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【10】恋のエントランス
①
しおりを挟む和希が息苦しく目を覚ますと、喉の奥が砂漠化していて一滴の潤いもない。お水を飲もうと起きかけると、
「痛ぇー」
頭が割れるような二日酔いだった。
(昨夜どんだけ飲んだんやろ?)
俺の昔話で盛り上がったところまでは覚えている。しかし、途中から記憶がない。どうやって家に帰ってきたか思い出せない。
(ん、今何時や?)
時間を確認するのに携帯を見ると朝早くに由唯からメールが一件。
〈大丈夫だった?〉
俺の事を心配してメールくれたのだろうが、途中からの記憶が全くない。大丈夫だった? ってそんなに酷かったのか?
由唯に聞いてみよう……
トゥルルルル、トゥルルルル・・・
何回か呼び出し音がなり、ようやく電話がつながった。
「和希、ごめん。今、出かけるとこやからまた連絡するわー」
《プープープー》
一方的に電話が切れ、もう繋がってませーん。を知らせる音が空しくなっていた。
はっ……? ひと言も話してないし……。
和希はベッドの上で暫く放心状態だったが、息苦しいカラカラの喉の潤いを求めて起き上がった。
「やっぱりいてぇー」
立ち上がると、目の前がグルグル回る。あれ? 地球は俺を中心に回っているのか? 笑 大して面白くない冗談に笑う。こんなことで笑うなんてまだ酔いが抜けてない証拠だなとつぶやき、健康のためにと毎朝飲んでいる炭酸水で潤いを得るともう少し寝ることにした。
その頃由唯は(一方的に電話を切ってしまったけど何の用やったんやろ?)と、気になったが時間に遅れそうだったので、ゴルフのレッスンへ急いだ。
京橋駅の長いエスカレーターを早足で降りゴルフレッスン場が入居する駅ビルまで走り、何とか間に合った。
(あー、しんどぉー。運動不足だな……)
「今から練習ですか?」
後ろから男性の声が。
(ん? 私に聞いてる?)
そぉーっと振り返ると見たことのある顔。
「確か先日、隣で練習されてましたよね?」
「・・・隣ですか? えっ? あぁ~! 覚えてます。とても上手で、打ってる音が全然違ってました 笑」
「あははは。インドアだから音が響いて大きいだけですよ 笑」
「そんなことないですよ。『バンッ』って凄い音でしたよ。私は『パスッ』ですから 笑笑」
「あははは」
そのまま一緒に受付に並び、練習ゲージの案内を受けた。
「本宮さん4番で、浜中さんは3番になります」
浜中と言われた男性とロッカーの入口で別れた。
練習着に着替えて4番ゲージに入ると既に浜中は3番ゲージで準備運動をしていた。「どーも」と会釈をしてきたので笑顔で返した。
「本宮さん、こんにちは」
インストラクターの河口が笑顔で近付いてきた。
「河口さん、打った後に手が曲がるクセがなかなか直らなくて。素振り棒まで買ったんですが、あんまり使えない棒で。あはははは」
河口もつられて笑う。
「先日言ったようにクセってすぐには直りにくいですが、基本からやれば必ず直りますので、がんばってやっていきましょう」
「はい! よろしくお願いします」
「ではバックスイングの腕の形から今日はやりますね」
「はい」
「腕は伸ばしたまま腰からひねってみましょうか」
この日は基本動作を中心に教えてもらった。
「では、本宮さん今日はここまでです。バックスイングの時の腕はきれいですよ。腰のひねりがスムーズになればバックスイングは完璧ですね」
「ありがとうございます。腰なぁ。自分ではひねってるつもりなんですけど難しいですね。次回もよろしく願いします」
由唯はシャワーを浴び、着替えを終えてロッカーを出ると、浜中は男性と2人でイスに座って話をしていた。
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