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第130話

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「ほう。互いに隠し玉を持っておった様じゃの」

 速度重視の男子生徒の隠し玉は、魔法に回転を加えることで、速度をそのままに貫通力を高めるというもの。対する威力重視の女子生徒の隠し玉は、火の球体や氷の塊の後方で魔力を爆発させて、威力をそのままに推進力を高めるというもの。どちらも自分の魔法の強みを活かしつつ、さらに補うための工夫を施した隠し玉だ。

「どちらの生徒も、上手く自分の魔法を工夫しましたね」
「そうじゃの。どちらの生徒も、自分の強みを活かすための工夫で素晴らしい」

 両者が同時に放った魔法は、一直線にそれぞれの相手に向かって飛んでいく。そして、闘技場の真ん中で魔法と魔法がぶつかり合う。ぶつかり合った魔法は中央で拮抗し合い、片方の魔法がもう片方の魔法を打ち破ろうとする。

『ハァアアアア!!』
『ウォオオオオ!!』

 観客は静まり返り、この試合の行く末を黙って見守っている。ニースレイノ魔法学院の女子生徒も、レゼルホルン魔法学院の男子生徒も、必死に声を張り上げながら、拮抗し合っている魔法へと魔力を込める。
 二人の魔力量が徐々に少なくなっていくと同時に、魔法の回転の勢いや推進力による加速が徐々に増していく。それに伴って、魔法同士の衝突による余波も徐々に大きくなっていき、闘技場全体の空気が震えていく。この震えは観客たちにも伝わっており、黙って見守りながらも、各々の顔には興奮による笑みが浮かんでいるのが分かる。

「この試合は、レゼルホルンの生徒の勝ちじゃな」
「そうだね」

 俺とジャック爺は、それぞれの生徒の隠し玉を見て、魔法同士の衝突の様子からそう判断した。女子生徒の方の隠し玉も素晴らしかったが、今回は男子生徒の隠し玉の方が、女子生徒の魔法との相性が逆の意味で良すぎた。
 点で攻める魔法と面で攻める魔法。どちらにも一長一短があり、様々な局面で使い分けていく事で、戦況を有利にする事が出来る魔法。二つの魔法の違いとしては、面で攻める魔法は魔法そのものの魔力が均一になっており、点で攻める魔法は先端部分に魔力が集中している。そんな先端部分に魔力が集中している点で攻める魔法に、回転を加えて貫通力を高めた状態で、魔力が均一になっている面で攻める魔法と衝突させると、高まった一点突破の力で貫かれるのだ。

「風や雷の魔法が、火や氷の魔法を貫いた!!」

 速度重視の男子生徒の風や雷の魔法が、威力重視の女子生徒の火や氷の魔法を貫いて、勢いそのままに女子生徒へと直撃する。対する女子生徒の火や氷の魔法は、一点を貫かれた事で魔法を構築していた魔力が乱され、形が維持出来ずに男子生徒の目の前まで来た所で消え去ってしまった。
 審判である魔法使いが、レゼルホルンの男子生徒の方へ腕を伸ばして、試合終了となる勝利を宣言する。試合の行く末を黙って見守っていた観客たちが、爆発した様に大きな歓声を上げる。レゼルホルン魔法学院の男子生徒を称える声と共に、ニースレイノ魔法学院の女子生徒を称える声もある。男子生徒も女子生徒も手を上げて応える。それによって観客たちが再び沸き上がって盛り上がる。
 ちなみに魔法が直撃した女子生徒には大きな傷はない。魔法競技大会では賢者様ジャック爺が開発した特殊な魔道具を使用しており、細かい傷などは出来るものの、致命傷になる様な大きな傷は防がれる様になっている。だがその機能が発動するという事は、確実に致命傷であるという事が見て分かるので、それで勝敗が判断できるというものだ。そして、女子生徒に魔法が直撃した際にこの機能が発動したので、審判である魔法使いは男子生徒の勝利を宣言したのだ。

「ふむ、良き試合であったの。この後の生徒たちの試合も楽しみじゃな」
「そうだね。俺としては、レゼルホルン魔法学院の新顔二人が気になるかな」
「おお、そうじゃな。儂も新たに代表として選ばれた二人が、どの様な戦い方をするのか気になるの」
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