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第173話

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 ダンジョン攻略に戻る前の、英気を養う為の休養最終日の今日。俺とイザベラ嬢たちの六人だけで、魔物のいない草原へとピクニックデートをしに来ている。
 そして、現在の時刻はお昼。朝からのんびりまったりと静かに過ごした後、皆で朝早くに起きて、仲良く談笑しながら一緒に作ったお弁当を食べている。ダンジョン内での焼肉の時は、俺だけが皆に食べさせてもらっていたが、今日は俺の方からも皆に食べさせてあげている。

「今日は本当に良い天気ですね~」
「最高のお出掛け日和です」
「それに喧騒けんそうの絶えない王都では、外でこんな静かにボーッとする事は出来ませんしね」
「そうよね~。王都でボーッとなんかしてると、人にぶつかったり変なのに絡まれたりするから、隙なんて見せられないわ」
「王都は王国で最も栄えてる分、人口も他の都市の何倍もいるしね。人の流れの多さに忙しなさを感じるのも仕方ないし、人によっては窮屈きゅうくつさを感じるでしょうね」

 確かに俺も、辺境であるベイルトンから王都に移り住んだ当初は、余りの人の多さに酔う事が何度かあった。ベイルトンにもそれなりの人口がいたが、王都とは流れる時間はまるで違ったし、窮屈さや忙しなさを感じる事もなかった。王都に流れる時間に慣れるまで、色々と大変だったのを思い出すな。
 食休めで再びのんびりまったりと過ごしながら、イザベラ嬢たちと王都での思い出を楽しく談笑する。イザベラ嬢たちそれぞれに、王都での色々な思い出があって聞いていて面白かった。中でもカトリーヌさんの思い出は、ナターシャ魔道具店で見聞きした事や体験した事が中心で、色々なお客さんがいるんだな~と思わせる話だった。

「ウォルター君。ほら、こっちおいで」
「いいんですか?」
「ええ」

 カトリーヌさんが、ニッコリと妖艶に微笑みながら太ももをポンポンと叩く。その行為は、恋人同士でイチャイチャする事の代表格の一つである、膝枕をしてくれるという事の合図だ。俺は内心の喜びを隠す事もなく、気が変わらない内にとサササッとカトリーヌさんの傍に移動して、寝転がって太ももの上に頭を乗せる。カトリーヌさんは俺の頭を右手で優しく撫でて、ふふふっと慈母じぼの様な笑みを浮かべている。そんな俺たちの傍に、イザベラ嬢たちもスススッと近寄ってくる。

「それじゃあ、一人十分ずつで交代していきましょうか」
「次は誰にする?」
「ここは公平に、ジャンケン勝負で決めましょう」
「いいわね。……一つ言っておくけど、私は強いわよ」
「私もジャンケンには自信があります。ウォルターさんの次の膝枕は、私がいただきます」

 イザベラ嬢たちが白熱したジャンケン勝負を繰り広げる中、カトリーヌさんの膝枕と頭を撫でてくれるのが気持ち良すぎて、眠気が急速に襲い掛かってきてウトウトし始めてしまう。そしてゆっくりとまぶたが閉じていき、気持ちの良い深い眠りへと落ちていき、夕方まで目を覚ます事はなかった。
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