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本編
35、運命の2人はこんな雰囲気なんだ
しおりを挟む俺達に気がついたアルファは、沙也加ちゃんだけを見つめて微笑んだ。
「沙也加お疲れ様。昨日別れたばかりなのに会いたくてたまらなかった」
「響也さん、私も……」
これは、俺は邪魔ではないだろうか? 番になったばかりの運命の二人。
俺なんかに紹介するならもう熱も冷めた一年後とかでもよくないか? 改めて運命とは、番とは、こんなにも空気感が違うのだと感じた。そして自分の運命がますます否定的なものとなっていく。
「あっ、響也さん! 昨日言っていた私の一番のお友達の正君、素敵な男の子でしょ? 正君、こちらが私の番の響也さん」
「君の話は、妬いてしまうほど沙也加から聞いているよ、会えて良かった」
これは牽制? 俺はオメガだけど男だからかな? どう答えたらいいんだ?
「俺も、今日あなたのことは聞いたばかりなんですが、おめでとうございます。沙也加ちゃんにはクラス唯一のオメガとして仲良くしてもらっています。友達に、あなたみたいな素敵な番ができて本当に嬉しいです」
「ああ、そうだよね、ごめん。つい君みたいな男の子と楽しそうにしているのを見て、嫉妬してしまって。沙也加は、正君正君って言うものだから」
「ふふっ、俺と沙也加ちゃんはそんな関係じゃありませんよ。誰にでも優しい女の子だから、オメガ教育をされてこなかった俺に色々教えてくれているだけなんで。それに、俺あなたのファンなんです! 入江さんの名前聞いた時驚いたけど、そんな凄い人が沙也加ちゃんの番になったなんて嬉しくて」
すると彼女がすかさず入ってきた。
「正君! 響也さんはあげないからねっ」
「沙也加ヤキモチ? 可愛いな」
沙也加ちゃんが入江さんの腕に絡みついて、俺にプクって顔して言ってきた。
「んもう! 正君がいくら綺麗だからって、響也さんもダメだからね!」
「僕には沙也加だけだよ」
可愛いな、沙也加ちゃんは俺をきちんとしたオメガだと思ってくれる唯一のクラスメイト。
所詮男オメガだから誰と番でもいいだろう風な、下に見る形の奴らが櫻井のサポートをしたベータだった。他のクラスメイトは俺をオメガとは扱わずに普通の男として見てくれる。といっても男扱いというよりは、親しみやすいクラスメイト扱いだけどな。
彼女だけはなぜか俺にフィルターがかかっているのか、かっこいいとか綺麗とかオメガが言われて喜びそうな言葉をかけてくれるけど、悪い気はしなかった。
入江さんもまんざらではないみたいで二人の柔らかい雰囲気、いいな。俺はそろそろ退散した方がいいかな。
「二人とも幸せそうで羨ましい。運命って素敵ですよね」
「聞いたんだね? 僕も実際に会ってみるまで半信半疑だったんだけど、驚いたよ。もう沙也加以外目に入らないから」
「それって普通の番と違うんですか? アルファ側にも、他のオメガには感じない何かを、出会った瞬間にわかるんですか?」
「正君は、もしかしてすでに運命に会った?」
えっ、俺がっついて聞きすぎたかな。
「い、いえ、その、俺もこんなんだけどオメガなんで、憧れるというか。男だしオメガっぽくない俺は運命に出会ったらアルファに気づいてもらえるのかなって、すいませんっ変なこと聞いて」
「大丈夫だよ。細胞がその子を離さないってなるし、抗えない何かを感じるから気がつくと思うけど。僕は仕事上、人と会う時には薬を飲んで自衛していて、その日はたまたま飲んで無かったんだ。もし抑制剤を飲んでいて、沙也加に気づけなかったらと思うと少し怖いけど、それでも何かしら気づくとは思うな」
俺は真剣に聞いたしまった、そしたら入江さんはくすって笑って変なこと言う。
「君はとても綺麗で、オメガそのものだと思うよ。オメガとして生きる覚悟を決めるなら、自分の容姿を認めてみたら?」
「えっ」
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