上 下
33 / 96
本編

7.1 クリスとして生きる

しおりを挟む
 僕はクリスとして新たな人生を歩む。
 そう考えると前の3代をまたいで一緒に居たアウロスの存在は大きかった。僕が神徒として動いたのは、もしかしたら彼がいたからかもしれない。
 お互いに、依存しあっていたのかもしれない。僕は神徒として、彼は使徒として。
 だがそうして動いた事は、結果的に今の生活にもつながっている。
 母上と父上から聞いた情報を整理すると、元を辿るとアースヴェルギウス王子が広めた農業改革によって、この地の生活は格段に豊かになったそうだ。
 父上が子供の頃は、まだ改革は展開されていなかった。だが、アースアシュリーのおかげでこの地にも改革がもたらされ、近年の食糧事情の改善によって生活が豊かになったそうだ。
 グッジョブ、前世の僕。

 どうやら、同国内を侵略されたが、その後目立った動きがなく、侵攻が停止。
 恐らくは北の地の侵攻が止まっている事が要因の一つだ。
 再び侵攻すると、3国が総戦力を集め戦う事を決めたからだ。
 現状は、子爵領までの侵攻状態のまま平和条約を結び侵攻を止める方向に向かっているらしい。
 ならば、平穏が楽しめそうだ。

 侵略された状態は喜べないが、平和で平穏な生活を送れるのは良き事だ。

 僕は、そんな平穏な情況を知り安心して2歳児と共に遊んでいる。意外にこの子供達が集まる環境が心地よいのだ。
 天使な子供達と触れ合っていると、自分の汚れた心が癒される。特に同じ年齢の女の子、それに一つ上の女の子と遊ぶのが楽しい。
 かつての妹との事を思い出させる。
 そういえば、弟もいたな。だが、ここの男子どもはなんだか汚いのだ。
 鼻水をだらだらと流しながら駆け回っている。女子と比べても元気なのだが、容赦なく暴れまわっている。自分もこんなに汚いのだろうか、どうしても一緒にいる事がなじめない。

 うーん、悪い。一緒に育つのは無理。
 悪いけど、女子と一緒にいるから、君たちは君たちで遊んでくれ。

 そうして、僕は女子の方へと退避し、大人しく過ごしていた。

 子供達の母親が2人ほど来ているが、母上は調子が悪く自分たちの部屋で休んでいる。風邪がうつってはいけないと、母の部屋から追い出され、皆と一緒に過ごしている。
 だが、今日は部屋の中がいつもよりも暗い。照明の魔法が少ないせいだろう。なにげに無意識で無詠唱の照明魔法を使った。
 突然、部屋の中が明るくなった。洗礼式を行っていないのに魔法が発動したのだ。無詠唱だったので僕が発動させたのはばれていない。二人の母親は誰が照明の魔法を使ったのか不思議がっている。お互いに違うと言っている。この場には洗礼式を終えた5歳までの子供がいるので、誰かの魔法が偶然発動したのだろうと言っていた。
 ふう、詮索されずに済んだ。
 今、天井には3つの照明魔法が灯っている。二つは元からあったもの。中央に増えたのが僕の照明魔法で作った物。ただ、元からあった二つよりも大きくて明るい。
 現状で大人よりも効果が高いようだ。
 今までの転生では洗礼式を迎えた時に魔法を使う『かぎが外れた』と言う印象があった。そのかぎが最初から外れていたのか、それとも『かぎが外れる』ような感じが、単にそういう印象を持っただけなのか。
 とにかく、現状で魔法が使える。便利ではあるが、クリスという新しい人生を歩むのにこの特別な力は必要なのだろうか。
 神様から何も聞いていないが、これもプレゼントなのか。
 不思議だ、どういう意図があるのか解らないが洗礼式まではばれないように魔法を使おう。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

旧転生者はめぐりあう

佐藤醤油
ファンタジー
リニューアル版はこちら https://www.alphapolis.co.jp/novel/921246135/161178785/

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~

愛山雄町
ファンタジー
 エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。  彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。  彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。  しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。  そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。  しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。  更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。  彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。  マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。  彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。 ■■■  あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。 ■■■  小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

処理中です...