「人生の折り返しに乾杯」 ～アラフィフ男女の理想的な関係～

【19】恋の羅針盤

⑨

　親友とのつかの間のタイムトリップから帰ってくるとちょうど20時。毎週楽しみにしている番組を見るためにテレビのスイッチを押した。鞄から携帯を出すとメールの着信が入っていた。浜中からだった。倉敷のデート以来、時々メールをくれるが、今日は何処に行ってきたなど他愛のない内容だった。私もそれに返すだけで告白の返事については触れなかった。

　清水やヒロコ達と話をしていると『結婚』って何だろう？　と感じさせられる。何かを犠牲にしないと『結婚』は成立しないのか？　私の恋の羅針盤は、最後どこを指すのだろう……。

　その時携帯が震えた。浜中からだと思いメールを開けると澪からだった。来週、ブログに載せたいお店を見つけたから一緒に行ってほしいとのお誘いだった。いいよ。と返してテレビに視線を戻すとトイプードルがお座りしている。可愛いー。思わず声がでてしまう。しっぽをふったり怒ったりして感情があるんだなぁと当たり前の事を思った。この子達にも悩みってあるんだろうか？　ん？　私は何を真剣に考えているんだ？　テレビを見ながら苦笑いする。

　楽しみにしている番組が終わって天気予報が始まり明後日からしばらく雨が続くと言っている。梅雨だから仕方ないかとため息をつきながら今日のうちに洗濯しておこうと思い、洗濯機の中に洗濯物を放り込み、ソファーに横になると次の番組が始まっていた。今夜の特集紹介で『愛とは何か？』と耳に入ってきた。携帯をおきソファーに座り直しテレビに集中した。

　番組は『愛』について哲学や名言からゲストが自分の見解をトークする内容だった。『愛』と『恋』の違いは何か？　のテーマになると熱い討論となった。愛とは、人や物を大切にする心のことで、好きな人や物のために何でも与えたい、と思うのが『愛』。一方、恋とは、人を思う愛おしさはあっても大切にしたいという気持ちまではなく、自分の気持ちを満足させようと相手の大切なものを奪ってしまうことがあるのが『恋』となった。そして、なるほどと思ったのは「愛」と「恋」の漢字に注目すると「心」という字は「愛」の真ん中にあって「恋」は下の部分にある。このことを指して「愛には真心(真ん中に心がある)があり、恋には下心がある」とも言われていること。

　私の想いは『愛』なのか『恋』なのか？　自問自答するが答えはわからない。答えがわかったところで仕方ないことだ。いろいろ考えてしまうとわからなくなる。納得できる答えなどないな。と心を整理すると結局最後は自分の気持ちに正直になるしかないんだと思った。