桜の樹

Estrella

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痛みと悲しみ

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守り神とは。
時々分からなくなるほど自分以外の力を感じる。
誰かそばにいるような…不思議な感覚。

「いたっ…」

桜は1人項を抑えて痛みに耐えていた。

「これ本当になんなの…なんでこんなに痛いのよ。」

いつものように1日を終えた桜は自分の部屋で日記をつけていた。

「イル…私は間違ってるのでしょうか…」

(桜…?)

「時々、おかしなくらい他の人のことを考えてしまうんです…」

(他のこと?)

「私は何をしているのかと…本当にここにいていいのか…不安になって、遠くに行きたくなるんです。」

(遠くに…それは別の人のところに駆け落ちとか?)

「駆け落ちって…違います。」

(じゃあ力が不安とかそういうこと?)

「うーん。私はそうですね…自分の中に穴があるんです。」

(穴?)

「自分でも何かわからない穴。黒くてムズムズするんですよ。」

(陛下に慰めてもらえば?)

「クスクス笑いながら変なこと言わないでください。」

(陛下は桜を求めてるんじゃないの?)

「はい!?」

突然ペンを投げる桜の顔は…

(真っ赤…)

「はっ!いや、これはべつに…違います。」

(えっなにが?)

「いや何も知らないとかじゃないですよ!?知ってはいるけど今まで1人だったし!はい!」

(…まだ何も言ってないけどね…)

「……あ。」

(……あーあ。)

「くっ。」

(そんなこの世の終わりみたいに…でも…ねー。知らないんだね。ふふ。なんか面白くなりそう。)

「男の貴方にこんなこと言うなんて!あー!」

(私のことは桜にしか見えてないけどね。)

「笑いこらえながら言わないでください!」

(ふふふ。)

「もう…絶対知られたくない…」

(じゃあ紙に書いて陛下に渡そうかな…)

「なぜ!?」

(え?考えてみればさ、陛下って夜這いに来れるよね!)

「いい顔して馬鹿なこと言わないでください!」

(あははは!)

「もう。大体陛下は今それどころじゃないじゃないですか!アルゼンのこともありますし。まず私は…」

(…?)

「私は…」

(どうかした?)

「私は…誰と一緒にいたんだっけ…」

(!!!)

「あれ。。あの町はどこだっけ…」

(桜…疲れているなら寝たら?)

「え?」

(考えがまとまらないのは疲れが出てるからだよ。そういう時は休まないとね。)

「うん…そうね。」

そう言って桜は布団に横になった。

桜夜と名乗る男は外に出て夜空を見上げた。

(記憶があるのかと思った。)

(まだ…思い出さなくてもいいよ桜。私はまだ他のシナリオも見たいからね。)

光り輝く満月の下で桜夜の長く美しい黒髪が映える。

(今世はどうなるかな。楽しみだよ。守り神は気づくかな?王も何かしらいつもと違ったなぁ。魔王は今世で決着をつけるつもりらしいけど…果たして彼の力が通じるかな。ふふふ。)



桜夜の後ろの窓辺で人影が動いた。









次の日。

桜はいつものように神獣達と話していた。

何気ない日常と変わらず、神獣達も桜に無理させぬようにと共に寝たり食べたりとのんびり過ごしていた。

桜「今日は天気があまり良くないですね…」

青『昨日は満月だったのにねぇ。』

玄『天気予報はハズレか?』

青『どこでそんなの聞くのよ!』

桜「まぁまぁ。」

朱『すぐ喧嘩をするな。飽きないのか?』

玄『飽きるとかじゃないさ!面白いだけだから!』

白『子どもなのか…?玄凰は…』

青『そうよ。1番若い幼体じゃないの?』

朱 白『『違いない。』』

玄『おい!この麒麟夫婦は黙ってろ!』

朱『いつ夫婦になったのだ…』桜「夫婦なの!?」

白『……そこは冗談で流すところでは…』

桜「はっ!そうだった…」

青『…ねぇ。何かあった?』

朱『いつもと違うな…』

桜「え?あはは。いやここだと恋愛ごとがないから新鮮で…」

白『…まぁ、人は守り神だけだからなぁ。』

玄『なんだ。寂しいのか?』

青『それならそうと私がくっついてあげるわよ?』

玄『そしたら潰れるだろ。』

朱 白『『違いない。』』

青『もう!失礼ね!』

桜「あはは。お気持ちだけで。」

青『桜まで!?』

玄『ん?ってかよ。陛下入れるんだし、イチャイチャすれば?』

桜「!?イチャイチャ!?」

青『ちょっと!なにはやしてんのよ!』

朱『そんなことしても我々に筒抜けだろう。』

白『今そういう話だった?』

桜「はわわ。イチャイチャ…」

玄『おい…赤くなりすぎだろ。』

青『しょうがないわよ。今までそんな人いないんだから。』

朱『あー。』

桜「朱凰様…なんか飽きてませんか…」

朱『気のせいだ。』

白『疎いのは朱凰も同じですからね…』

青『あー。そうね。』

玄『それは否定できないな。』

桜「そうなんだ。。」



なんてことの無い日常。
人と神獣なのに話してることは人の友達と何ら変わらない。
ここが好きだし。楽しい。


桜「でも…私はほかの町の記憶を見た…」

あれはどこだろう。
なぜあんな光景が急に出てきたのだろう。


その日の夜、桜は考えていた。
自分は誰なのか…力を持ちすぎてるあまり何か世界に良くないことが起こるのではないかと。

朝日が昇るまで考えていた。


「私は本当にあなたの事を好きなんですよね…イル…」


本当の愛とはなんだ。
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