本当に愛する時

Estrella

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ユリウス・トゥル・クロノス

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ユリウス・トゥル・クロノス現皇帝。
オルレア帝国の若き皇帝で冷酷な強者。
知識も剣術も魔法も全てに秀でているが、性格悪い。
しかし国は栄え文句のつけようがない。

そんな彼はある問題を抱えている。
臣下達による婚約者枠争奪戦である。
皇帝にはいくら若くても跡継ぎが必要であり、それは伯爵家以上であれば誰でも夢見ること。
三大公爵家にも、娘はいるが力の均衡のためあまり率先して動かないのをいいことに、ほかの貴族はこぞって我が家の娘を!と連日皇城への列が増している。
(三大公爵家は前に出ずとも力があるから気にしないだけである)

そんな中皇帝は反対こそしないが無関心を決め込んでいる。

「陛下は冷たくても綺麗な面立ちで見てるだけで幸せになれますわ。」

と言う令嬢や……

「跡継ぎの問題は陛下も重々承知のはず時が来れば私に夢中になれますわ。」

と言う令嬢まで様々ではあるが、とにかく自分本意である。



かく言う皇帝は……

「本当にくだらん馬鹿どもばかりだな。」

これ一択である。

平行線を行くこの問題は一向に解決には至らないと側近は一人頷いていた。


婚約者の地位などいらないサラシアは日々カスティアン邸で過ごし、社交界に出ないことからその名を気にする者はいなくなった。

側「陛下、そろそろ婚約者一人か候補何人かに絞ったらどうです?毎日あれを聞くつもりですか?」

ユ「ふん、なぜ俺があんな綺麗でもない者たちから選ばねばならん。」

側「そうは言っても、陛下ほど顔が整ってる方も早々いませんよ。」

ユ「俺ほどねぇ…」

側「大体、三大公爵家の娘たちの方が綺麗どころでしょうが、あの方達は、まずこんな風に詰め寄ったりしないでしょうねぇ。」

ユ「奴らがこんな醜い真似するわけないだろ。プライド高いからな。」

側「どの口が言うんですか。それ。」

ユ「磔にされたいのか?」

側「口が滑りました。」

ユ「それは謝ってないだろ。」

側「さすがです。陛下。」

ユ「おい。」

側「しかし、冗談は程々にそろそろ婚約者の一人くらいパッと決めたらどうです?王妃教育もあることですし。普通は小さい時からいるものですよ。」

ユ「冗談のつもりはなかったが?そもそもあんなに詰め寄ってくる礼儀知らずが教育しても変わらんだろう。」

側「それもそうかもしれませんが、決めないことにはあれもなくなりません。」

ユ「雑務の傍らあの中から使えそうな家のやつをお前が選べばいいだろ?」

側「そんな雑務押し付けないでください。私が睨まれるじゃありませんか。」

ユ「お前の腹黒さに勝てるやつはいないだろ。」

側「嫌だなぁ。陛下の方が上ですよ。」

ユ「知識のフェンティアが何を言う。」

クックックっと皇帝は笑う。

側「うわぁ。家の通し名ここで使います?」

ユ「お前、幼なじみだからって口軽すぎないか?」

側「気のせいですよ。陛下!」

ユ「……」

側「ま、というわけで」

ユ「どういうわけだ。」

側「来週の皇城舞踏会までに決めて舞踏会で婚約者発表してくださいね♡」

ユ「は?」

側「ってさっき御触れ出しておきましたから、あの無意味な列は去りましたよ。」

ユ「いつの間にお前は……勝手なことを。」

側「ゴリ押ししないと決まらないでしょう。子どもは早い方がいいですよ!」

ユ「ちっ!」

側「うわぁ。ほんと性格悪い。」

ユ「お前の家にお前にピッタリの女でも送り付けてやる。」

側「なんていらないお礼!」

ユ「お礼じゃねぇよ!」

側「わ~こわーい!逃げよー!」

側近はすぐさま執務室を後にした。

後日本当に見知らぬ令嬢がフェンティア邸に来るとも知らずに……
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