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1章 囚われた生活

1.3 3歳になりました

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 3歳になった。夏がすぎ、またまた秋だ。
 去年と一緒。またダーヴィッドに限界まで吸い取られた。
 そしてやはり迷いの世界に来てしまった。まだ運の上昇は可能なのだろうか。とりあえずじゃんけんを始める。前回の100回だったから、とりあえず1000回を目指す。その程度ならなんとかなるはず。結果は990回でじゃんけんを終えた。
 もうこれはだめだな。3回やってわかった。1回ごとにおよそ10倍になる。次は1万回。この世界にいる時間が10倍になれば攻略中に死ぬ。次は勝負を変えるしか無い。できれば魔力枯渇にならない事が良いのだが。

 目が覚めた。これで3度の蘇り。
 実の子ではないのにウルレアールが僕の側でずっと面倒を見てくれる。とても大切に育ててくれる。ウルレアールは、僕の大切な母親だ。やさしい母に面倒をみてもらえ、四六時中一緒に生活できるのだがら、この生活も悪くはない気がする。
 そう、魔力枯渇さえなければそれなりの生活なのだ。
 最近はかなり話ができるようになった。そしてウルレアールに色々と質問することで自分の状況がわかってきた。
 その前に、僕になぜか既に知識がある。その知識がこの年齢ではありえない。つまり普通じゃない子供だと理解できた。恐らく僕の状態は異常なのだ。
 だがそのおかげで魔力枯渇状態で機転を利かせ生き延びている。知識があるおかげと言うのは解る。迷いの世界で僕の形をした何かが、僕は”2度目の人生だ”と言っていた。前の人生など覚えてもいないので自分がなぜ特別なのか解らない。
 そしてウルレアールとの話で解ってきたが、どうやら僕の持つ知識はこの世界とは異なる世界の知識のようだ。
 そもそも僕の知識では世界に魔力や魔法は存在しなかった。変わりに科学が発展していた。
 さらに皆はステータスウインドウと言うものを見れないらしい。僕が使っているステータスを見る力は鑑定の魔法だそうだ。魔眼と言われる能力が自分に備わっているから見れる。特別な呪文無しで魔法を使っているそうだ。
 試しにウルレアールに対して使ってみたら、他人のステータスも見れることがわかった。
 ウルレアールの総魔力量が2200ほど。
 僕の方はここに来た当初は5000ほどだったが、数日おきに魔力を吸われ、そのたびに微増。そして魔力枯渇から復帰すると魔力が急増する。そんな感じで現在2万程の総魔力量になった。数日で大きな魔石が1個に魔力を溜めることができる。
 一度放出した魔力も、ウルレアールが1週間から10日かかって復活するが、僕の場合は3,4日で回復する。どうやら魔力回復力も2倍ほどあるようだ。

 そして僕らが住んでいるこの建物は、昔、貴族が使っていた別荘で、放棄されていた建物を修復して使っているそうだ。
 今の僕は、魔力を吸い取る魔力タンクと言う扱いだが死なないようにちゃんとご飯も貰え、家の中で大切に育てられている。まあ一般的には監禁とも言う状態だが。
 おかげで雨風はしのげているしウルレアールが食事も栄養のあるご飯を持ってきてくれるのでそれなりに育っている。
 そして吸われた魔力は、この家に装備された魔道具によって隠蔽の魔法が使われているそうだ。それによってこの土地の領主からも見つからないようになっているそうだ。
 僕が魔力を供給しなければここに貴族がいることがばれて騎士たちが攻めてくるらしい。
 自分で自分の首を絞めているらしい。くやしい。だがなんともしようがない。

 そして魔力を使って建てられたこの建物は、維持のためにも魔力が必要。拡張も出来るし、隠蔽魔法で人が来ないようにしてあるし、弱い魔獣が入り込まない結界も作られているらしい。まあ維持しているのは僕の魔力だけど。
 以前はこの建物、ウルレアールの魔力だけで維持していたそうです。応接室、ロビー、食堂、料理場など共通部分を除いて個人の部屋は5部屋。盗賊は全部で10名。幹部以外は結界内の庭に建物を建ててそこに住んでいる。
 最近は僕の魔力の余剰があるらしく、2部屋増やしたらしい。もちろん幹部が移り住んでいる。
 僕とウルレアールも小さいながら専用の部屋を貰っている。おもに監禁するための部屋だ。めちゃくちゃ汚くて狭いわけではない。
 そしてもう一つ。ダーヴィッドは転移の魔法が使える。だがダーヴィッド自身の魔力は非常に低い。自分の魔力だけでは転移が出来ない。だから僕から吸い取った魔力を使って転移をするらしい。
 最初は自分の魔力を魔石に溜めていた。1年で1個しか溜めることが出来ない。だがウルレアールを誘拐して魔力を吸い上げるようになると魔石に溜める魔力が増えて徐々に活動が活発化。そして僕がそれに加わり魔力を使った転移の頻度はすごく上がっている。
 ただ仕事として転移するのはたまのことらしい。大半は部下を連れて食料を買い込んだり、商人のように転移を使って転売をし、お金を稼いでいるそうだ。
 そしてウルレアールは、僕が連れてこられた時点で21歳。中級貴族の娘で、18歳で結婚して子供を生み、1歳の子供を残したまま誘拐された。
 僕は誘拐された1年前にここに来ている。そしてちょうど連れてこられた僕は1歳前の子供。クリストは自分の子供の名前だそうだ。
 彼女は、家の主人が居ない時にダーヴィッドに屋敷を襲われた。彼女を守ろうとした執事は殺されたそうだ。子供は侍女に預けて屋根裏に逃がしたらしい。
「どうしてママも隠れなかったの?」
「魔力を持つ者が隠れるのは難しいのよ。侍女は平民だったから魔力がなかったの。世話係りの侍女は2人とも平民。2人が覆えば赤ちゃんの魔力は隠せると思ったわ。盗賊たちは私を捕まえた後で魔力を探す装置を使ったけど私以外には魔力が反応しないからと私だけを連れ去ったわ」
「貴族の家って、少ないんですか」
「どうして?」
「なんでママの家が狙われたんですか」
「私の家、まあ実家ね。そこは今の領主様の旦那様を後援する組織に属しているの。中級貴族の中で、土地を持つ実家の中で一番力があったのよ。だから政敵から狙われたのね。ダーヴィッドがそのような事を言っていたわ」
「家に帰りたいですか」
「まあね。でももう無理よ。私の旦那様は別の人と結婚したらしわ。ダーヴィッドがそう言っていたもの」
「それは、諦めさせる口実でしょ」
「そうかもしれないけど、ダーヴィッドは下位だけど貴族よ。盗賊になっていても帰属とは繋がりがあるらしいのよ。それに旦那とは政略結婚だったわ。元々旦那は今の領主様の弟を押していたわ。私はそれを抑えるために結婚したわ。私がいなくなったのだからきっと弟を押す人と結婚するはずよ。ダーヴィッドが言わなくてもなんとなくわかっていたわ」
「ふーん、貴族って難しい世界なんですね」
「まあね。さあ食事の準備をする時間だわ。今日もお手伝いしてくれるのかしら?」
「はい。手伝います」
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