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第108話
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イザベラ嬢たちは何か壮大な物語に一区切りをつけたのか、真剣な表情や雰囲気が消え去り、何時もの彼女たちに戻る。そして、何時もの彼女たちに戻ったなら、何をするのかは分かり切っている。そう、お土産チェックだ。
「こ、これは!?」
「これらは、ベイルトンで育てている果物で作ったスイーツですね。ケーキにタルト、他にも色々とありますよ。ベイルトンでも人気の、超一流の職人さんたちの手によって作られたものです。どれもこれも、見た目だけではなく味も一級品ですよ」
「ええ、知っています。ベイルトンの菓子職人と言えば、王都に住む女性で知らぬ者はいません」
「そうですとも。見た目の美しさもさることながら、幸せを感じさせてくれる素晴らしき味。濃厚な味の一品からサッパリした味の一品まで、様々な種類のスイーツを作り出す、素晴らしき菓子職人たち」
「それに聞いた所によると、辺境伯領には男性の菓子職人だけでなく、女性の菓子職人も多くいるとか」
「男性菓子職人たちの作り出す一品も大変素晴らしいものばかりですが、女性ならではの感性などが活かされている一品もまた、同じく素晴らしいと思います」
「ありがとうございます。またベイルトンに戻ったら、皆に伝えておきますね」
俺がお礼を言いつつ、故郷に戻った時に職人たちに伝えておく事を告げると、イザベラ嬢たちがピクリと反応する。どうしたんだろうと首を傾げて見つめるが、イザベラ嬢たちはそれに対して何か言ってくる事はない。恐らくは、職人たちに自分たちの想いが伝わるという事に、何かしら思う所があったんだろう。
「イザベラ嬢たちだけでなく、公爵様やアンナ様の分もありますから。そちらのテーブルの上にも、直ぐにお出ししますね」
「まあ!!本当に?嬉しいわ!!」
「アンナは昔から、ベイルトンのスイーツが大好物だからな」
「それはそうよ!!イザベラたちが言っていたけど、本当に素晴らしい一品ばかりなの。あれが嫌いな女性は、王都にはいないと言ってもいいわね」
「ウォルター、儂にもお土産はあるんじゃろ?」
「うん。母さんから、ジャック爺の分も貰ってきてるから。公爵様たちの分と一緒に、テーブルの上に出すから待ってて」
「うむ。楽しみじゃのう」
カノッサ公爵やアンナ様、それとジャック爺の分を、バックパックから取り出していく。スイーツを一品一品取り出し、カノッサ公爵夫妻とジャック爺の前に並べながら、ジャンとマークに向かって声を掛ける。
「それから、ジャンとマークの分もあるからな。最後になってすまんが、待っててくれ」
「俺たちの分もあるのか?」
「いいのか?」
「ああ、問題ない。元々自分で食べようと思って、皆にお願いして大量に作ってもらったからな。勿論、お金は支払った上でだぞ。いくら領主の息子だと言えども、そんな非常識な事はしないぞ。まあそういう事だから、ジャンやマークに振舞っても全然大丈夫だ」
「そうか。じゃあ、ありがたくいただくよ」
「ありがたくいただきます」
「それとマリー嬢とソレーヌ嬢の分も、最後にお土産で渡すからな。ちゃんとお前たちから渡しておいてくれよ。くれぐれも、忘れたりするなよ」
「「忘れねぇよ!!」」
「なら、いいんだが。マリー嬢とソレーヌ嬢にも、気に入ってもらえる様な一品を用意するからな。本当に忘れたら、もの凄く嫌われて、暫く口を利いてもらえない可能性が高いからな。気を付けろよ」
ジャンとマークに向けて忠告する。その忠告に、この場の女性陣たちはウンウンと頷いている。そして、カノッサ公爵は思い出してはいけないものを思い出したのか、胃の辺りをさすっているのが見える。
そんなカノッサ公爵の様子を見て、ジャンもマークも恐怖にゴクリと唾を呑む。カノッサ公爵は胃の辺りをさすりながら、ジャンとマークに視線を向けて、ゆっくりと一度頷く。ジャンとマークは、カノッサ公爵という人生の先輩の姿を見て、真剣な表情でゆっくりと頷き返した。
「こ、これは!?」
「これらは、ベイルトンで育てている果物で作ったスイーツですね。ケーキにタルト、他にも色々とありますよ。ベイルトンでも人気の、超一流の職人さんたちの手によって作られたものです。どれもこれも、見た目だけではなく味も一級品ですよ」
「ええ、知っています。ベイルトンの菓子職人と言えば、王都に住む女性で知らぬ者はいません」
「そうですとも。見た目の美しさもさることながら、幸せを感じさせてくれる素晴らしき味。濃厚な味の一品からサッパリした味の一品まで、様々な種類のスイーツを作り出す、素晴らしき菓子職人たち」
「それに聞いた所によると、辺境伯領には男性の菓子職人だけでなく、女性の菓子職人も多くいるとか」
「男性菓子職人たちの作り出す一品も大変素晴らしいものばかりですが、女性ならではの感性などが活かされている一品もまた、同じく素晴らしいと思います」
「ありがとうございます。またベイルトンに戻ったら、皆に伝えておきますね」
俺がお礼を言いつつ、故郷に戻った時に職人たちに伝えておく事を告げると、イザベラ嬢たちがピクリと反応する。どうしたんだろうと首を傾げて見つめるが、イザベラ嬢たちはそれに対して何か言ってくる事はない。恐らくは、職人たちに自分たちの想いが伝わるという事に、何かしら思う所があったんだろう。
「イザベラ嬢たちだけでなく、公爵様やアンナ様の分もありますから。そちらのテーブルの上にも、直ぐにお出ししますね」
「まあ!!本当に?嬉しいわ!!」
「アンナは昔から、ベイルトンのスイーツが大好物だからな」
「それはそうよ!!イザベラたちが言っていたけど、本当に素晴らしい一品ばかりなの。あれが嫌いな女性は、王都にはいないと言ってもいいわね」
「ウォルター、儂にもお土産はあるんじゃろ?」
「うん。母さんから、ジャック爺の分も貰ってきてるから。公爵様たちの分と一緒に、テーブルの上に出すから待ってて」
「うむ。楽しみじゃのう」
カノッサ公爵やアンナ様、それとジャック爺の分を、バックパックから取り出していく。スイーツを一品一品取り出し、カノッサ公爵夫妻とジャック爺の前に並べながら、ジャンとマークに向かって声を掛ける。
「それから、ジャンとマークの分もあるからな。最後になってすまんが、待っててくれ」
「俺たちの分もあるのか?」
「いいのか?」
「ああ、問題ない。元々自分で食べようと思って、皆にお願いして大量に作ってもらったからな。勿論、お金は支払った上でだぞ。いくら領主の息子だと言えども、そんな非常識な事はしないぞ。まあそういう事だから、ジャンやマークに振舞っても全然大丈夫だ」
「そうか。じゃあ、ありがたくいただくよ」
「ありがたくいただきます」
「それとマリー嬢とソレーヌ嬢の分も、最後にお土産で渡すからな。ちゃんとお前たちから渡しておいてくれよ。くれぐれも、忘れたりするなよ」
「「忘れねぇよ!!」」
「なら、いいんだが。マリー嬢とソレーヌ嬢にも、気に入ってもらえる様な一品を用意するからな。本当に忘れたら、もの凄く嫌われて、暫く口を利いてもらえない可能性が高いからな。気を付けろよ」
ジャンとマークに向けて忠告する。その忠告に、この場の女性陣たちはウンウンと頷いている。そして、カノッサ公爵は思い出してはいけないものを思い出したのか、胃の辺りをさすっているのが見える。
そんなカノッサ公爵の様子を見て、ジャンもマークも恐怖にゴクリと唾を呑む。カノッサ公爵は胃の辺りをさすりながら、ジャンとマークに視線を向けて、ゆっくりと一度頷く。ジャンとマークは、カノッサ公爵という人生の先輩の姿を見て、真剣な表情でゆっくりと頷き返した。
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