7 / 11
7※スヴェン視点
しおりを挟む
「自分ばっかり気持ち良くなってんじゃねーよ。もっと腰を動かせや」
パチン、と強く尻を叩かれ、女は艶かしい嬌声を上げた。
「あ? 尻叩かれて、いったのか? とんでもない痴女だな……!」
男は女が見せた痴態に、笑い声を漏らした。安い宿だ。壁はないに等しく、部屋で行われている性交の声も筒抜けだった。
(やっと見つけた……!)
その女の声を忘れるわけがなかった。それはスヴェンの恋人だった女の声だった。
届いた手紙を見て、必死で探し回ったが、町にミレイアの姿は既になかった。スヴェンはミレイアの手紙を握り潰した。
「……こんな紙切れ1枚で分かれるなんて、俺は認めないからな……!」
工房を閉め、ミレイアの足取りを辿って追いかけたが、かつて愛した女には悪い噂が流れていた。その噂が真実であることを、スヴェンは実際にその耳で確認した。
愛していた女は、ミレイアは、まるで娼婦のように男に抱かれていた。
「ミレイアに触れていいのは俺だけだ! ……俺以外の男は食ってやる……!」
スヴェンは、ミレイアが男に抱かれている部屋の扉に体当たりをして中に侵入した。部屋の中では突然の侵入者に、裸の男女が驚いた顔でスヴェンを――低い唸り声を出す魔狼を見た。
「魔狼……!? なぜ、こんなところに……!!」
魔狼はミレイアを置いて、我先に逃げようとする男を噛み殺し、怯えて震えるミレイアを咥えて、宿を後にした。
ミレイアからは様々な男の匂いがした。その体を貪る男は1人だけではなく複数いるのだろう。
(人間になると嗅覚が鈍くなる。そんなにミレイアが男好きだとは知らなかった……! 人間の性欲は個人差が大きいと、母上も言っていた。きっと俺がすぐに抱かなかったから、逃げられたんだ……!! こんなことなら、我慢するんじゃなかった!!)
男は人間ではなかった。
魔女が母親で、父親は魔狼だった。スヴェンという名前は母親が付けた名前だ。父親の遺伝のほうが色濃く出たため、母親に頼まないと人間になることは出来ない。
スヴェンの体躯は、兄弟の中で最も優れていた。魔狼は群れを形成するが、成獣になると、群れから出て独り立ちをするか、そのボスである父親を倒し、新たなボスになるしかなかった。
だからスヴェンは群れから出て独り立ちすることを選んだ。最も愛情を注いで育てた子であったためか、母親である魔女は寂しがっていたが、スヴェンは父親と母親のような関係に憧れていた。
スヴェンは誰かを懸想することもなく、初恋もまだだった。
群れの中に仲の良い姉妹は居たが、恋愛感情を抱くことはなかった。だから、群れから離れ、探すつもりだった。
パチン、と強く尻を叩かれ、女は艶かしい嬌声を上げた。
「あ? 尻叩かれて、いったのか? とんでもない痴女だな……!」
男は女が見せた痴態に、笑い声を漏らした。安い宿だ。壁はないに等しく、部屋で行われている性交の声も筒抜けだった。
(やっと見つけた……!)
その女の声を忘れるわけがなかった。それはスヴェンの恋人だった女の声だった。
届いた手紙を見て、必死で探し回ったが、町にミレイアの姿は既になかった。スヴェンはミレイアの手紙を握り潰した。
「……こんな紙切れ1枚で分かれるなんて、俺は認めないからな……!」
工房を閉め、ミレイアの足取りを辿って追いかけたが、かつて愛した女には悪い噂が流れていた。その噂が真実であることを、スヴェンは実際にその耳で確認した。
愛していた女は、ミレイアは、まるで娼婦のように男に抱かれていた。
「ミレイアに触れていいのは俺だけだ! ……俺以外の男は食ってやる……!」
スヴェンは、ミレイアが男に抱かれている部屋の扉に体当たりをして中に侵入した。部屋の中では突然の侵入者に、裸の男女が驚いた顔でスヴェンを――低い唸り声を出す魔狼を見た。
「魔狼……!? なぜ、こんなところに……!!」
魔狼はミレイアを置いて、我先に逃げようとする男を噛み殺し、怯えて震えるミレイアを咥えて、宿を後にした。
ミレイアからは様々な男の匂いがした。その体を貪る男は1人だけではなく複数いるのだろう。
(人間になると嗅覚が鈍くなる。そんなにミレイアが男好きだとは知らなかった……! 人間の性欲は個人差が大きいと、母上も言っていた。きっと俺がすぐに抱かなかったから、逃げられたんだ……!! こんなことなら、我慢するんじゃなかった!!)
男は人間ではなかった。
魔女が母親で、父親は魔狼だった。スヴェンという名前は母親が付けた名前だ。父親の遺伝のほうが色濃く出たため、母親に頼まないと人間になることは出来ない。
スヴェンの体躯は、兄弟の中で最も優れていた。魔狼は群れを形成するが、成獣になると、群れから出て独り立ちをするか、そのボスである父親を倒し、新たなボスになるしかなかった。
だからスヴェンは群れから出て独り立ちすることを選んだ。最も愛情を注いで育てた子であったためか、母親である魔女は寂しがっていたが、スヴェンは父親と母親のような関係に憧れていた。
スヴェンは誰かを懸想することもなく、初恋もまだだった。
群れの中に仲の良い姉妹は居たが、恋愛感情を抱くことはなかった。だから、群れから離れ、探すつもりだった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】私は婚約者のことが大嫌い
みっきー・るー
恋愛
侯爵令嬢エティカ=ロクスは、王太子オブリヴィオ=ハイデの婚約者である。
彼には意中の相手が別にいて、不貞を続ける傍ら、性欲を晴らすために婚約者であるエティカを抱き続ける。
次第に心が悲鳴を上げはじめ、エティカは執事アネシス=ベルに、私の汚れた身体を、手と口を使い清めてくれるよう頼む。
そんな日々を続けていたある日、オブリヴィオの不貞を目の当たりにしたエティカだったが、その後も彼はエティカを変わらず抱いた。
※R18回は※マーク付けます。
※二人の男と致している描写があります。
※ほんのり血の描写があります。
※思い付きで書いたので、設定がゆるいです。
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる