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【18】ドリームカムトゥルー
⑩
しおりを挟む翌日の昼休み、澪とランチに出た由唯はブログのフォロワーが増えているという話になった。
「この間のもんじゃ焼きのお店見たけどすごい上手く書いてたなぁ。内容と実際行った感想と違和感なかったで」
「ほんまぁ? よかったー」
「で、フォロワー41万人になってるやん! この短期間で1万人も増えてる」
「うん。20万人超えた辺りから急に増え始めてん」
「すごいな!」
「でなぁ、由唯今夜時間ある?ちょっと相談があんねん」
「今夜は大丈夫やで。何? 相談?」
「うん。出版社からグルメブログを本にしませんか? って連絡があって……」
「えぇーー‼︎」
由唯が驚いて声をあげると、周りの客が何事かと振り向いた。
「しぃーー」
澪は右手の人差し指を唇の前に立てて由唯に静かにーとジェスチャーをした。
由唯はハッとして周りを見回しペコッと頭を下げた。
「えっ、すごっ! 出版しませんか? って、澪のブログが本になるのぉー?」
興奮した由唯はお箸の手を止めて澪の方に体をグッと近づけた。
「本にしませんか? って連絡があっただけで詳細はまだ聞いてないから何も分かってないねんけどな、由唯の意見も聞きたいなぁと思って……」
「うんうん。わかったー! 詳しくは今夜話そう。和希はどうする?」
「和希のスケジュール見たら、今夜お客さんと会食の予定入ってんねん」
「そうなんや。じゃー、しゃーないな。2人で話しよう」
「うん。由唯忙しいのにごめんなー」
「ううん。今夜は予定がないから全然大丈夫やで! 私もドキドキしてきたわー 笑」
「あはははは。じゃー食べてしまおう」
「うん」
今日は昼からの仕事も忙しくなかったので澪と由唯は定時で会社を出て、天満の澪の行きつけの居酒屋に向かった。
澪と由唯は焼酎のソーダ割りと料理を頼むと早速お昼の話の続きを始めた。
「澪、出版社から何て連絡あったん?」
「ブログの問い合わせに一度連絡下さい。って出版社の名前と連絡先の書き込みがあって連絡してみてん」
「えーーーっ! 澪、よう電話したなー。私やったら怪しくてよう電話せーへんわ」
「聞いたことのある出版社やったし、固定電話の連絡先やったからホームページで調べてから電話してん」
「うんうん。で、ほんまもんやったん?」
「うん」
「へーー、すごいなぁ。昼から『すごい』しか言葉出てけーへんわ 笑」
澪が出版社から聞いた話は、澪の消費者視点でのコメントが読者に受け入れられるだろう。と言うことと、既に販売されているグルメ本には載ってないお店が多く、ブログに60軒弱のお店を紹介しているが出版社の人も実際に15軒ほど行ったらしい。
「『一度話を聞きに大阪支店に来社してほしい』と言われてん。由唯も一緒に行って話聞いてくれへん?」
「いいよ。私でよければ一緒に行くよ」
「ありがとう! 明後日の木曜日の夜でもいい?」
「うん、大丈夫やで!」
「よかったぁー! ほんま助かるー」
ここで、焼酎のソーダ割りがテーブルに並んだ。
「澪の書籍化に乾杯」
由唯が言うと澪は、
「早い早い、まだわからんし」
と言いながらも澪はグラスを由唯のグラスに合わせた。
「なぁなぁ?前に人生やり直せるなら、どんな仕事やりたい?って聞いた時に澪、『世界のお酒を飲みながら旅をしてお酒の本とかを書きたいなー』って言うてたん覚えてる?」
「うん。覚えてるよ」
「あの時に言うたこと、なんか少し現実になってるやん!《世界の旅》じゃなくて《天満の旅》やけど 笑」
「あはははは、確かにー」
「でも、天満から始まって本がバカ売れして世界に繋がっていくかもしれんでぇー」
「あはははは 由唯? 話が飛躍しすぎやわぁ。グルメ本でバカ売れして世界に羽ばたくとか聞いたことないしー」
「いやいや、澪がグルメ本界の常識を打ち破るねん。何でも最初があるんやから! 夢は見続ける限り覚めへんのやで!」
澪は由唯をまっすぐ見つめた。
「由唯? 私のマネージャーにしたろか?」
……。
「ぶはははははははは」
2人は暫く沈黙したあと爆笑した。
この日の夜は、本が売れて印税がめっちゃ入ったら何に使おうか妄想話で盛り上がった。
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