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本編
17.3 名誉男爵クリス・ボードナー
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本来僕は生活向上用品を作りたかったのだ。だが賢者様が持っていた本に書いてあった属性魔法を使った道具は戦争の為の道具ばかりだったのだ。生活で使えそうな魔道具は大半が生活魔法で十分代用できる物ばかりだったのだ。錬金魔法で石から素材を分離させたり配合によって異なる強度を持たせるための配合が書かれた物もあったがそれも武器を作るための資料だった。
「クリスは武器を作るのは嫌なのでしょう。皆がいる時に自分の意見をちゃんと言った方が良いわよ」
母上が気を使って声をかけてくれた。
「奪われた土地を取り返す為。それは母上の願いでもあるので、戦争の道具を作るのは問題ないのです。ですがそれが終わった後の事がきになるのです。その魔道具が僕の知らぬところで国内の争いに使われたり、盗賊が利用したりすることにならないでしょうか。
現に初代賢者様が亡くなっても、作った武器は残っています。
僕が死んだ後も含めて僕の知らない所で人殺しに使われる。それが怖いのです」
「なるほど」
「ならば、戦争が終わった段階で不要な分を破棄させよう。クリスの言う通り過剰な戦力は良くない。領地を取り戻した後その戦力を使って次は侵略だと言い出さないとは言えぬ。
わしも戦いが戦いを呼ぶような事は好まん」
「お父様が言う通り魔道具を作る時に廃却の契約にそう記載しましょう。侵略防止も条項に付けましょう。クリス無しでは領地の奪回は不可能なのだから子爵様や国王陛下も嫌とは言わないでしょう」
「そうであろう、子供との約束だと言われんように我ら全員が契約にサインをしよう」
どうやら大人達は僕の言うことを子供の意見と考えず真剣に考えてくれたようだ。とりあえず、未来を含めて人殺しの手助けをするような事にはならなさそうで良かった。
夜の話し合いは終わり、その日はランバート家で眠った。
翌日は、母上と父上、それに妹とリッカ、パーラを連れてアリスの居る宿屋に移動した。すでに賢者様は宿を引き払いこの国の王都に向かったそうだ。
アリスが緊張した顔で出迎えてくれた。
「アリス、久しぶり。こっちが父上バーディ・ラクサニア。母上アンシェリー・ラクサニア。妹のソフィー。そして幼馴染の二人組リッカ、パーラ」
「あ、あ、アリスでしゅ。よろしくお願いしまっちゅ」
2回もかんだ、どうやらかなり緊張しているようだ。
「アリスさん、今日からこちらにお世話になりますね。クリスの母アンシェリーよ。聞いていた通りの元気そうな子ね」
「妹のソフィーでしゅ」
あれ、ソフィーもかんだぞ。
「ソフィーちゃん、よろしくね。想像していたよりもかわいいわ」
「リッカです」
「パーラです」
「お土産を選んだ人ですね。えっとアリスと言います。よろしくお願いします」
「はい、宿でのクリス様のお世話はわたくしリッカとパーラ二人がやりますから」
「あ、そうですか。じゃあ前回の時と同じで良いのですね」
「アリス様、アンシェリー様の前ではもう少し言葉使いを正すように」
「あ、ごめんなさい」
「謝る必要はありません。クリス様は名誉男爵となられる方です。アリス様はクリス様に甘えず、場に応じた言葉使いが出来るようにしなければなりません。私たちの所作を参考にきちんと学んでください」
「あ、はい」
「クリスは武器を作るのは嫌なのでしょう。皆がいる時に自分の意見をちゃんと言った方が良いわよ」
母上が気を使って声をかけてくれた。
「奪われた土地を取り返す為。それは母上の願いでもあるので、戦争の道具を作るのは問題ないのです。ですがそれが終わった後の事がきになるのです。その魔道具が僕の知らぬところで国内の争いに使われたり、盗賊が利用したりすることにならないでしょうか。
現に初代賢者様が亡くなっても、作った武器は残っています。
僕が死んだ後も含めて僕の知らない所で人殺しに使われる。それが怖いのです」
「なるほど」
「ならば、戦争が終わった段階で不要な分を破棄させよう。クリスの言う通り過剰な戦力は良くない。領地を取り戻した後その戦力を使って次は侵略だと言い出さないとは言えぬ。
わしも戦いが戦いを呼ぶような事は好まん」
「お父様が言う通り魔道具を作る時に廃却の契約にそう記載しましょう。侵略防止も条項に付けましょう。クリス無しでは領地の奪回は不可能なのだから子爵様や国王陛下も嫌とは言わないでしょう」
「そうであろう、子供との約束だと言われんように我ら全員が契約にサインをしよう」
どうやら大人達は僕の言うことを子供の意見と考えず真剣に考えてくれたようだ。とりあえず、未来を含めて人殺しの手助けをするような事にはならなさそうで良かった。
夜の話し合いは終わり、その日はランバート家で眠った。
翌日は、母上と父上、それに妹とリッカ、パーラを連れてアリスの居る宿屋に移動した。すでに賢者様は宿を引き払いこの国の王都に向かったそうだ。
アリスが緊張した顔で出迎えてくれた。
「アリス、久しぶり。こっちが父上バーディ・ラクサニア。母上アンシェリー・ラクサニア。妹のソフィー。そして幼馴染の二人組リッカ、パーラ」
「あ、あ、アリスでしゅ。よろしくお願いしまっちゅ」
2回もかんだ、どうやらかなり緊張しているようだ。
「アリスさん、今日からこちらにお世話になりますね。クリスの母アンシェリーよ。聞いていた通りの元気そうな子ね」
「妹のソフィーでしゅ」
あれ、ソフィーもかんだぞ。
「ソフィーちゃん、よろしくね。想像していたよりもかわいいわ」
「リッカです」
「パーラです」
「お土産を選んだ人ですね。えっとアリスと言います。よろしくお願いします」
「はい、宿でのクリス様のお世話はわたくしリッカとパーラ二人がやりますから」
「あ、そうですか。じゃあ前回の時と同じで良いのですね」
「アリス様、アンシェリー様の前ではもう少し言葉使いを正すように」
「あ、ごめんなさい」
「謝る必要はありません。クリス様は名誉男爵となられる方です。アリス様はクリス様に甘えず、場に応じた言葉使いが出来るようにしなければなりません。私たちの所作を参考にきちんと学んでください」
「あ、はい」
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