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第五章
落ちてゆく砂
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「……で、そういう状況か?」
「仕方がなかろう、起こしては可哀想だ」
からりと晴れたシルワリアの町は、長い眠りから覚めた人々で再び賑わいを取り戻していた。とは言え、元々が勤勉で穏やかな者が多いのだと言うシルワリアである。特に宴が開かれるでもなく、皆が一行に感謝の言葉やお礼の品を渡すと、すぐに普段の暮らしに戻ったのだった。それでもどこか皆が落ち着かない様子なのは、やはり救世主の封印を目の当たりにしたからなのか、ところどころで嬉しそうに噂話をしているようだ。
当の救世主はと言うと、極度の疲れには勝てず、すっかり眠ってしまっている。その様子を見てカミーユが呆れた声をあげたのは、寝姿があまりに、そう、羨ましかったからだ。
「せっかく晴れたのだ、陽に当たったほうが良いだろう」
「俺が突っ込んでるのは場所の話じゃねえんだけどな」
あたたかな木漏れ日の美しいベンチに腰掛けたエリーは、その膝の上に優人の頭を乗せて、雨に濡れて少ししっとりとした優人の黒髪を指で遊んでいた。所謂、膝枕の状態である。
この状況は、カミーユとしてはおもしろくないと感じても仕方がないだろう。
「シンシアはどうした?」
「集まった星石の数が半端じゃねえからな。転送作業をしてる、まったく働き者だなアイツは」
その前にがっつりメシも食ってたけどな、と付け足される言葉に思わずエリーも笑った。カミーユは小さな巾着袋をエリーに手渡す。エリーが食糧として持ち歩く分の星石である。
「エリーもきちんと食えよ、あんだけ集まったんだしよ」
「……ああ、わかっている。もうフラついたりなどしない」
エリーが食事をなるべく控えていたのは、優人の前だから、だけではなかった。後の貯蓄をなるべく多く残すためである。
人よりも長く長く生きる星の一族にとっては、救世主の手でしか作ることのできない星石が目減りしていくことは、即ち一族にとっては近い未来の飢えを危惧させることだ。せめてそれを、先延ばししたいと考えるのは自然なことである。
それは、優人も感じていることでもあるのだろう。エリーは、優人がいつもこうして深く眠ってしまうまで頑張るのは、自分のせいなのかと考えることがあった。一族のためと言い訳をして、自分の身のかわいさに、頑張りすぎる優人を止めることができずにいることが、エリーは時折情けないと唇を噛むのだった。
「……わたしたち一族は、途絶えるのか?」
「……! 何を、」
カミーユはエリーの突然の問いに目を見開く。
「日誌、本当はもっと先まで読み解けているのだろう?わたしは……恐れてはいない。覚悟はしているつもりだ」
カミーユは言葉が出ない。震えがエリーにバレてしまわないように、拳をぎゅっと強く握った。何も言えず息を詰まらせるだけのカミーユを、エリーは極めて冷静に、とても落ち着いた目で見つめていた。
「……俺は、」
何と言葉を紡げばよいのかわからない。事実、カミーユにはまだエリーたちに明かしていないことがある。けれど、それを明かしていない理由は、まだひとつではないのだ。
「……もう少し、時間をくれ」
「構わん。すまない、急かしたかったわけではないんだ」
「いや、まだ……まだわからないことが多いんだ。ちゃんとわかってから、話したい」
「ああ、それでいい。ただ、わたしは大丈夫だと、伝えておきたかった」
エリーは強い。
この世界の成り立ち、そしてこの旅の行方。これから何を知ることになるのか、これからどうなってしまうのかを考えると、カミーユでさえ怖くなる。知らなくてはならないのに、知るのが怖くてたまらない。
それでも、大丈夫だとエリーは言う。怖くないはずはない。エリーは人間ではないが、それでも心はある。そして、やはり生きたいと願っている。そのはずなのに、それでも目を逸らさずに、大丈夫だと言うのだ。
エリーを守りたい、カミーユはそう思ったから王族付きの僧侶になった。けれど、今のこの状況はどうだ。情けない顔をした自分と、強い光をその目に宿すエリーを比べてしまえば、一体どちらが守られているのかわからない。
「……悪い」
カミーユはそう吐き捨てるように言い残し、その場を去る。エリーは何に謝られたのかわからず、それでも黙ってその背中を見送ったのだった。
エリーには、その謝罪の言葉だけを残して離れていくカミーユの姿が、自分たちの未来のような気がしてならなかった。
射し込む陽射しはあたたかい。それを受けて、優人はまだ穏やかな寝顔を見せて眠っている。それでもエリーの寂しそうな目は、その温度を持たない体と同じように、どこか冷たい色をしていた。
光に満ちた緑の町は、すっかりとその活気を取り戻した。深く眠り、なんとか体調を持ち直した優人が再び歩けるようになると、一行は次の目的地へと向かうこととなる。
がたがたと揺れる馬車は、シルワリアの更に南西の方角へとひた走る。晴れた美しい森が、どんどんと小さくなっていった。
「良い町だったね」
「ええ、私もあの静かな森とあの穏やかな人々が好きです。マヒアドはかなり、賑やかですから」
「ああ、わたしも……ああいうところは落ち着く」
確かに、直前に訪れていたマヒアドは都会的でとても賑やかな場所だったために、シルワリアの静けさや穏やかさはより際立って感じられる。優人はどちらかと言えば都会育ちなので、あれほど緑に囲まれて過ごしたことはなく、とても新鮮であり、同時にとてもそれを好ましく思った。
優人とエリー、シンシアが言葉を交わすなか、カミーユはぼんやりと外の景色を眺めたまま、口を開くことはなかった。日誌の解読を始めてから、カミーユはこうして黙り込み、ぼんやりしていることが多くなった。正確には、優人が討伐作戦から帰った日の宴……おそらくはその前の日に、何かがあったのだろう。
カミーユがその鋭い眼光をどこか不安げに揺らめかせている理由を、誰も尋ねることができずにいた。気づいていないわけでは、決してない。けれど、誰もが怖かったのだ。カミーユが何を知ってしまったのかを、知ることが。
もうシルワリアの森はすっかり見えなくなってしまった。一行は馬車に揺られながら、風で飛ばされないよう慎重に地図を広げる。
「次は、どんなところなの?」
「次に向かうのはジュジという町だ。ここから結構離れていてな、途中にひとつ小さな集落を経由する」
優人が問えば、エリーが地図を指でなぞりながら話してくれる。それを目で追うと、その先はこれまで訪れた町やその周囲とも違う、薄い黄色で色が塗られている。
「……まさか、砂漠?」
「そのまさかだ」
優人の予感は的中した。暦の上では秋ごろのはずであるが、しばらく南下を続け、じわじわと暖かい気候になってきていた。改めて地図を眺めると、現在地の時点で王城からはかなり離れていることがわかる。ここからさらに大幅に南下していくとなれば、その地図の色が示すのは砂、砂漠地帯だと考えたのだ。
「カミーユは、そこにも行ったことあるの?」
優人がカミーユに尋ねれば、カミーユは一瞬それまで優人のことなど忘れていたかのようにピクリと驚いた顔をした。
「ああ、一応な。砂漠の中とは言え、賑やかなところで……そうだな、デアルクスに少し似た雰囲気かもな」
カミーユは多少上の空ながら、きちんと受け答えはする。そのことに優人は少し安堵するが、どこかいつものすごみのない表情は消えていなかった。
「それにしても、砂漠かあ……ずいぶん、遠いところに来たね」
かなり長い時間をかけたものの、自分たちの足での移動が多かったためにいまいち距離感が掴めていなかったが、一行の移動距離はかなりのものだった。
スタートした王城は地図の北東に位置した涼しくさわやかな気候であったが、町々を移動するたびにどんどんと南下していき、温暖な気候になってきているのを肌で感じる。
「ああ、それにここからはこの馬車でしばらく移動する。今はまだこの辺だな」
地図を指でなぞり、進路を示すエリー。
「ここに、さっき馬車を借りた一度ここで休憩を取ってから、また進む。今日この時間だと、ここで夜まで休むことになるだろうな」
「そのほうが賢明ですわね。今の季節少し暑さが和らぐとは言え、このまま進めば砂漠地帯に差し掛かる頃には最も暑い時間になります。それは避けた方がよろしいかと。陽が落ちてからの出発であれば、スムーズに進めば厳しい時間帯に入る前に町に着けるはずです」
優人にとっては初めての砂漠地帯だ。想像もできない暑さは恐ろしく、避けられるのならば避けたい。
「砂漠地帯の魔物は基本的に夜行性だ。本来なら夜の移動も避けるべきだが……我々の目的は魔物を減らすことだからな。砂漠の脅威が減らせるのならばここで、ということだ」
敢えて危険な道を選ぶということである。これも強力な魔法使いであるシンシアが仲間に加わったことによって戦闘も楽になっている証拠だ。未だに戦うことには慣れない優人ではあるが、戦い方が増えていくことにはホッとしていたのだった。おかげで魔物の中に突っ込んでいくようなこのルートにも、頷くことができた。
頑張ろう、そう自分につぶやくと、それを聞いていたエリーも頷き笑った。
「仕方がなかろう、起こしては可哀想だ」
からりと晴れたシルワリアの町は、長い眠りから覚めた人々で再び賑わいを取り戻していた。とは言え、元々が勤勉で穏やかな者が多いのだと言うシルワリアである。特に宴が開かれるでもなく、皆が一行に感謝の言葉やお礼の品を渡すと、すぐに普段の暮らしに戻ったのだった。それでもどこか皆が落ち着かない様子なのは、やはり救世主の封印を目の当たりにしたからなのか、ところどころで嬉しそうに噂話をしているようだ。
当の救世主はと言うと、極度の疲れには勝てず、すっかり眠ってしまっている。その様子を見てカミーユが呆れた声をあげたのは、寝姿があまりに、そう、羨ましかったからだ。
「せっかく晴れたのだ、陽に当たったほうが良いだろう」
「俺が突っ込んでるのは場所の話じゃねえんだけどな」
あたたかな木漏れ日の美しいベンチに腰掛けたエリーは、その膝の上に優人の頭を乗せて、雨に濡れて少ししっとりとした優人の黒髪を指で遊んでいた。所謂、膝枕の状態である。
この状況は、カミーユとしてはおもしろくないと感じても仕方がないだろう。
「シンシアはどうした?」
「集まった星石の数が半端じゃねえからな。転送作業をしてる、まったく働き者だなアイツは」
その前にがっつりメシも食ってたけどな、と付け足される言葉に思わずエリーも笑った。カミーユは小さな巾着袋をエリーに手渡す。エリーが食糧として持ち歩く分の星石である。
「エリーもきちんと食えよ、あんだけ集まったんだしよ」
「……ああ、わかっている。もうフラついたりなどしない」
エリーが食事をなるべく控えていたのは、優人の前だから、だけではなかった。後の貯蓄をなるべく多く残すためである。
人よりも長く長く生きる星の一族にとっては、救世主の手でしか作ることのできない星石が目減りしていくことは、即ち一族にとっては近い未来の飢えを危惧させることだ。せめてそれを、先延ばししたいと考えるのは自然なことである。
それは、優人も感じていることでもあるのだろう。エリーは、優人がいつもこうして深く眠ってしまうまで頑張るのは、自分のせいなのかと考えることがあった。一族のためと言い訳をして、自分の身のかわいさに、頑張りすぎる優人を止めることができずにいることが、エリーは時折情けないと唇を噛むのだった。
「……わたしたち一族は、途絶えるのか?」
「……! 何を、」
カミーユはエリーの突然の問いに目を見開く。
「日誌、本当はもっと先まで読み解けているのだろう?わたしは……恐れてはいない。覚悟はしているつもりだ」
カミーユは言葉が出ない。震えがエリーにバレてしまわないように、拳をぎゅっと強く握った。何も言えず息を詰まらせるだけのカミーユを、エリーは極めて冷静に、とても落ち着いた目で見つめていた。
「……俺は、」
何と言葉を紡げばよいのかわからない。事実、カミーユにはまだエリーたちに明かしていないことがある。けれど、それを明かしていない理由は、まだひとつではないのだ。
「……もう少し、時間をくれ」
「構わん。すまない、急かしたかったわけではないんだ」
「いや、まだ……まだわからないことが多いんだ。ちゃんとわかってから、話したい」
「ああ、それでいい。ただ、わたしは大丈夫だと、伝えておきたかった」
エリーは強い。
この世界の成り立ち、そしてこの旅の行方。これから何を知ることになるのか、これからどうなってしまうのかを考えると、カミーユでさえ怖くなる。知らなくてはならないのに、知るのが怖くてたまらない。
それでも、大丈夫だとエリーは言う。怖くないはずはない。エリーは人間ではないが、それでも心はある。そして、やはり生きたいと願っている。そのはずなのに、それでも目を逸らさずに、大丈夫だと言うのだ。
エリーを守りたい、カミーユはそう思ったから王族付きの僧侶になった。けれど、今のこの状況はどうだ。情けない顔をした自分と、強い光をその目に宿すエリーを比べてしまえば、一体どちらが守られているのかわからない。
「……悪い」
カミーユはそう吐き捨てるように言い残し、その場を去る。エリーは何に謝られたのかわからず、それでも黙ってその背中を見送ったのだった。
エリーには、その謝罪の言葉だけを残して離れていくカミーユの姿が、自分たちの未来のような気がしてならなかった。
射し込む陽射しはあたたかい。それを受けて、優人はまだ穏やかな寝顔を見せて眠っている。それでもエリーの寂しそうな目は、その温度を持たない体と同じように、どこか冷たい色をしていた。
光に満ちた緑の町は、すっかりとその活気を取り戻した。深く眠り、なんとか体調を持ち直した優人が再び歩けるようになると、一行は次の目的地へと向かうこととなる。
がたがたと揺れる馬車は、シルワリアの更に南西の方角へとひた走る。晴れた美しい森が、どんどんと小さくなっていった。
「良い町だったね」
「ええ、私もあの静かな森とあの穏やかな人々が好きです。マヒアドはかなり、賑やかですから」
「ああ、わたしも……ああいうところは落ち着く」
確かに、直前に訪れていたマヒアドは都会的でとても賑やかな場所だったために、シルワリアの静けさや穏やかさはより際立って感じられる。優人はどちらかと言えば都会育ちなので、あれほど緑に囲まれて過ごしたことはなく、とても新鮮であり、同時にとてもそれを好ましく思った。
優人とエリー、シンシアが言葉を交わすなか、カミーユはぼんやりと外の景色を眺めたまま、口を開くことはなかった。日誌の解読を始めてから、カミーユはこうして黙り込み、ぼんやりしていることが多くなった。正確には、優人が討伐作戦から帰った日の宴……おそらくはその前の日に、何かがあったのだろう。
カミーユがその鋭い眼光をどこか不安げに揺らめかせている理由を、誰も尋ねることができずにいた。気づいていないわけでは、決してない。けれど、誰もが怖かったのだ。カミーユが何を知ってしまったのかを、知ることが。
もうシルワリアの森はすっかり見えなくなってしまった。一行は馬車に揺られながら、風で飛ばされないよう慎重に地図を広げる。
「次は、どんなところなの?」
「次に向かうのはジュジという町だ。ここから結構離れていてな、途中にひとつ小さな集落を経由する」
優人が問えば、エリーが地図を指でなぞりながら話してくれる。それを目で追うと、その先はこれまで訪れた町やその周囲とも違う、薄い黄色で色が塗られている。
「……まさか、砂漠?」
「そのまさかだ」
優人の予感は的中した。暦の上では秋ごろのはずであるが、しばらく南下を続け、じわじわと暖かい気候になってきていた。改めて地図を眺めると、現在地の時点で王城からはかなり離れていることがわかる。ここからさらに大幅に南下していくとなれば、その地図の色が示すのは砂、砂漠地帯だと考えたのだ。
「カミーユは、そこにも行ったことあるの?」
優人がカミーユに尋ねれば、カミーユは一瞬それまで優人のことなど忘れていたかのようにピクリと驚いた顔をした。
「ああ、一応な。砂漠の中とは言え、賑やかなところで……そうだな、デアルクスに少し似た雰囲気かもな」
カミーユは多少上の空ながら、きちんと受け答えはする。そのことに優人は少し安堵するが、どこかいつものすごみのない表情は消えていなかった。
「それにしても、砂漠かあ……ずいぶん、遠いところに来たね」
かなり長い時間をかけたものの、自分たちの足での移動が多かったためにいまいち距離感が掴めていなかったが、一行の移動距離はかなりのものだった。
スタートした王城は地図の北東に位置した涼しくさわやかな気候であったが、町々を移動するたびにどんどんと南下していき、温暖な気候になってきているのを肌で感じる。
「ああ、それにここからはこの馬車でしばらく移動する。今はまだこの辺だな」
地図を指でなぞり、進路を示すエリー。
「ここに、さっき馬車を借りた一度ここで休憩を取ってから、また進む。今日この時間だと、ここで夜まで休むことになるだろうな」
「そのほうが賢明ですわね。今の季節少し暑さが和らぐとは言え、このまま進めば砂漠地帯に差し掛かる頃には最も暑い時間になります。それは避けた方がよろしいかと。陽が落ちてからの出発であれば、スムーズに進めば厳しい時間帯に入る前に町に着けるはずです」
優人にとっては初めての砂漠地帯だ。想像もできない暑さは恐ろしく、避けられるのならば避けたい。
「砂漠地帯の魔物は基本的に夜行性だ。本来なら夜の移動も避けるべきだが……我々の目的は魔物を減らすことだからな。砂漠の脅威が減らせるのならばここで、ということだ」
敢えて危険な道を選ぶということである。これも強力な魔法使いであるシンシアが仲間に加わったことによって戦闘も楽になっている証拠だ。未だに戦うことには慣れない優人ではあるが、戦い方が増えていくことにはホッとしていたのだった。おかげで魔物の中に突っ込んでいくようなこのルートにも、頷くことができた。
頑張ろう、そう自分につぶやくと、それを聞いていたエリーも頷き笑った。
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