BL短編集

青春のかけら

高校生の樹は、いつもように静かに授業に集中していた。彼の周りでは、友達同士が騒がしく話し合ったり、スマートフォンで何かを見たりしている。しかし、樹は自分の席に座り、黙々と教科書を読んでいた。

「樹くん、今日の宿題、わからないところあった？」隣の席に座る友達が声をかけてきた。

「あ、いや、大丈夫だよ。ありがとう。」樹は微笑みながら答えた。

樹は目立たない存在だった。身長も普通、容姿も地味で、クラスの中でも特に目立たない存在だった。彼はいつも周囲の人たちとの距離を保ちながら、自分の世界で静かに生きていた。

その日も授業が終わり、樹は机にしまって教室を出ようとした。すると、クラスメイトの一人が声をかけてきた。

「樹くん、一緒に帰ろうか？」

「え、あ、いいよ。ありがとう。」

そのクラスメイトは輝という名前の男子生徒だった。彼はスポーツ万能で、クラスの人気者だった。いつも笑顔で周囲とコミュニケーションを取りながら、自然と人々を引き付けるような魅力を持っていた。

二人は一緒に学校を出て、家路についた。途中、輝が樹に話しかけてきた。

「樹くん、今度バスケでもやろうよ。」

「バスケ？あ、いや、僕は…」

「大丈夫、初心者でもいいよ。楽しいからさ。」

樹は戸惑いながらも、輝の誘いを受け入れた。彼は普段あまりスポーツをすることがなかったが、輝と一緒ならば楽しい時間を過ごせるかもしれないと思った。

その週末、樹と輝は学校の体育館でバスケットボールを楽しんだ。輝は樹に基本的なプレイを教えながら、笑顔で彼を励ましていた。樹も少しずつ慣れていき、楽しい時間を共有することができた。

その後も二人は何度か一緒に遊び、徐々に距離が縮まっていった。樹は輝の明るさや優しさに触れながら、自分自身と向き合うきっかけを得ていた。一方の輝も、樹の真摯な姿勢や内面に惹かれていた。

ある日、放課後、二人は学校の屋上で一緒に過ごしていた。夕日が空に沈む中、静かな空気の中で二人は寄り添いながら話をしていた。

「樹くん、ありがとう。君と一緒にいると楽しいよ。」

輝の言葉に、樹は照れながらも微笑んだ。

「こちらこそ、輝くん。君のおかげでたくさんのことが見えてきたよ。」

二人の視線が交差し、そこには青春のカケラが輝いていた。

周囲の目や差別に立ち向かいながら、彼らは互いの想いを受け入れ、青春の中で成長していくのだった。