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05.

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動けないながらも、頭は大混乱で四苦八苦してた。

そしたら、扉が開いて、狂人が戻ってきたの⁉︎ て身構えたけど、よく見知った顔。側付きの侍女のアンヌだった。

途端、私の思考はルゼリフィアになって心が心の臓まで冷え、比喩ではなく冷気が感じられる雰囲気を纏う。

動けないながらも、白濁や血に塗れた姿でも矜持を失わず、凛とした声を出し言葉を紡ぐ。

「アンヌ、苦労を掛けた。父上の隊の動向は? すまぬが動けぬ様だ。起こしてもらえるか 」

ル、ルゼリフィアて、こんな男前な喋り方だったっけ⁉︎ 
いや、話してるのは私なんだけど⁉︎

アンヌは赤銅色の髪を纏め、落ち着いた茶瞳に悲壮を湛え、私に傅き涙を幾筋も流す。
「おいたわしや、お嬢様 」
覚悟を決めた悲痛な様子のアンヌに凍えた心のルゼリフィアは俄に慌て出す。

「今回の事は、私の不徳の致すところ。成るべくして成ったであろう事。誰もが悪くはない。ましてやアンヌ、貴女は尚更…… 」
優しさも滲む言葉つきで、ルゼリフィアはアンヌを説得しようと試みるもアンヌは魔の力を滔々と紡ぎ出す。

ルゼリフィアの頬に寄せたアンヌの手は指先から冷たくなり、噛み締める唇からは血が流れ、片方の手は握り締めた先から血が滴り額からは脂汗が滴り落ちる。

「やめなさい、アンヌ‼︎ 私は貴女が力を行使するのは許さないわ‼︎アンヌ! やめてっ‼︎ 」
声を荒げるも、アンヌはやめない。
全身を苛む激痛に耐え顔面蒼白になりながらも詠唱する。

「アンヌ‼︎ 」

光が迸り、私の傷が内部から外部まで癒される。汚れに塗れた身体も浄められ乱れた髪も梳られた艶のある生来の髪質に戻る。

そこまで見届けて、アンヌは血を吐き昏倒した。
アンヌが床に倒れ込む前にルゼリフィアは抱き支え
「馬鹿な子……私の為に 」
昏く呟く。

そこへ、「ルゼリフィア様!」「お嬢様!」父上の隊が雪崩れこんでくる。
一糸纏わぬ姿で侍女を抱き支える自らの主人の至宝の娘の姿に隊員達は赤面し回れ右をして視線を逸らす。

この身が浄められたとは言え、事後の後だと言うことは例え、裸でなくても誰もが分かること。
特に見られて、気にする事でもない。

ーーーーて‼︎
嘘でしょ、ルゼリフィア‼︎
私は気にするよ、私は‼︎

ルゼリフィアと前世の私の意識て馴染んでないよ。水と油みたいに合判してる。
このままじゃ二重人格真っしぐらだよ!

「皆、ご苦労だった。見ての通り私は無事だ 」

いやいやいや!全然無事じゃないからね?死にかけたし、心折られまくりだったし。私の突っ込みは丸無視で状況は続く。

紺色の隊員服から紺に銀が交わる隊員服に身を包んだ藍色の髪と瞳を持つ美丈夫が笑顔を貼り付けたままビロードの豪奢なガウンをルゼリフィアの肩から羽織らせる。
「アンヌは私が運びましょう」
「いや、必要ない。私が運ぼう」
裸身からガウンを着用しアンヌを横抱きにし進む。
「はっ。お嬢様の仰せのままに 」
慇懃無礼に呟き、頭を垂れる士官に
「状況は?」
「屋敷を囲む一個中隊は捕縛。どこの家の者かは尋問中です 」
「そうか。苦労をかけたな 」
「いえ、お嬢様のいらっしゃる屋敷の特定に手間取り、この体たらくです。ご当主には我が首を差し出しますよ 」
「はっ!使えるお前を父上が、私如きの為に罰するはずなかろう。寝言は寝て言えよ 」

士官と軽口を叩きあうルゼリフィアのメンタルに驚いたわ。てか、わたし的には到着が遅すぎるわよ‼︎ て、胸ぐら掴んでわんわん泣きたい気分だったのに。

「奴等が証拠を残す様な真似はないと思うが念の為だ。重点的に見ておけよバロット」
ルゼリフィアが士官に伝えると
「副官に任せておりますので、私はお嬢様がご当主の元まで無事に辿り着く様、動かせて頂きます。露払いも、お命じ下さい 」

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