桜の樹

Estrella

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陛下の決意

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国王陛下が、朱凰様の住処へ行って2時間。

桜「そろそろ、他の御二方の所へ行く頃でしょうか。」

太子「陛下は、何故あそこまで神獣様の許しの印が欲しいのでしょうか?」

桜「……。殿下はなぜだと思いますか?」

太子「え…それは…私にはまだ分からなくて…」

桜「国王陛下は、神獣様から許しの印を貰い国を安定させたいのだと思いますよ。もちろん、私達がどうこうする訳でもないのですが、この国で神獣様の力というのは、誰もが欲しいと願うほど必要な力なんです。」

太子「必要な力…ですか?」

桜「簡単に言えば、この国の水や大地木々の恵み自然の力の需要と供給ですかね。」

太子「??」

桜「うーん…この国では、自然と神獣様がいないと国が保てないと言うべきでしょうか。」

太子「!?国が?」

桜「詳しくは言えませんが…」

太子「いえいえそれだけでも、というかその一言で十分分かります!」

桜「そうですか?なら良かったです。」

(しかし、陛下遅いですね~)

太子「では、陛下はその印を得て皆にお披露目したいと?」

桜「まぁ国の象徴の中の象徴になりたいんでしょう。そんな事しなくても十分人気ですけれど。」

太子「人気だなんて…守り神様や神獣様に比べたら、それほどでもないでしょう?」

桜「いえ。私たちは人前には出ませんから、人気はあまりありませんよ?国は平穏ですが姿を見せない者にどうこう言えませんからね。」

太子「…守り神様は悲しくないのですか?」

桜「…悲しい、ですか?」

太子「いえ、すみません。こんなこと聞いて…」

桜「ふむ。まぁ考えたことは無いので、わからないですが…」

太子「すみません。忘れてください!」

桜「気にしてませんよ。」


2人が団欒している中、突如眩い光が射した。


桜「これは!」

太子「眩しい!何も見えない!」

桜「殿下はここにいてください!少し出ていきます!」

太子「え!?」


桜は、すぐさま光の方へ走り出した。

(許したのですか…朱凰様。)

桜は走るなり、光の根源へとすぐたどり着きその場所には陛下と神獣様御三方がいた。

桜「青凰様に玄凰様までいたのですか?」

王「守り神殿!この通り印を貰えたよ。ありがとう。君のおかげだ。」

桜「いえ、私は何も…じゃなくて、話が見えてきませんが!どういう経緯でそうなったのですか?」

王「ふむ。まぁ、簡単に言うとだな…」

朱『利害の一致…いや、守りたいものが同じと言うべきか。』

玄『まぁ今回話さないと分からなかったことだけどな。』

青『そうねぇ。まさかの国の王があんなことをねぇ…。』

桜「????」

王「まぁ、守り神殿には、私から言うことでもないかな?」

桜「それは…つまり?」

朱玄青『秘密だな。』

王「そうだな。」

桜「なんでですか!なんでそうなるんですか!」

玄『おっ。珍しく声を荒らげたぞ。』

桜「秘密ってなんですか!ずっと心配してたんですよ!それなのに、教えてくれないんですか!?」

青『しょうがないのよ。こればっかりは恥ずかしくてね~』

桜「恥ずかしい!?」

玄『そうそう。恥ずかしすぎて、眠れなくなるかもな。』

桜「眠れなくなるほど!?」

朱『うっかり空を飛び回ったりするかもな。』

桜「国民を動揺させるほどの事件!?」

王「あとは、王太子も混ざるかもな。」

桜「お遊戯じゃありませんよ!?」

一人一人?に突っ込む桜。

朱『まぁ。王の額の印は消えぬ事だし、王太子のことは後回しで、お披露目でもしたらいいんじゃないか?』

許しの印のお披露目会なら、およそひと月宴会コースだ。

桜「じゃなくて!何があったか教えてくださいよ!ずるいです!私には秘密ってなんでですか!」

皆『……。』

(これ、どうしよう。)


=国王陛下と神獣様=


朱『我々の力を借りたいと。そう申すか。』

王「ああ。どうしても、これからの未来にはその力を借りたい。」

国王陛下の周りには、神獣様御三方が並んでいた。
話は手っ取り早い方がいいと、神獣様自ら国王陛下を待っていた。

玄『単刀直入に聞こう。何が目的だ?』

王「目的?」

青『誤魔化すのはなしよ。何年も前から神獣の力を利用して、国の独裁者になったり、私達に刃向かうもの達もいたわ。』

朱『極めつけは、守り神である我らの力を受け継ぐものを殺したりもした。無理やり婚姻関係を築いたりな。』

優しい言い方をしているが、実際はかなり陰湿で卑怯で、国が滅びる寸前の出来事ばかりだ。

王「ちょっと待ってくれ!私はそんなことは望んでいない!婚姻のことも王太子が好きかどうかも聞いてはいないことだ!」

朱玄青『………。では、何を望む?』

王「神獣様なら知っているはずだ。本当の守り神様の末路を……」

朱玄青『………。』

王「我ら王族…いや王になりし者だけが、伝わる守り神様の末路の話が本当なら、私は彼女を助けたい。あの、不幸を繰り返したくない。」

朱『…王にも伝わるのか、あれは…』

玄『おい。まさか信じるのか?』

青『信じるものじゃないわ。それを知っていて、今まであんなことをしていたと言っているのと同じよ!』

王「それは歴代の王の愚行であって、私は決してそんなことは望んでなどいない!」

朱『……。』

(守り神の末路を知っているんだね。王は今までの王とは違うのかもしれない。)

玄『その証拠がどこにある?守り神を陥れない証拠が、どこにある?』

青『そうよ!私たちは、今度こそ守り通すのよ!』

朱『我らの道を邪魔はさせない。だが、今世の王よ。どうやって守り神を守ると証明する?』

王「…この国は、今のままでちょうどいいと思うからだ。」

(!?)

朱『ちょうどいい?』

王「この国は、今の平和がいいと思う。これ以上を望むから、あんな悲劇を生む。それなら、このまま平穏にこの国を支えて行ければいい。」

玄『これ以上を望むから…ね。』

王「彼女を守りたい。私はそれだけを望む。」

青『自分の息子よりも?』

王「…そうだ。」

(王は若い。何故こんなにも彼女を…)

朱『誓いの印はあるか?』

玄『おい!朱凰!』

青『まさか!許すつもり?』

朱『時は短いものだ。なら、出来うることを少しの可能性も込めてやらねばいけない。それに、自分の子より守り神を守るという言葉は、今まで誰も口にはしたこと無かったはずだ。』

(それほど姿を見せない守り神は守られなかった。)

王「必要なら、王の力の象徴を守り神様である桜殿に捧げる。」

朱玄青『!?』

玄『おい。それってまさか…』

王「そうだ。王が王とされる理由そのもの。その力は目に見えずとも、力を封じているペンダントがここにある。」

王はそう言うなり、自身が首から下げている翡翠色のペンダントを差し出した。

(藤をあしらったペンダント…)

朱『それは…』

(懐かしい…)

朱『懐かしいものを見たな。』

玄『本当に許すのか?』

青『そもそも本当に許しの意味がわかっているの?この王様!』

王「…今までの守り神様への愚行を許してもらい、この国の王を名乗ることを許してもらうこと。」

朱玄青『!?』

朱『知っていたのか。』

(今までの王は知らなかったのに…)

王「頼む。この通りだ。彼女を助けたい。例え、この気持ちを伝えられなくても!彼女を助けられるなら!」

朱『…!そなた…まさか。。』

王は膝を着いたまま、起き上がらず顔から読めないが…

青玄『……朱凰。許そう。』

朱『!どうした?急に許すとは。』

青『嘘はついてないから。』

玄『そのペンダントの力も本物だしな。』

朱『能力か…』

(許すか…許さないか…決めるのは朱凰…)

朱『………許そう。その力と気持ちに免じて。』

王「!本当か!?」

朱『共に…この国の守り神を守れるか?』

王「私の命に変えても、守ってみせる。それが私の王としても男としても最後の仕事なるだろう。」


神獣様御三方は顔を見合せ、頷き唱えた。

『未来なきものに未来あるものが与え そのものを守りし神獣の力を授けよう 決して違えるな 汝 王であり 守り神を守り給え 』

(王よ  示せ)

王の額には眩い光の中、許しの印が与えられた。






桜がこの話を知るのは、まだ先の事。
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