運命を知っているオメガ

riiko

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本編

24、久々の登校

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 あの後は、司の家の車で自宅まで送ってもらって、母親には事前に学校側からも司の家からも連絡があったみたいで無断外泊にはなってなかったが、帰宅するなり母親に抱きつかれて泣かれた。

 司が丁寧に挨拶をして、医師の診察も終わっているという話と、心のケア含めて一週間の自宅待機を学校から言われたと伝えられた。

 櫻井は警察に引き渡されて、その後どうなったかは知らないが、退学。

 そして櫻井に協力して俺に発情促進剤を飲ませたクラスメイト四人も退学になった。ってか、あの冷たい炭酸にそんな薬を入れていたのかよ!? 驚きだ。

 タダほど怖いものはないって、母さん言っていたけど本当だった。今度から人から物をもらう時は注意しよう、うん。

 あいつら厳しい処分な気もしなくもないが、そんなやつらと同じ学校にいるのは、やはり怖いから少し安心した。

 校長は今回の件を大変重く捉えて、学校自体の立て直しとオメガへの対応を徹底させるとのこと、全校生徒にバース性の教育を追加で行うことを決めたと、翌日に家まで校長は頭を下げにきてくれた。学内での不祥事を俺と両親に詫びたのだった。

 オメガの俺としては、異例の対応をしてくれたのだというのはすぐに理解できた。きっと司がそういう風にしてくれたのだろう。

 そして療養という名の一週間の休みが開けて、久し振りに学校へ行くと事件のことは周知な筈なのに、なぜかクラスのみんなは普段通りだった。

 事件はマスコミでも取り上げられ、世間的にもオメガを守るという学校側の対応が評価された。

 むしろ校長は以前から、アルファに影で支配されているオメガのことを悩んでいたらしい。度々、自主退学していくオメガが一定数いたことから、校内でのオメガの扱いを心配していた。だが決定的証拠もあがらず泣き寝入りするオメガがほとんどだった。

 そんな中、俺のことが司を通して学校に知れ渡ったのでチャンスと思い、アルファをきちんと断罪したベータの校長。ということで高評価を得たのだった。

 そして全校集会で校長から説明もあり、学生はコトの重要性を理解した。学内では少しずつオメガに対する考えが変わったとも聞いた。

 オメガに好意的なアルファたちが率先して動き出したとか。数人のアルファがこの数日で自主退学したらしい、それはもともとオメガを不当に扱うと有名な奴らだった。そしてアルファによるアルファの断罪、それを率いたのが司だというから、周りは理解に苦しんだろう。

 うちのクラスもオメガでマドンナの沙也加ちゃんが、この事件に心を痛めて数日怖くて不登校になった。クラスメイトからも愛されていた彼女だからこそ、みんなは協力してオメガが安心できるクラス作りをすることにしたらしい。

 沙也加ちゃんが登校してきた時、俺への配慮やオメガについて再度きちんと話し合ったとのことだった。俺がきっかけだが、俺のことはおまけ程度に考えてくれたのは俺としては助かった。

 沙也加ちゃんという守るべき可愛いオメガがいてくれて良かった。

 休みの間も彼女からはひっきりなしに連絡が入り、すごく心配してくれて本当にいい子だった。

 そんな感じで、まぁみんな好意的だった。もとから俺に対しては、ベータ男みたいな接し方をしてくれていた人がほとんどだし、俺をオメガといじるようなのはあの櫻井信者の四人が目立った奴らだったから、あいつらが居なくなって居心地はいいから気にならなかった。

 登校再開の朝、司が我が家に迎えにきた。

 半ば連行されたような形で司の家の車に乗せられた。いきなりオメガ嫌いの司とオメガの俺が一緒に歩いていたら、周りからなんて言われるかわからないから、俺は目立ちたくないと、学校の前ではなく裏に車を止めてもらった。そしたら司の友人らしき人も、近くの車から降りてきて声をかけられた。

 アルファらしき男に一瞬ビビったけど、司がすぐに俺を後ろに隠して話していた。そしてそいつは俺に目を向けて自己紹介をする。

「おお! 噂の正樹君か! 俺、司の唯一の男、池谷光輝いけやこうき、コウって呼んでくれ!」
「あぁ…俺は正樹でいい、よろしく」

 司に紹介されたアルファ。

 唯一の男って何? 

 司は、俺のこと抱いたけど本気になるなよ的な牽制でこいつを紹介した? 俺と体の関係を持ったからって調子にのるな的な、ってか司はオメガじゃなければ男もいけたのか? 

「唯一の男ってなんだよ!? 気持ち悪いことを正樹に吹き込むな」

 司はコウにふざけやがってと言った、そうか、この男はただの友達で冗談言い合える仲ってこと。

「正樹はそこ華麗にスルーしていたぞ。それにアルファに物怖じしないとか、おもしれ! 司のお気に入りオメガ君なのに気にも止められてない、くくっ」
「別に、他人の恋愛事情に興味ないから」

 俺はムカつきながら、そう言った。
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