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第132話

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 色とりどりの魔法陣が展開し、色とりどりの魔法が闘技場を飛び交う。第一戦の時と似た光景ではあるが、魔法の種類と規模が段違いだ。流石は、魔法学院各校の主将と副将を務めている、優秀な魔法使いであると言えるだろう。
 さらに二人の生徒の凄いと思える所は、相手が構築する術式の魔力を感知したと同時に、相反する属性の術式を構築している所だ。それから、魔法陣を展開して直ぐに魔法を放つ事なく、魔法を待機させた後に放つ遅延魔法を使っている所だな。
 魔法にも相性というものがあり、火の属性魔法に相性が良いのは水の属性魔法、光の属性魔法に相性が良いのは闇の属性魔法といった様に、様々な属性魔法同士で良い相性悪い相性がある。例えば火の属性魔法と水の属性魔法がぶつかり合うと、火の属性魔法は水の属性魔法によって威力が減衰され、込められた魔力量に大きな差がある場合によっては、火の属性魔法は消滅させられるのだ。
 そして遅延魔法。これは魔法という分類カテゴリーの一種でありながら、魔法使いの腕によって成り立つ技術でもある、魔法使いにとって比較的難度の高い魔法の一つだ。遅延魔法そのものは昔から存在しているが、上位属性魔法と同様に高い魔力操作と制御が必要となる。魔法国家であるアイオリス王国にも遅延魔法を使える者は多くいるが、それは数十人単位であって、百人単位で大量にいる訳ではない。尚且つ学生で使えるとなれば、さらに数が限られるだろう。

「使いこなしているという程ではないが、遅延魔法を使えるというのはよく鍛錬しておる証拠じゃ。独学で学んだのか、学院で教わっておるのか。学院で教えておるのだとしたら、よき師に巡り合えたのだろう。独学であるのならば、よくぞそこまでと褒めてやりたいの」
「……賢者様、私たちもいずれは遅延魔法を使いこなせる様になれますか?」

 イザベラ嬢が、ジャック爺にそう問いかける。イザベラ嬢だけでなく、クララ嬢たちも少し不安げな表情をして、ジャック爺の答えを待っている。そんなイザベラ嬢たちに向けて、ジャック爺はニッコリと微笑みながら答える。

「当然じゃ。何せ、この賢者が師なのじゃぞ。それに高難易度の魔法である上位属性魔法に比べたら、多少難しいくらいの遅延魔法など、イザベラ嬢たちならば直ぐにでも習得する事が出来る。安心しなさい」
『はい』

 微笑ましい空気がこの場に流れた時、闘技場に流れていた空気が大きく変わった。レゼルホルン魔法学院の女子生徒と、ニースレイノ魔法学院の女子生徒は、遅延魔法と通常の属性魔法を上手く組み合わせながら戦っていたが、徐々にニースレイノ魔法学院の女子生徒が押され始めた。
 押されだした要因としては、レゼルホルン魔法学院の女子生徒が、ギアを一段階上げた事が大きい。術式構築速度や、魔法陣を展開してから発動までの速度、魔法そのものの速度などが一気に上がったからだ。徐々に速度を上げたのではなく、一気に速度を上げた事で、ニースレイノ魔法学院の女子生徒のリズムが崩れた。そこをレゼルホルン魔法学院の女子生徒が見逃さずに勝負を仕掛けた。
 ニースレイノ魔法学院の女子生徒の方も必死に立て直そうとしたが、レゼルホルン魔法学院の女子生徒の猛攻に防戦一方となってしまい、最終的に魔法の弾幕に飲み込まれた。弾幕に飲み込まれて暫くの間は、ニースレイノ魔法学院の女子生徒も魔力障壁を張って防御していたが、その障壁も弾幕によって破壊されてしまい、その身に魔力の弾幕が直撃した。
 そして魔法の弾幕が直撃した事で魔道具が発動し、審判の手がレゼルホルン魔法学院の女子生徒を示した事で、二人の優秀な魔法使いの白熱した勝負に幕が下ろされた。
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