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本編
4、それでもくるオメガ
しおりを挟む俺は、告白してきた女をなんとか断った。そして翌日、向こうから仕掛けてきた。
最近じゃここまでする人間が居なかったから、少し油断をしていたみたいだ。光輝を生徒会室で待っていると、昨日の二年のオメガ女が臭いフェロモンを撒き散らして入ってきた。
「西条君、私、西条君と会ってヒートがきちゃった。多分私たち運命だと思う」
はぁはぁと息を荒げながら、俺にまたがってくる女には吐き気しかしなかった。
強い抑制剤を飲んでいても、流石にヒートの匂いは多少だが感じる。そして、大抵感じる香りは……臭い。甘ったるい匂いに、なぜ世の中のアルファがラットを起こすのか不思議で仕方ない。俺はアルファとしては欠陥品なのかもしれない。
一体どういう根回しをしたら、生徒会室で二人きりになる状況になったのだろう。後で調査をするとしよう。
「あんた、終わったな」
「えっ、なにっ、あぁもうダメ、あそこがグジュグジュしているのぉ。はやくっ、抱いて。番になろ」
もう聞く耳もないらしい、気持ち悪い体液が俺のズボンに染みつく。俺は片手でスマホを操作した、するとすぐに警備員が押し入ってきた。
「あぁ! 西条くぅん!! って、ええ!? なに! やだって、離して!!」
「フェロモンレイプにより、あなたを確保します」
「やだ!! レイプじゃなくて、私たちは運命の番なのぉ! 早く西条君っ」
「俺に触るな、穢らわしい」
俺専属の警備を学校に配置していた。いつなん時オメガに仕掛けられるかわからなかったから、一応保険として中学の時同様に雇っていた。ひとりで立証など難しいので第三者が確保することにより、犯罪は成立する。
その後その女は退学どころか、悪質なドラッグを使用したと判明し、犯罪者として少年院に入った。そしてその親は会社を経営していたが、軽く潰した。「娘は淫乱」というネットニュースが出たせいなので、俺が直接潰したわけではないが、俺の家が許さなかったことに対して周りが勝手に動き破滅に追いやられた。
俺に手を出したら、徹底的に社会的制裁される。
それが高校でも、俺の代名詞になった。
「いやぁ! びっくりしたよ。司無事で良かった!」
「無事で良かったじゃない! お前は俺と約束していながら、なにオメガのハニートラップにあっているんだよ」
「だって、年上色気ムンムンオメガちゃんにこれからしようって言われたら、しちゃうだろ。俺多感なお年頃だし」
あの日、光輝と約束していたのをオメガの女は聞き耳を立てていて知っていたらしい。そして自分の従えているオメガ男に光輝を誘い出せと命令し、光輝はまんまとそのオメガの毒蛾にはまった……というか自らノリノリだった。
ご丁寧に生徒会室の前は、その女の従えている人間で固め、役員が入れないようにしていたらしい。
そいつらはその女に脅されていたことがわかり、数日の自宅謹慎とカウンセラーがつくことで収束した。
やばい犯罪者がいたな。
「でも司ならどんな状況でもオメガにひっかからないだろうし、心配はしてなかったよ! 俺も可愛い年上オメガちゃん抱けたしね。司は面倒なオメガ葬れて、ウィンウィンじゃん!」
「お前はいつだって軽いな」
入学して早々、俺を取り巻く状況は落ち着いた。早めにこういうことを起こしてもらって良かったかもしれない。それ以来、俺を盗み見するオメガはいても、俺を誘うオメガはいなくなったから。
高校生活は思いのほか、平和だった。
あの「運命の日」までは。
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