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領主を継いだので牛を買ってみた

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 領主がまだ結婚する前くらいのお話です。



 --牛乳が欲しい! 牛乳っていうか、生クリームが欲しいんだよ。

 この領地には乳牛を飼っている家がいない。山羊や羊なら、ほんのちょっとだけ飼っている家もある。だが、乳が採れる牛はいない。
 そもそも、家畜を飼っている家は少ない。家畜に食わせる前に自分たちの食う分を確保しなければならない。
 山羊や羊を飼育している家だって、家畜のために飼料を確保するなんてしていない。森や山などの未開拓地に柵を作って放し飼いにしているだけで、そこに生えている雑草を家畜が勝手に食っているだけだ。

 こいつらでも乳は採れるが、量が少ない。オレが使いたい量を定期的に確保できない。
 その点、牛は山羊や羊より十倍乳が出るらしい。それに寿命も長いらしい。
 断然、お得だな。

 隣街に親戚がいるというおばちゃんの伝手を使って、牛を手配してもらう。
 若い奴なら、その分長く乳が採れるだろ。そういうのを見繕って来てくれよな。もちろん、雌を頼むぞ。

 十日後、待望の牛が届いたとの知らせを受けた。
 飼育方法を教えてくれるとかで、二十歳くらいの男も付いてきた。
 早速、乳搾りに挑戦だな。
 しかし、無粋な一言で止められる。
「無理です。まだ乳は出ないですよ」
 何でだ? 体は元より、おっぱいだって結構デカいぞ。これだけ大きいんだから搾れば出てくるだろ。
「まだ出産前の雌牛なので出るはずありませんよ」
 何だと!?
「子供を産まないと駄目なのか?」
「人間でも、母乳が出るようになるのは母親になる女性だけですよ」
 言われてみれば、当然の話だ。未婚の女性の胸からおっぱいが出たという話は聞かない。
 それじゃ、牛乳が採れるようになるのはまだ先ってことか。
「通常、生後2年程度は必要ですね」
 マジかよ? ヤギなんか生まれて1年もすれば妊娠するじゃん。
 こいつ何歳? 妊娠してから生まれるまでどれくらいだ?  今すぐ妊娠しても生まれるのは10ヶ月先かよ。
 誰だよ、若い方が良いなんて言った奴は? うん、オレだね。ゴメン。
「でも、すぐに乳が出るやつはいないのか?」
「いないことはないですね。また持ってきますか? 今度はどのような牛がよろしいでしょう」
「やっぱり、おっぱいは大きい方が良いんだよな?」
「そうですね。絶対ではないですが、大きい方が乳の出は良い傾向ですね」

 男の話を聞くと、思ったより面倒だぞ。
 妊娠させるって事は雌だけじゃなく雄も必要だよな。エサだって一日大人一人分くらいの重量が必要らしい
 どうりで、近所の奴らが飼わないはずだ。

「子供を産んだ乳のデカイのを探しているんスよね」
 ひと通り育て方を聞いて牛の追加手配を掛けると、馬鹿が入れ替わりでやってきた。
「うん? その通りなんだが、何で知ってるんだ?」
「それは、立ち聞・・・ そんなことはどうでもイイっス。見つけてどうするんスか!?」
「どうするって、飼うんだろ。育てる以外に何があるんだ?」
 当然のことを聞くなよ。
「やっぱり買うんスか!? 子供だけじゃ飽きたらず、大人にまで手を出すんスか?」

 はぁ? 何言ってんだ、こいつ?
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