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第6章 新しい命

6.7.4 10歳式への出発 エレノア編

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 魔物たちが到着した時、戦闘はゴブリンだったが直前にオークたちが前に出て来た。
 魔物たちの半数以上がオークだったようだ。
 魔物たちが第1防衛ラインの少し手前に来た時に最初の一撃が飛んだ。
 先頭に着弾し、左右で10匹ずつが致命傷を負ったようだ。
 その後、クインさんは続けて3発の魔法を撃ちこんだ。
 エレノアはクインさんよりもさらに早く10発近くの魔法を放った。
 1発の威力はクインさんの方が強いが、エレノアは無詠唱だからなのか魔法が行使される速度が段違いに速い。

 この二人の攻撃だけで200体近かった半数が消え去った。
 そう、消え去った。
 傷を負ったオークはそのまま攻めてきているが、大きなダメージを負ったオークは消えたのだ。そして後方で倒れているゴブリンはなぜか倒れたまま死体が残っている。
 自然発生した魔物は倒しても死体が残るが、迷宮産の魔物は倒すと魔石だけを残して消える。
 つまりこの魔物たちは自然発生した魔物と迷宮産の混合部隊と言うことだ。

 そして、部隊の半数が倒され場合、人間同士の戦いであれば、戦力の半数を失えば確実に撤退。だが魔物にそのルールは当てはまらない。
 特に統率された迷宮産の魔物は、全滅するまで最初の命令を順守する。
 なので、半数が消えても変わらず無謀に突っ込んで来る。

 魔法の攻撃は魔物たちの中央や後方で爆発していた。
 エイミーと数名の騎士が左側から魔物に突っ込み、蹴散らし始めた。
 右側はタロウと言う黒狼が一体で無双している。騎士がいると邪魔と言うこともあり、そちらに騎士達は1人もいない。
 中央部の大魔法攻撃がやんだ後、弓での攻撃が続く。
 後方から上位種と思われる大型の魔物がそれらの攻撃を無視するかのように突撃してくる。
 エレノア様は、あれだけの魔法攻撃をしたはずなのに、爆発系の魔法から土魔法での攻撃に切り替え、今も魔法を発動させ続けている。
 それも無詠唱で。

 弓と、石による攻撃で雑魚の足は止まり、そのまま倒れていくが、突撃してくる上位種には効かない。
 上位種が数体突出して出たため、後続と切り離されたが、一切気にすることなく単独でこちらに攻めて来た。

 敵が近づいて来る。
 私が止めるしかない。
 ひときわ大きい上位種の前に居た中くらいの魔物を私の専属護衛が止めに行った。
 この大きい上位種がオークなのかゴブリンなのか解らないが、巨大な体に、醜悪な顔。
 恐怖感を抑え込み、エレノアを守るために上位種に向かって切り込んで行った。

 半年ほど前からジルベール様の指導を受け、格段に能力が向上したとはいえ、普段であれば倒せると思えないほど巨大な上位種。
 だが、この旅で持って来ていた剣は特別な剣だ。
 この剣は飾りの多いただの宝剣ではない。カルスディーナ公爵家が持つ由緒正しい魔剣だ。エイミー様もこの剣はすごいと言っていた。
 事前に魔力も込めてあり、魔法による補助によって竜の鱗にもダメージを与える事ができるらしい。
 もちろん、当てなければ意味は無いのだが。

 大振りで振りかぶってくる上位種の攻撃を身体強化最大でよけ、相手の首元に右から振りかぶり剣を当てる。
 残念ながら狙いが少し下になり、肩口に剣が入る。しかし剣は当てるだけで良かった。
 相手の自らの動きでそのまま切れていった。
 そして、先ほど空振りした相手の大きなこん棒はどこかに飛んで行った。
 だが、私の剣が途中で止まった。
 最後まで振れ切れない。

 上位種がそのままで一歩下がる。
 それによって剣が抜ける。位置的に私は上位種の正面に立つことになった。

 相手の左腕は私の攻撃によって動かない。
 だが、2m近い身長の上位種はその太い右腕で私を殴ろうと振りかぶった。
 残念だが、先ほどの攻撃で身体強化の力を使いすぎたせいか、私の体が硬直して動かない。
 このままではまずい。
 直撃される拳を覚悟したが、相手の攻撃はこちらに来なかった。
 後ろからタロウという黒狼が右腕にかみつき止めていた。
 僅かに右側をみると上位種の後ろに続いていた敵が存在していなかった。
 エレノアがタロウがこちらに来れるように土魔法で石を飛ばして道を作っていたのかもしれない。
 そのままタロウが上位種を抑え込む。僅かに遅れて私の騎士達が上位種の足に剣を突き刺した。
「クリシュナ様、もう一度です」
 声が聞こえた瞬間、硬直時間が終わったのが解った。
 私は飛び上がりもう一度剣を振るった。
 今度は相手の動きで切るのではなく、私が剣を振り切った。
 
 上位種の首が落ちる。
 それと同時に目の前の巨大な魔物が消え、魔石が落ちる音が聞こえた。
 倒せた。
 だけど、体が動かない。
 限界を超えた身体強化を2度も使った反動だろう。

 すぐにタロウと言う黒狼が目の前に来た。
 私の前で顔を足元でくいっとやるのが見えた。
 すると次の瞬間、空が見えたような気がした。
 手になにかの毛の感触がする。黒狼の背中のようだ、多分。
 次に、エレノアが私の後ろに落ちて来た。
 なぜか、風を感じるが上下に揺れるのに落ちそうな感じは無い。
 背中に吸い付くように感じがして、安定していた。
 気が付くと堀を超えて街の中に入っていた。
 そして、救護班の人達のところで降ろされた。

 周りから声をかけられるのだが、体がめちゃくちゃ痛い。
 すでに筋肉痛が始まっている。
 周りの声も聞こえず、そのまま気絶した。
 
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