャ”・アウレリアとラインハルト王弟殿下を見る。二人ともニヤリと不敵に笑いながら、同時に右手で親指で首を掻き切る動作をして親指を立てる。あの二人は、立会人のお願いをする為に初めて会った時から、俺を妙に気に入ってくれている。今回の決闘の立会人に関しても乗り気で、相手であるアルベルト殿下や側近たちを、徹底的に叩きのめせと言ってきたからな。俺は過激な行動をする二人を見なかった事にして、スーッと二人から視線を外した。
「これより、アイオリス王国の法に基づく、正式な決闘を始める!!」
この決闘の審判を務める男性が声を上げ、遂に決闘が始まる事になった。事前に立会人によって決められたルールは、第三者が用意した木剣を使用し、相手が降参または戦闘不能となるまで戦うというものだ。相手の命を奪う事は、陛下の鶴の一声により禁じられているので、どの様な理由であろうとも破れば重罪となる。破られた時点で即刻決闘は中止となり、拘束されて投獄の流れから、最悪の場合処刑となるだろう。
「今回の決闘は、ウォルター殿と殿下たち四名による、一対一の連戦という変則的な決闘となります。事前に定められた規則により、武器はこちらの木剣を使用してもらいます。制限時間は無制限、魔法の使用も許されています。そして、勝敗は相手の降参の宣言、または戦闘不能となる事で決まります。ですが、相手の命を奪う事は固く禁じられています。これを破った者は、例え殿下であろうとも罰せられます」
「分かっている。要は、この男を殺さなければいいだけの話だろう?」
「…………極論ではありますが、その通りです」
審判の男性の答えに、アルベルト殿下と側近たちは満足そうに笑みを浮かべる。そして俺に視線を向けて、ハッキリと見下しながら、その笑みをニタリと変えて嘲笑ってくる。第一王子としての、優秀な魔法使いとしての絶対的な自信をその身から溢れさせ、自身の勝利を疑う様子は一切ない。傍にいる側近たちも同様で、自分の勝利を一切疑っていない。
「勝者は、コーベット男爵家のご令嬢であるナタリー・コーベット嬢との、今後一切の接触禁止を相手に課す。そして敗者は、これに必ず従う事とする。殿下たちもウォルター殿も、この条件に相違ありませんね?」
「はい、相違ありません」
「私たちも相違ない。まあ、属性魔法を使えぬ様な半端者に、私たちが負けるはずがないがな。ナタリーも、貴様の無様な姿に目を覚ますだろう」
「…………」
「だんまりか。まあいい。直ぐに貴様は私の力を思い知る。殺しはしないが、存分に痛めつけてやるから覚悟しろ。私のナタリーに手を出した罪を、貴様の血によって贖わせてやる」
「ナタリーは、俺の大切な人は、決して殿下の物ではありません。当然俺の物でもありません。彼女は一人の人間で、好きもあれば嫌いもあります。それが分からない限り、俺に勝ったとしても彼女が振り向く事はありません。――――絶対に」
「命乞いでもするのかと思ったら、……言いたい事はそれだけか?ナタリーは、私の妻になる女性だ。それこそ、私の運命に定められた絶対だ!!」
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