運命を知っているオメガ

riiko

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本編

26、昼休み

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 昼休みになって、クラスメイトの近藤と食堂に向かっていた。

「久しぶりの登校で久しぶりの授業、めちゃつかれたわ――」
「つかれたわ――って正樹、お前こっそり寝ていただろう」
「うっ、だって、毎日昼まで寝ていたから、この時間まだ俺っち、おネムなんだよ」
「はいはい、寝る子は育つしな」

 久しぶりの食堂楽しみだ。毎日母さんの手料理だったのはいいのだけど、朝食と夕飯は父さんがいるから、父さんの好みの和食しか出ない。だが、しかし。

『ママね、朝食と夕食はパパと正樹の健康を考えてご飯作っているでしょ、だから昼は自分の食べたいものしか食べないって決めているの』

 そう言われたら、仕方ない。何かリクエストしようかと思っていたが、いつも母さんの飯はうまいし、一体昼は何を食えるのだろうと期待した俺の気持ちを返せ!

 毎日、昼は拷問のような食事を出された。

 一日目、パンケーキ。

 二日目、ハニートースト、アイスを添えて。

 三日目、チョコバナナパフェ、って家であんなパフェ作れるの? 逆に母さん何者!? 飾りのりんごがなんだかクジャクみたいになっているよ。ってか、飾りに一番の努力デスカ。そして、こんな器が一般家庭にあるモノデスカ? というかパフェって飯だったの? 疑問しか無かった。

 四日目、小松菜のスムージー……ここにきて昼飯ドリンクだけ? というかこれは飯なのか?

 五日目、察してくれ。

『さすがに毎日だと高カロリーでしょ、ママはこうやってプチ断食する日もあるのよ、えへっ、』って。

 これって、お食事デスカ?

 母さん第一主義の我が家で俺が逆らえるわけもなく、基本甘いものが苦手な父さんとはそういうのは食べられないからって、俺が付き合わされた。俺だって、どちらかというと塩辛い方が好きなのだよ、甘いもの食べられないわけじゃないけど、甘いものはおやつでしょ。ごはんはやっぱり定食が基本だよね?

 そして昼食後は一緒に恋愛ドラマを見る。しかもいつものアルファオメガもの、大体男同士の絡みの激しいやつだ。なにこれ、デジャブ。

『ママね、娘欲しかったのよ――、正樹がオメガになってくれて本当に嬉しいわ! こうやって一緒に恋愛ドラマ見るの、夢だったの』
『いや、いや、母さん、まず俺息子』
『あら、オメガなんて娘みたいなものよ』
『……』

 ああ今思い出しても体も心も辛かったぜ! 

 でも親を泣かせるような事件に遭遇したし、母親孝行のため俺は耐えきってみせた。最終日は父さんがねぎらいだっていって、焼き肉に連れてってくれた。こっそりママに付き合ってあげてありがとうってお小遣いまでもらったから、まぁいっか。

 真山正樹の胃腸は、一生分の親孝行いたしました!

 そして今、拷問のような一週間が開けて正直ほっとした。学校に来ている方が断然俺の腹にも優しい。

 さてさて、さ――て、今日のA定食は何だろう! テンション上がるぜ――。おっ、腹がなった。

「ハラ減った! 久々の学食テンション上がるわ」
「ほら、とりあえず、M&Mでも食っとけ」
「そうそうこの手につかないやつな、甘いもん食いたかったんだっ――て、ざけんな! 俺はチョコじゃねぇわ!」

 ご丁寧に、MMのパッケージに「まやままさき」ってひらがなで、真っ赤なマーカーで書かれている。こいつ馬鹿なのか? 馬鹿なのだろう。暇人か!? 食堂行く前になにかしていたと思ったら、こんなの仕込んでやがったのか!

 近藤は盛大に笑った。

「あぁ悪い、つい面白くって。腹減っていた時、閃いたんだよぉ! 俺センスいいわぁ。ぷぷっ、それにしてもお前相変わらずキレキレだ! あんなことがあったけど正樹が正樹のままで安心したわ。って律儀に食っているし!」
「俺は一週間甘いもの地獄にいたからな、これくらい朝飯前だ! ってか俺じゃなければ誰だってんだよ。ふざけてないで早く行くぞ、近藤! A定食が楽しみだったんだよ俺」

 こいつなりに、俺を笑かしてくれたんだな。櫻井と明と近藤と俺、四人で良くつるんでいたから、俺たちの事件を一番気にしているのはこいつらかもしれない。ちょっとありがたくって、貰ったチョコもほんのり苦く感じた。

 そこで、不意に司に呼び止められた。近藤がまさか知り合いじゃないよな? って顔で俺を見る。

「正樹、探したよ。悪いが正樹を借りても?」

 さわやかににっこりと、最近ご乱心されている、お殿様の登場だ。

 もう驚かねぇよ。なんとなく、また学校で絡まれる予感はしていたからな。最近の俺は冴えている、レーダービンビンだ。
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