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「アルド……」
期待に満ち、振り返りざまに頬を張られる。
渾身の力ではないものの、彼女じゃなくて弱っている私だよ?
歯で切れたのか口腔内に鉄錆の味が広がり、頬が熱を放ち痛みが広がる。
信じられない思いに身体が瞬時に冷やされ小刻みに震えが走る。
「な……で?どう、して」
瞳からは涙が隆起し溢れ流れる。
「アル…… 」
「俺の名を呼ぶな。忌々しい」
絶対零度の凍えた声で言われる。
その瞳には怒りが讃えられ、私を射殺さんばかりに睨め付けていた。
な、んで?どう、して?
口がはくはくして、唇は乾いて声が発せなくなっていた。
「傲慢な公爵令嬢。先触れも出さずに我が物顔で当家に押し入り、俺の大切な女に手を掛ける。最低の女だな。お前が狂人の妻でなければ切って捨てていたよ」
苛烈な口振りで怒りを体現する彼は誰?
神官で温かくて優しい彼はどこへ?
それに、妹て?アルドに妹なんて設定知らないーー。
張り詰めた空気。
妹を庇って立ち、睥睨する男。
「お兄様ぁ、私が私が悪いんです。うっひぐっ。公爵令嬢様だって、気付けなくてきっと私が無礼な振舞いをしてしまったんですわ。うっぐすっ」
三文芝居の泣き真似に虫唾が走る。
「そうよ。アルド様、その無礼で下品な売女は誰ですの?」
「早く放逐なさって。貴方に相応しいのは」
「黙れ」
「お前などに情けをかけるべきではなかった。息つく間もなく狂人に蹂躙され尽くし正気のまま、体を壊され狂えばよかったのにな」
「なっーー」
貴方が其れを言うのっ⁉︎ 私を嵌めた貴方がーー。
「アルドリアン・ドナ・テイラー。後悔なされましてよ?その口の聞き方。貴方は伯爵。私は公爵家でしてよ。この事はお父様に報告させて頂きますわ。汚らわしい平民女と共に泥舟で沈まれたらよろしいのですわ。また来ますわね」
なけなしの気力を総動員して微笑む。
あらやだ、また来るとか言ってしまったわ。でも言い足りないんだから仕方ないわ。
「今日の所は失礼させて頂きますわ。ご機嫌よう」
かなり騒いでいたのにメイドは来なかった。人払いされているのかしら。平民出の妹と名乗る女と昼間から盛っているのですもの。伯爵家跡取りとしては相当なスキャンダル。本当に潰してやりたい位、腹が立つわ。帰ったらルゼリフィアに相談しよう。アルドに頬を張られたの、ルゼリフィア怒るかな。
色々な感情が錯綜して、気分は最悪のぐちゃぐちゃ。
私は足早に無礼な伯爵家を後にして、馬車に乗り込み帰途に着いたわ。
期待に満ち、振り返りざまに頬を張られる。
渾身の力ではないものの、彼女じゃなくて弱っている私だよ?
歯で切れたのか口腔内に鉄錆の味が広がり、頬が熱を放ち痛みが広がる。
信じられない思いに身体が瞬時に冷やされ小刻みに震えが走る。
「な……で?どう、して」
瞳からは涙が隆起し溢れ流れる。
「アル…… 」
「俺の名を呼ぶな。忌々しい」
絶対零度の凍えた声で言われる。
その瞳には怒りが讃えられ、私を射殺さんばかりに睨め付けていた。
な、んで?どう、して?
口がはくはくして、唇は乾いて声が発せなくなっていた。
「傲慢な公爵令嬢。先触れも出さずに我が物顔で当家に押し入り、俺の大切な女に手を掛ける。最低の女だな。お前が狂人の妻でなければ切って捨てていたよ」
苛烈な口振りで怒りを体現する彼は誰?
神官で温かくて優しい彼はどこへ?
それに、妹て?アルドに妹なんて設定知らないーー。
張り詰めた空気。
妹を庇って立ち、睥睨する男。
「お兄様ぁ、私が私が悪いんです。うっひぐっ。公爵令嬢様だって、気付けなくてきっと私が無礼な振舞いをしてしまったんですわ。うっぐすっ」
三文芝居の泣き真似に虫唾が走る。
「そうよ。アルド様、その無礼で下品な売女は誰ですの?」
「早く放逐なさって。貴方に相応しいのは」
「黙れ」
「お前などに情けをかけるべきではなかった。息つく間もなく狂人に蹂躙され尽くし正気のまま、体を壊され狂えばよかったのにな」
「なっーー」
貴方が其れを言うのっ⁉︎ 私を嵌めた貴方がーー。
「アルドリアン・ドナ・テイラー。後悔なされましてよ?その口の聞き方。貴方は伯爵。私は公爵家でしてよ。この事はお父様に報告させて頂きますわ。汚らわしい平民女と共に泥舟で沈まれたらよろしいのですわ。また来ますわね」
なけなしの気力を総動員して微笑む。
あらやだ、また来るとか言ってしまったわ。でも言い足りないんだから仕方ないわ。
「今日の所は失礼させて頂きますわ。ご機嫌よう」
かなり騒いでいたのにメイドは来なかった。人払いされているのかしら。平民出の妹と名乗る女と昼間から盛っているのですもの。伯爵家跡取りとしては相当なスキャンダル。本当に潰してやりたい位、腹が立つわ。帰ったらルゼリフィアに相談しよう。アルドに頬を張られたの、ルゼリフィア怒るかな。
色々な感情が錯綜して、気分は最悪のぐちゃぐちゃ。
私は足早に無礼な伯爵家を後にして、馬車に乗り込み帰途に着いたわ。
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