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本編
18、一夜明けて
しおりを挟む「真山君、具合はどうかな?」
「ん?」
誰だ? このおじさん……なんだか長い夢を見ていたような。
「病院……ですか?」
「ここは西条家の本宅、私はこの家の主治医だ。君は昨日、学校で友人に嵌められて発情促進剤を飲まされた。そしてヒートが起こったところを司さんに助けられこの家に運ばれた。薬物による発情だったから薬治療はできなかったので、昨日は司さんとヒートを過ごした。覚えているかな?」
あっ、覚えている。今、急に思い出した。
俺は西条に抱いてもらったんだ。うわっ! 俺は、俺はっ、何をやらかしたんだぁぁ! 真っ赤な顔で口をぱくぱくさせてしまった。すると医者は笑顔でとんでもないことを言う。
「ん、あぁ思い出した? そんなに恥ずかしがらなくてもいい、オメガなら必ず経験することだから、アルファとの性行為はヒート時の何よりの特効薬だし、もう辛くないね?」
俺の脈を測りながら、さらりと恥ずかしいことを言われた。
「は……い。俺、もう帰っていいですか?」
西条に会わずにここから去りたい。
「どうだろ? 君は友人だと思っていたアルファにレイプされるところだったんだ、オメガとしてとても辛い経験をしたんだよ、これからのことも司さんと話した方がいい」
「レイプ?」
なんだ? それは。俺だよ、俺みたいなベータ丸出しのオメガを襲う奴なんて友達にいたか?
「そこは覚えてない? たしか櫻井君といったかな、その彼はクラスメイトを通じて発情促進剤の入った飲み物を真山君に渡し、それを飲んだ君はヒートになった。司さんが助けにいかなければ、君は今頃そのアルファの番にされていたんだよ、番はオメガにとって一生ものの契約だ。助かって良かったね」
「櫻井が? まさか、そんなこと」
そういうことだったのか。
俺はてっきり西条が現れてヒートを起こしてしまったのだと思っていた。じゃあ、西条には俺のこと運命だってバレてない?
その時、ドアのノックする音がしたと思ったら西条が入ってきた。心の準備がまだなのにっ! 医者は西条に俺のことを簡単に話して出ていってしまった。
あれれ、これ、最近保健医の先生との流れも同じだったような。デジャブ感! 流れにまたハマっている気がする。
「どうした? そんな可愛い顔をして、まだ気分が優れないか?」
「えっ、いやっ、違うっ、」
か、かわいいっ!? お、俺のことデスカ? えっ、西条がベッドの端に座って、俺の髪をなでている。な、なんで!? どうした!?
「西条っ」
「司……そう言ってと言ったのは、覚えている?」
そんな話をしていたなぁ。抱かれた記憶はある。上手い具合に櫻井とのやり取りはすっかり頭から抜けているのに、西条との行為は覚えていますとも。
「あっ、でも、もう発情も収まったから」
「それ関係ある? 西条なんて他人行儀な呼び方はやめて欲しいな」
さらに戸惑った、なんで? 他人行儀じゃない方がおかしくない? 俺、発情した時なにかしでかした? なんで西条の雰囲気が柔らかいんだろう。
「ごめん、でも俺と西条は接点ないだろ? とにかく俺を助けてくれてありがとう、それと偶然居合わせたにしても、こんなことに付き合わせて本当にごめん、俺、学校辞めるから、目の前から消えるから、だから今回のこと、許さなくてもいい。無かったことにしてくれたら有難い」
西条は少しだけ、苦い顔をしている? えっとそれじゃだめなのか。やはり俺は警察に捕まる案件をしでかしたらしい、そりゃ偶然居合わせた、オメガ嫌いの西条と関係を持ってしまったのだから。
俺は今日犯罪者になってしまった。
父さん母さん怒涛の展開でついていけていませんが、俺はやらかしたみたいです。いえ、やらかしましたとも。
先立つ不孝を……(以下略)。
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