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第171話
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イザベラ嬢たちと晴れて恋人同士になった日の翌朝、俺は一人でコーベット男爵とジャック爺と話をしていた。何についての話かというのは、当然だがナタリー嬢のとの関係についてだ。コーベット男爵は今も穏やかで優しい雰囲気であり、昨日の夕食時は嬉しそうにしていてくれたが、本心ではどう思っていたのか分からない。もしかしたら、本当は俺との関係は反対かもしれない。
「そんなに不安そうにしなくても、ウォルターさんとナタリーの関係に反対するつもりはありませんよ」
俺の気持ちが顔に出てしまっていた様で、コーベット男爵の方からそう言われてしまった。反対するつもりはないという事に、ホッと内心で安堵する。コーベット男爵の傍に座っていたジャック爺も、俺と同じ様にホッとした様子を見せている。コーベット男爵は、そんな俺たちの様子に微笑みを浮かべながら、本題へと入り始めた。
「ウォルターさん。貴方の事はナタリーの手紙に色々と書かれていたし、賢者様からも様々な事を聞かせていただきました。それに、私たちの愛するナタリーが自分で選んだ男性です。父親としても、男爵家当主としても反対する理由もありません。ただ、一つだけ約束してください」
「何でしょうか?」
「娘の事を幸せにしてください。何時も笑顔が絶えず、心温かい家庭を築いていく事を約束してください」
「――――はい、約束します。ナタリーさんの事は、俺が必ず幸せにします」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よかった、よかった」
ジャック爺は目尻に涙を浮かべながら、俺とナタリー嬢が親公認の恋人同士となった事を喜んでいる。もう一人の祖父の様な存在であるジャック爺の喜びように、自然と俺もまた嬉しい思いが湧き上がってくる。だがここで、コーベット男爵が真剣な表情と雰囲気となって話を続ける。
「話は変わりますが、ウォルターさんも賢者様も、アルベルト殿下たちの事はどう対処なされるおつもりですか?」
「それについては、儂やカノッサ公爵夫妻の方で考えがある」
「考え、ですか?」
「あ奴ら、ウォルターの事を色々と嗅ぎまわっておっての。こちらが掴んだ情報によると、自分たちの実力を周囲の者たちに証明する為に、ウォルターに正式な決闘を申し込もうとしておるんじゃ」
「え?そんな事になってたの?」
「本人たちは密かに行動しておるつもりなのじゃろうが、イザベラ嬢たち学生の情報網や、カノッサ公爵家の優秀な影の者には隠し通す事は出来ん」
「賢者様。もしやその決闘で?」
「そうじゃ。あ奴らが決闘を仕掛けてくる時に、勝者の権利として、ナタリー嬢に付き纏う事を禁じるのを求めるんじゃよ。それで全てが解決するとは儂らも思ってはおらんが、今までの様な暴走は防ぐ事は出来る」
「確かに、その時既に二人が婚約を結んでいるのならば、その条件を出したとしても何ら不思議ではありませんね。ですが、もみ消される可能性はありませんか?」
継承兼第一位の王子が決闘で負けたとなれば、王族の権威に傷が付くのは間違いない。そうなる前に、決闘をしたという事自体をもみ消す事もあり得るな。ジャック爺たちは、その辺の事はどう考えているんだろう?
「それに関しても対策はある。決闘には、立会人がそれぞれ二人ずつ必要じゃ。それに王族の決闘ともなれば、立会人にもそれ相応の身分が必要となる。決闘になるかもしれない可能性が高まってきてから、儂しらはある者たちに接触を始めたんじゃ」
「ある人物ですか?」
「ジャック爺、一体それは?」
「一人は、副都レゼルホルンに暮らしておる、ラインハルト王弟殿下。もう一人は、王都アイオリスに暮らしておる、ローザ・“ナターシャ”・アウレリアじゃ」
「そんなに不安そうにしなくても、ウォルターさんとナタリーの関係に反対するつもりはありませんよ」
俺の気持ちが顔に出てしまっていた様で、コーベット男爵の方からそう言われてしまった。反対するつもりはないという事に、ホッと内心で安堵する。コーベット男爵の傍に座っていたジャック爺も、俺と同じ様にホッとした様子を見せている。コーベット男爵は、そんな俺たちの様子に微笑みを浮かべながら、本題へと入り始めた。
「ウォルターさん。貴方の事はナタリーの手紙に色々と書かれていたし、賢者様からも様々な事を聞かせていただきました。それに、私たちの愛するナタリーが自分で選んだ男性です。父親としても、男爵家当主としても反対する理由もありません。ただ、一つだけ約束してください」
「何でしょうか?」
「娘の事を幸せにしてください。何時も笑顔が絶えず、心温かい家庭を築いていく事を約束してください」
「――――はい、約束します。ナタリーさんの事は、俺が必ず幸せにします」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よかった、よかった」
ジャック爺は目尻に涙を浮かべながら、俺とナタリー嬢が親公認の恋人同士となった事を喜んでいる。もう一人の祖父の様な存在であるジャック爺の喜びように、自然と俺もまた嬉しい思いが湧き上がってくる。だがここで、コーベット男爵が真剣な表情と雰囲気となって話を続ける。
「話は変わりますが、ウォルターさんも賢者様も、アルベルト殿下たちの事はどう対処なされるおつもりですか?」
「それについては、儂やカノッサ公爵夫妻の方で考えがある」
「考え、ですか?」
「あ奴ら、ウォルターの事を色々と嗅ぎまわっておっての。こちらが掴んだ情報によると、自分たちの実力を周囲の者たちに証明する為に、ウォルターに正式な決闘を申し込もうとしておるんじゃ」
「え?そんな事になってたの?」
「本人たちは密かに行動しておるつもりなのじゃろうが、イザベラ嬢たち学生の情報網や、カノッサ公爵家の優秀な影の者には隠し通す事は出来ん」
「賢者様。もしやその決闘で?」
「そうじゃ。あ奴らが決闘を仕掛けてくる時に、勝者の権利として、ナタリー嬢に付き纏う事を禁じるのを求めるんじゃよ。それで全てが解決するとは儂らも思ってはおらんが、今までの様な暴走は防ぐ事は出来る」
「確かに、その時既に二人が婚約を結んでいるのならば、その条件を出したとしても何ら不思議ではありませんね。ですが、もみ消される可能性はありませんか?」
継承兼第一位の王子が決闘で負けたとなれば、王族の権威に傷が付くのは間違いない。そうなる前に、決闘をしたという事自体をもみ消す事もあり得るな。ジャック爺たちは、その辺の事はどう考えているんだろう?
「それに関しても対策はある。決闘には、立会人がそれぞれ二人ずつ必要じゃ。それに王族の決闘ともなれば、立会人にもそれ相応の身分が必要となる。決闘になるかもしれない可能性が高まってきてから、儂しらはある者たちに接触を始めたんじゃ」
「ある人物ですか?」
「ジャック爺、一体それは?」
「一人は、副都レゼルホルンに暮らしておる、ラインハルト王弟殿下。もう一人は、王都アイオリスに暮らしておる、ローザ・“ナターシャ”・アウレリアじゃ」
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