上 下
81 / 83
5章 最終話

5.1 最終話①

しおりを挟む
 お知らせ
  「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
 うん、なんだ、体が痛い。
 目を開ける、まぶしい。光。
 目の前に見えるのはシルクヴィスクレア、かあさんだ。
「かあさん、戻ったよ」
「クレストリア、良かった」

「違うんだ、かあさん。生まれた直後に死んだランスターエルリック本人だ。ちょっとだけ体を借りてるんだ」
「そうなの」

「僕は、生まれた直後に侍女に毒を盛られて死んだんだ。その直後にクレストリアの魂が入り込み生き返った。僕はずっとクレストリアの中から世界を見ていた。母さんから離れて、再び会った時はうれしかった。叫びたかったけどできなかった」
「ランスターエルリック」
「ありがとう、そう呼んでくれてうれしいよ。でも僕はここで消えるよ。この後クレストリアに融合される。でも僕は僕だ。クレストリア共々これからもよろしくね」
「わかったわ。愛する息子ランスターエルリック」

「ごめん、離して。おかあさま、システィナかあさま」
「ここよ、ここにいるわ」

「おかあさま、久しぶり。会えて嬉しい。おかあさま、おかあさま」
「クレストリア。クレストリア」

「ごめんねおかあさま。先に死んでしまってごめんなさい」
「良いのよ。そんな体に生んだかあさまが悪いの。あなたは悪くないわ」
「かあさま、僕はこれで消えるけど、ランスターエルリックの体の中でこれからも生きていくから」
「わかったわ」

「クレストリア」
「ランスターエルリック」

「うーん、記憶が混乱。どうなってるんだ」
「えっと、どっち?」

「アデリート、ジェーン、カトリーヌ、ビアンカ、みんな無事か」
「無事だけど、なんで最初による名前がアデリートなのかな?」

 目の前にジェーンレオノールがちょっと怒り気味に言ってきた。
「え、な、なんでだろうね。アから口にでた」
「ほんとに?」
「いや、ちょっと待って、それよりも待て待て。なんだこの記憶」

「大丈夫ですか?」
 第6王女のアデリートメアリ様が声をかけ来た。

「先ほど別の方としてお話をしていましたよ。その方々の記憶があるのですか」

 第7王女のカトリーヌメアリー様が声をかけてくる。
 彼女は未だ未成年なので第5王女のジェーンレオノーレ様ほど僕の魔石を身に着けていない。
 まだ少ししか染まっていない。
 それでもアドリート様よりは僕の魔力に近く、親和感がある。

 なんでこの状態でアデリート様の名前なんか口にしたのだろうか。やはり同級生だから普段から良く名前を口にするせいだろうか。
「ビアンカ、いるのか」
「います。御身の傍に」
 そういって濡れた暖かいタオルを渡してくれた。
 彼女は僕の魔力に染まっているので、近くにいると落ち着いた感じがする。

 ほっとした瞬間だった。突然フラッシュバックのように前世の記憶がよみがえる。
 ああ、そうかアドリートメアリ様の眼元と髪型が、前世の恋人に似ていたんだ。
 だが、それだけのこと。

 統合された意識は、成長前のランスターエルリックにクレストリアと比べ十分に成長した僕の意識の方が強く、さらに1対1ならまだしも複数の複合があったために元の人格が大半を占有したようだ。

「フェルディーノ様、ありがとうございます。助かりました。エイレーネアテナ様も」
 僕はゆっくりと立ち上がり、二人にお礼を言った。

「いや、狙い通り上手くいったみたいだな。これを」
フェルディーノ様特性の回復薬か。

「フェルディーノ、それは毒と間違える回復薬ではありませんか。クレストリア様、それはとても不味いのですが、とっても強力な回復薬です。良薬口に苦しと言いますが、毒と間違えるほどに不味いのです。ですが一気に飲んでください。死ぬ気になれば飲めます」

「それほどひどいのですか。それほど効果が無くても別の薬を。  いや飲みます。はい」
 フェルディーノ様の怖い顔を見て、飲むことにした。
 覚悟を決めて一気に飲み込む。

「うーん、まずい。もう一杯」
「いや、一杯だけで良い」

「異世界の冗談ですよ。フェルディーノ様。記憶が統合された証拠です」

「そうそう。正直二度と飲みたくない味ですね。貰っておいてなんですが、くそ不味い。でも体が一気に楽になりました。魔力も回復してきたし効果はわかります。貴重な薬をありがとうございました」

「ではすぐに神の書を受け取りに行きなさい。この混乱を収めるには神の書が無ければ収まらぬ」
「はい。では行ってきます」

 僕は使役獣のノール呼び出し図書館の裏にある祠へ向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油
ファンタジー
アイドルをやってる女生徒を家まで送っている時に車がぶつかってきた。 どうやらストーカーに狙われた事件に巻き込まれ殺されたようだ。 だが運が良いことに女神によって異世界に上級貴族として転生する事になった。 その時に特典として神の眼や沢山の魔法スキルを貰えた。 将来かわいい奥さんとの結婚を夢見て生まれ変わる。 女神から貰った神の眼と言う力は300年前に国を建国した王様と同じ力。 300年ぶりに同じ力を持つ僕は秘匿され、田舎の地で育てられる。 皆の期待を一身に、主人公は自由気ままにすくすくと育つ。 その中で聞こえてくるのは王女様が婚約者、それも母親が超絶美人だと言う噂。 期待に胸を膨らませ、魔法や世の中の仕組みを勉強する。 魔法は成長するに従い勝手にレベルが上がる。 そして、10歳で聖獣を支配し世界最強の人間となっているが本人にはそんな自覚は全くない。 民の暮らしを良くするために邁進し、魔法の研究にふける。 そんな彼の元に、徐々に転生者が集まってくる。 そして成長し、自分の過去を女神に教えられ300年の時を隔て再び少女に出会う。

処理中です...