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「運命を知っているオメガ」×「運命を知りたくないベータ」
5、クリスマスパーティー 1
しおりを挟む俺と司に子供が出来た!
大学最後の年に俺は妊娠出産を経験した。一応なんとか単位を取得して大学は司と一緒に卒業したぜ! 俺は凄く頑張ったと思う。
大学生の時に、司は俺の家で一緒に暮らすことになった。結婚は二十歳になってからって約束だったけれど、司は結婚前には同棲したいと言った。そしたらなんと、いつの間か母さんは小説家になっていて印税ががっぽりと入ったので、家を二世帯用に建て直してくれたんだ。
母さんは俺と司の秘密のストーリーを本にしたんだよ。めでたく出版された本を、俺は第一章で閉じた。息子が読める話ではなかったな、うん。一言で言うと卑猥だった。司は凄く良いって言って熟読していたけどな……あいつのメンタルがある意味最強で驚きの瞬間だった。ちなみに父さんは、愛する母さんの本でも息子の性生活なんて読めないって言って読まなかったらしい。というか、それ母さんの妄想だからな? どんな性生活を本にしたんだよ!? 俺と司のエッチなんて母さん知らねぇだろう。なんて想像力を息子で働かせているんだよぉ。
それがベストセラーとなってお金が入ったわよ――って言って二世帯住宅を建ててくれた。とにかくそんな流れで俺たち家族の中に自然と司が入ってきたわけだった。
司は俺の生活能力の無さを見抜いていたのかな?
二人きりの新婚生活ではなくても問題なかったらしい。むしろ俺は真山家に守られている方が安心だと両親と司が一致団結していた。俺ってそんなに問題児? とにかくそのおかげで生活が変わることなく、母さんが助けてくれる中で俺の妊娠中も負担なく大学に通って出産までこぎつけた。
そして俺は天使を二人も産んでしまった。
俺と司の子供は双子の男の子たちだった。とにかく初産は大変で俺はもう人生で一番泣いたわ。でも司がもっと酷い顔をして泣いていたのを見て、痛みも引いた。そしていろいろ引いたよ。結婚式で涙流しまくりの司にも引いたけど、産後に一番引いたわな。
あいつアルファのくせして、出会った頃は魔王みたいな怖い顔していたくせに、俺よりも子供で感動屋さんで、まぁ可愛いんだ。でも俺は出産で疲れ切って、頼りない泣き虫な旦那を見て、それこそが安定の司だと安心して子供を託したっけな。
産後のダメージが残ってしまってしばらくは使い物にならなかったら、司が一生懸命頑張ってくれた。そこで親としての自覚が生まれたみたいで良かったよ。
母さんは司の能力に感心していた。
俺が出産した頃には母さんは数冊書き終えていて、これじゃあ小説と現実がかけ離れちゃうわと嘆いていた。母さんのストーリーではアルファの旦那……小説の中のモデルは司ね。司とオメガの嫁である俺は二人とも、あたふたと子供を育てるという小説をすでに書き終えて出版までしていたのに、肝心の司は華麗に双子をあやしていた。ちなみに母さんの読み通り俺はあたふたしていたよ?
というわけでアルファの能力を最大限に発揮して、スパダリ子育てをしていた司だった。だけど司は大学を卒業して仕事もしていたので、平日の日中は母さんがサポートしてくれていて、やはりあたふたしたのは俺だけだった。
まぁそんな感じで両親に助けられながらも、二人わちゃわちゃと一生懸命子育てをしてきた。家事はほぼ母さんがしてくれていたから、そこまでの負担はなかったけれど、それでも寝不足やら疲れやら、性欲の強い旦那やらで? あっという間に季節は変わっていた。
そんなある日、海斗さんから連絡がきた。年末は日本に帰るから、会わないかって。
海斗さんは、櫻井の奥さんでトップモデルをしている超絶美人な男性だった。二人の子供は既に四歳で、海斗さんに似てとても美しい顔をしている男の子。櫻井がメロメロなんだよな、確かに二人の子供の空は超絶いい子で可愛いからな。
海斗さんはベータ男性だったんだけど、それは櫻井の執拗な愛情のせいで? 世にも珍しいオメガ化を果たしてしまった。それについては症例がほぼなく、世間に知られると危険の伴う可能性もあると海斗さんの主治医と相談をして、ベータだったという過去は秘密になった。もともとバース不明モデルをしていたので海斗さんの性別を知る人は家族や俺達くらいだったから、櫻井との結婚の時にオメガと発表してもなるほどねって具合に世間に認められていた。
櫻井と海斗さん、そして一人息子の空は、日本とイギリスを行き来した暮らしをしている。櫻井は実家も有名なジュエリーブランドなのに、海斗さんが専属モデルをしているイギリスの老舗ジュエリーの日本支社長に就任したんだよ。あいつはマジですげぇアルファだった。
日本での仕事をしつつ、海斗さんのイギリスでのモデル活動のために櫻井家族はみんな一緒に数カ月ごとに日本とイギリスで暮らしている。最近はずっとイギリスで仕事をしていたので、やっと日本に戻ってくるっていうから会いたいわけだ。
櫻井は在学中からもう社長業をしていたが、司はこの春大学を卒業して実家のホテルで司のお父さんである翔さんのもとで社長業を学んでいる。俺はというと、大学卒業後は専業主夫だ。子育てしかしていない。
櫻井家族とは俺達家族ぐるみで付き合いが続いていた。櫻井たちが日本にいる時は、高校時代の友人の近藤や明と共にみんなでよくつるんでいた。俺が双子を産んでからは慌ただしくて疎遠になってしまったが、こんな機会だから会えるのを楽しみにしていた。
俺は二人の赤ん坊が心配だと言ったら、海斗さんが家に空と遊びに来ることになったんだ。そしたら櫻井も付いてくると言い出して、そしたら明と近藤も伴侶を連れて行くから一緒に会おうぜとなり、そしたら司がやきもちを妬いて俺も参加するって言って、とにかく大人数で会うことになった。
母さんが我が家にセレブがやってくる――って張り切りだしたんだ。
結果、クリスマスパーティーを開催することになった。まぁ双子もベビーベッドでお休みしていたら問題ないかな。たまにはみんなで楽しみたいからちょっと嬉しかった!
***
「運命を知りたくないベータ」の海斗とその家族のネタバレが含まれます。そしてその後の話に繋がる物語もこちらの番外編で追加しました!お楽しみくださいませ。
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