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【18】ドリームカムトゥルー
④
しおりを挟む待ち合わせの改札に戻って待っていると、駅のホームからエスカレーターを走って降りてくる澪らしき姿が見えた。
「あの走って掛け降りてくる帽子被ってる人澪ちゃう?」
和希も目を細めてエスカレーターの方を見た。
「ほんまやー澪や!」
「そうやんなぁ! あははははは、めっちゃ走ってるやん」
「ごめーん」
澪は申し訳なさそうな顔で改札から出てきた。
澪が帽子を被ってる姿を見たことのない2人は思わず笑ってしまった。
「どうしたん帽子かぶって?」
「寝癖直す時間なかったから帽子かぶってきた」
「そんな急がんでもよかったのに」
「いやいや、私のためにみんな来てくれてるのに私が寝坊するなんて最悪や……」
「あははははは、マジでびっくりやわ! メールも電話も何回もしてんでー」
「本当にごめん」
和希と由唯は笑っていたが、澪は申し訳なさそうに謝った。
今日は澪のおごりやで~! と由唯が言うと、もちろん! と澪が胸を叩いて言った。時間はもうすぐ13時。
さぁ、早く行こうぜ。腹減ってきたわ~! 和希が言うと、うん! 早く行こ行こ~! と言って、由唯は澪の肩に手を回して歩き出した。
国道1号線を渡って繁華街とは反対方向に少し歩いて狭い路地を入ったところに目的のお店があった。
「ここやねん」
澪がそういったお店は【鉄板食堂こてこて】と暖簾(のれん)に書かれていた。
「もんじゃ焼きのお店やねんけど、前にたまたま前を通った時に見つけてん。ここに《関西風だし》って書いてるやん。もんじゃ焼きって東京のイメージがあるけど、関西風だしってどんなんやろ? と思ってネットで調べてんけど殆ど情報がなかったからこれは行かなって思って」
「へぇー、美味しそうやん。もんじゃ焼き久しぶりやわ。和希は東京におった時、よく食べてたん?」
「浅草とか月島とかに食べに行ったことあるけど、たまーにしか食べへんかったわ。東京の人も大阪人がたこ焼き食べる頻度よりは少ないんちゃう?」
「そうなん? 東京の人は毎週もんじゃ焼き食べてるんかと思ったわー 笑」
「あはははは、そんな訳ないやろ! 大阪の人かってたこ焼き毎週食わんやろ」
3人は暖簾をくぐりお店に入ると右手方向に8人掛けのカウンター、左手方向に4人掛けのテーブルが6卓ある。客が3組ほどしかいなかったので直ぐにテーブル席へ案内された。
各テーブルの上にはもんじゃ焼きを焼く鉄板が備えられている。
とりあえずビールとレモンサワーを注文してからメニューを広げた。《お好みもんじゃ》や《牛すき焼きもんじゃ》など、東京にはないだろうと思うメニューが並んでいる。悩んだ末、《牛すき焼きもんじゃ》を注文した。
このお店は自分で作る場合は100円引きしてくれるシステムのようで店員から、どうされますか? と聞かれると、せっかくだから自分たちでやります。と答えた。
飲み物がきて乾杯しようとした時、帽子を取った澪の髪の毛が寝癖でピーンと跳ねていた。前に座っていた和希の視線は澪の髪に釘付けになったが、澪の隣の由唯は見えていない。澪の頭をジーッと見ている和希に気がつき由唯は澪の頭を見た。2人の視線に気付いた澪はハッとして両手を髪の毛にやった。
「あーーっ! 寝癖忘れてたー。」
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