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【14】それぞれの扉
①
しおりを挟む指示通り、いつもの店の前に18時前に着くと、由唯と澪は既に飲み始めていた。
「和希、おそーい」
まだ酔ってないはずの澪が手でこっちこっちと呼びながら言った。
「まだ、18時前やん。何で、もうグラス空になってるん? 笑」
「和希が遅いから。昔、時間前行動しなさい。って習わんかった?」
「時間通りにきて何で怒られるねん? 笑」
和希がビールを注文すると、由唯が、
「珍しく休みなのに予定があってんなぁ?」
「あ…うん。友達と昼から飲んでてんー」
「そうなんやー」
「うん。保険会社行ってるやつやねんけど、高給取りで羨ましいわ」
あれこれ聞かれるのが面倒くさかったので、女性がいたことは伏せて男友達との飲み会のように答えたが由唯はそれ以上興味を示さず話を変えた。
「ねぇー和希、そろそろ澪って部長になってもええんちゃうん?」
口に運びかけた澪のグラスが停止した。目だけ和希の方に。
「うん。ここだけの話、評価してるし部長になってほしい思って推薦してんねんけど、最終は人事マターでどうしようもないねんなぁ」
「そうなんや……」
「うん。これ、ほんまにここだけの話やからな!」
由唯もそれ以上は聞かない方がいいと思って、テレビドラマの話題に変えた。
「そろそろ帰るわー」
由唯が急に言った。飲み始めてまだ2時間経っていない。
「あれ? 急にどうしたん?」
「うん。明日ゴルフやねん」
「浜なんとかさんと?」和希が聞くと、「うん、そう。浜中さんと」
「飲みにきてる場合ちゃうやん 笑。明日起きれんのか⁇」
「うん。大丈夫、大丈夫! 飲みを断るなんてことはできん 笑」
「由唯、浜中さんといい感じなん?」澪が聞いた。
「まだそんな段階じゃないねん。どんな人かもまだわからんし」
「そうなんやー」
「でも、私から好きになることはないからな。もし、好きになってくれたら考えるかもしれんけど 笑」
由唯はそう言ったが、和希は冗談か真面目に言ってるのかよくわからなかった。
「わかった。わかった。もう早く帰りー。明日頑張りや~! 笑」
「はーい。じゃーお先ー」
「お疲れ様ー」
「お疲れー」
そう言って由唯は先に帰っていった。
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