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同時に火傷を負わすかに思える程に熱を持った刻印が鎮まる。銀色の魔方陣展開も次第に崩れ霧散した。

「狂人の楔……忌々しい」
憎々しげにバロットが呟く。

「バロットが退いてくれて良かった。私の方も火傷は負っていないし、警告の耳鳴りも収まったからな」

「俺だから退いたものの、お嬢様が抵抗出来ない状態で事に及ばれたらどうするおつもりですか」
絶対零度。いや、零下の気を出しながら問われる。
「どうにも、だな。抵抗出来ないのであれば、刻印が熱を放ち、 私の皮膚は焼かれ烙印の出来上がりだろう。表皮だけでなく、内側から焼かれる程の断末魔の叫びを伴う痛みらしいな。経験などしたくはないが」

「奴が刻印を刻む程、執着される何をなさったのですか?」
低い、とても低い威圧の声で問われる。
「何もーー」
言えるわけなかろう。
強いて言うならばもなく、あの子の泣き叫び許しを請い、非道な行いだと傷付き悲嘆に泣き暮れる様に嗜虐心を煽られ、執着心を持ったのだろうよ。しかも見た目は勝ち気な私だから、相乗効果もあったのではないか。なんてバロットに言えるわけもなく。

「人が外堀を固めている間に、ほいほい伯爵子息に付いて行き狂人にやられるとか、お嬢様らしくない阿呆さですね」
「待て。それだけ聞くと私がとんでもなく馬鹿みたいではないか!聞き捨てならんぞ。しかもバロットが私をとか冗談だろう」
「主家の娘だから、恩ある方の娘だからと、遠慮なんてすべきではなかったですね」
「そうだぞ。欲しかったら奪えば良かったんだ。夷狄みたいに」
「はっ。お嬢様からそんな言葉が聞けるとは」
バロットは懲りずに私を抱き寄せ、耳を甘噛みする。
「っ。お前は色々慣れすぎだろうっ‼︎ 」
「意外に感じやすい所がまた可愛らしい」
「やめろ。お前が配属されてから領内の婦女子がどれだけ泣いたと」
「妬いてくれてるんですか?」
「誰が‼︎ 」
「口付けるだけで、ここはこんなにも愛らしく湿り気を帯びて、俺の指を奥へ奥へと誘って濡れ馴染んでくれるのにね」
「っ」
バロットが私の唇を舐め、舌を口腔内に絡ませながら、長い指が私の蜜口を掻き出す。腰が跳ね、粘液性のものがじんわりと湧出すのが自分でもわかる。嫌な奴だ。そんな説明いらないだろう。
羞恥に駆られ睨む。
「学習しないお嬢様だ」
耳元で甘く囁かれ、蜜口に指を二本挿入しながら、卑猥な音を聞かせられる。
「ふっ、や、やだっやめ、ろ」
腰が逃げそうになるが、押さえ付けられびくともしない。
「やぁ、んんっ、ふっうっや、め……ああっ」
「いやらしい愛液が、俺の指に絡んで滴り落ちてますよ」
「やめ……うぁっ‼︎ 」
がくっと膝が落ちる。バロットに支えられているから崩れる事はないが
「ここですか。ここが一際感じますか?お嬢様」
顔色一つ変えないまま、揶揄する様に言われ、良い様にされ腹が立つやら、悲しくなるやだ。無様だ。悔しい。
バロットの指は確実に感じる場所を暴き、抽送を早め私を快感の波に捉える。
「ああああああっ」
はしたない声を上げ、私はーー。
「達しましたね」
嘘、だろ。
「わ、私、漏、漏らし」
「違いますよ。潮です。女性は達すると人により潮を」
「他を引き合いに出す、な。不快だ」
「すみません」
悪びれず謝られ腹が立つ。
「っお前は」
「忘れないで下さい。お嬢様と契れなくとも、俺は諦めない」
「な、何をーー」
真剣な藍色の眼差しに、何も欲さないと決めた心が揺さぶられる。
「馬鹿を言うな」
突き放すも、裸で捉われ、奴の腕の中でぐったりだ。説得力はないな。
「お嬢様は、嫌いではなかったでしょう?」
俺にされても。言外の言葉を聞いて素直に頷く。
「ああ」
ーーどころか、本当はもっとしたかったなんて口が裂けても言えないし、言わないからな。

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