ゴブリン転生【完結】

ちゃむにい

文字の大きさ
上 下
51 / 52

僥倖 ※アイリス視点

しおりを挟む

女としてではなく、賢者としての私に、頼まれる仕事もある。ゴブリンの子を産む女は、人間が多く、妊娠も出産も命賭けだ。
ゴブリンの子は人間の子より小さく生まれるから、人間の子を産むよりは安産であることが多いが、運が悪ければ命を落とす事がある。ミゲルのハーレムの女も例外ではない。腹の中のゴブリンが通常よりも大きく、また逆子であったために難産となっていた女が産後まもなく死んだ。寝ているところを起こされて、至急死者蘇生をしたけれども、間に合わなかった。

「アイリス、何を辛気臭い顔をしているんだ?」
「……あの状態であれば、蘇生出来る確率は高かった。それなのに失敗しました。ヴィオラが死んだのは、私の責任です」
「お前は一生懸命に治療しただろう。ヴィオラだって、感謝こそするだろうが、恨むことはないはずだぞ」
「ヴィオラは優しい人だったから、そうかもしれない。でも……」
「俺も息子たちも死者蘇生は使えない。今まで何人、俺の女を助けてくれたか、数えたことはあるか? 俺はアイリスが居てくれて、助かっている。それでは不十分か?」
「そうね……。ありがとう、ミゲル」

ミゲルは、さりげなく私の体を引き寄せて、抱きしめてくれた。
ああ、好きだ。こうゆうゴブリンらしくないところが好きだ。ゴブリンなのに、何でこんな気遣いが出来るのだろう。
自分でも意地っ張りだと思うけれど、なぜか彼の前だけでは素直になれる。

私は箱入り娘だった。婚約者に追いかけられるようになってからは、むしろ男には嫌悪感すら覚えていた。ミゲルとするまでは男性経験もなく、過ごしてきた。

人は変わるものだ。この私が、ゴブリンの肌に触れて、心地良いと思う日が来るだなんて、誰が思っただろうか。私を包み込むような、温もりに涙が出る。

ミゲルも罪な男だ。彼に過去何があったかは知らないが、寄せられている好意を過小評価している気がする。悪く言えば鈍感である。
じれったい気もするけど、そこも彼の良いところなんだよなあと、誰かに惚気たい気分だ。

ふと彼を見ると、右手に何か小さい箱みたいなものを持っていた。

「ミゲル、何を持っているの?」
「……アイリス。お前に似合うかと思って」とミゲルに手渡された指輪に驚愕する。こんな贈り物をしてくるだなんて、初めてじゃないだろうか。
薬指につけて鏡を見るたが、そこには変な表情をした自分が映っていた。
きっと、嬉しすぎて、にやけているのだろう。

自分にこんな表情があるなんて知らなかった。こんな私を発見することが出来たのは、ミゲル、彼のおかげだ。

「いいの? こんな大粒のルビーが埋まった指輪……。宝石の部分に魔法付与もされているから、ミゲルのほうが使えるかもしれない」
「宝物庫で、ただ眠っているだけより、使ったほうが、その指輪も嬉しいだろ。それにそれは俺の指じゃ入らん。指が太いからな」
「入るように調整できるよ? しようか?」
「いや、それはお前のものだから」

優しい口づけを受けて、幸福感に酔いしれるが、ミゲルのあそこが臨戦態勢になっている事に気が付く。今すぐにベットに向かい、ご奉仕したいところだけれど、ミゲルはラストヘルムの王だから、この後、しばらく抜けられない仕事があることを、私は知っていた。

「ねぇミゲル……。待ってるから、はやく来てね?」
「すぐに終わらせるから、待ってろ」

賢者様と人間に崇められた私は、もういない。

私は今、あのクリスタルで見た女のように、とても、とても幸せだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

処理中です...