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憧憬
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俺はAとCを見て言った。
「兄弟……は無理だな、顔が全然似てない。何かあったら恋人同士ってことにしとけ」
「うーん、恋人同士に見えるかな……」
「喧嘩中とでも言っておけ……」
Aとの会話が終わるのを見計らったかのように、Cが近寄って聞いてきた。
「父上、ちょっといいですか? このドレスと帽子、こちらだと人目を惹いてしまいますか?」
「……そのドレスは普段着か?」
「そうです。私の記憶にある中で、最も質素なものです」
村娘、という出で立ちでもない。あまり聞いたことはないが、もしかしてCは裕福な貴族の出だったりするのだろうか?
帽子はつばが広く、孔雀の羽根が付いた華やかなもので、ドレスもレースがふんだんに使われている。ラストヘルムの王が残した衣装部屋にあったドレスと同じぐらいに贅を尽くしているように見えた。
Cの場合は、銀髪でオッドアイだから、まるで人形のようだ。
「似合っているが、ここは都会ではないから、場違いになるだろうな……」
「魔王に無理やり着せられた……屈辱的な服なら変化出来たんですけど、裸同然なので流石にあれは……」
「そこまで無理して着るものじゃないだろ!?」
あの魔王の服は、確かにかなり露出高めだった。服というよりは下着かもしれない。今のCの姿なら、ちょっと見てみたい気もするが、そんな姿で外に出すことは出来ない。
「それでは、ちょっと地味ですが、この女の服を借りましょうかねえ……」
「えッ……!? は、はい、こんな服で宜しければ……!」
特に何も命令していないのに、事務員の女は進んで服を脱ぎ、Cに手渡した。
「ありがとうございます」
「いえ!! 私の服がお役に立てるのであれば……!!」
「……ん~……、なんか、ちょっと服がきついですね……、動きにくいです……。魔力が勿体ないですが、もう1回変化しようかな……」
「この学校の近くに服屋があります!! ぜひ!! ぜひ私にお伴させてください!!!」
前のめりになって、Cの手を握る事務員の女。
さすがのCも笑顔が引き攣っている。
「あの…… 貴方は先ほど父上に抱かれたはずですが、あまり動じている様子がありませんね……。妊娠とか気にしないのですか?」
「ピル飲んでますから、私は妊娠しません」
「ピル……?」
「そうゆう薬があるんです! それよりも! C様でしたっけ? 私の理想そのものです!!」
女のスマホを再度見る。ジャラジャラとアイドルのストラップが複数かかっていた。
職場にこんなものを持ち込むとは……。
うん、これはオタクだな……。
さっきから、泣き喚くわけでもなく、ぼーっとCを見ているから、肝が据わっているのか、頭がおかしくなったのかと思っていたが、恐怖よりも、Cの人間姿への興味のほうが勝ったのか。
女は鼻息荒く、俺の持っていたスマホを奪い取ると、ひょいひょいと器用に操作し「今ならこれがオススメです! 今すぐ買いに行きましょう! 割引券もありますよ!!」とバックを持って服を着直すと、Cを引きずるようにして職員室を出ていった。
「親父殿。俺も行ったほうがいいか……? ついでに俺の着替えも買ったほうがいいんじゃね?」
「今日はやめとけ。女の買い物は長いぞ。服なんてスキルで洗って乾かせば何度も使えるだろ。それよりAは、スマホの操作を覚えておけ」
「スマホって、あの女が持って行ったやつか?」
「そうだったな……。今人間に別のスマホを用意させる」
心配そうにCが出て行った扉を見ているAを見て、兄弟愛かなと、ほっこりするのだった。
「兄弟……は無理だな、顔が全然似てない。何かあったら恋人同士ってことにしとけ」
「うーん、恋人同士に見えるかな……」
「喧嘩中とでも言っておけ……」
Aとの会話が終わるのを見計らったかのように、Cが近寄って聞いてきた。
「父上、ちょっといいですか? このドレスと帽子、こちらだと人目を惹いてしまいますか?」
「……そのドレスは普段着か?」
「そうです。私の記憶にある中で、最も質素なものです」
村娘、という出で立ちでもない。あまり聞いたことはないが、もしかしてCは裕福な貴族の出だったりするのだろうか?
帽子はつばが広く、孔雀の羽根が付いた華やかなもので、ドレスもレースがふんだんに使われている。ラストヘルムの王が残した衣装部屋にあったドレスと同じぐらいに贅を尽くしているように見えた。
Cの場合は、銀髪でオッドアイだから、まるで人形のようだ。
「似合っているが、ここは都会ではないから、場違いになるだろうな……」
「魔王に無理やり着せられた……屈辱的な服なら変化出来たんですけど、裸同然なので流石にあれは……」
「そこまで無理して着るものじゃないだろ!?」
あの魔王の服は、確かにかなり露出高めだった。服というよりは下着かもしれない。今のCの姿なら、ちょっと見てみたい気もするが、そんな姿で外に出すことは出来ない。
「それでは、ちょっと地味ですが、この女の服を借りましょうかねえ……」
「えッ……!? は、はい、こんな服で宜しければ……!」
特に何も命令していないのに、事務員の女は進んで服を脱ぎ、Cに手渡した。
「ありがとうございます」
「いえ!! 私の服がお役に立てるのであれば……!!」
「……ん~……、なんか、ちょっと服がきついですね……、動きにくいです……。魔力が勿体ないですが、もう1回変化しようかな……」
「この学校の近くに服屋があります!! ぜひ!! ぜひ私にお伴させてください!!!」
前のめりになって、Cの手を握る事務員の女。
さすがのCも笑顔が引き攣っている。
「あの…… 貴方は先ほど父上に抱かれたはずですが、あまり動じている様子がありませんね……。妊娠とか気にしないのですか?」
「ピル飲んでますから、私は妊娠しません」
「ピル……?」
「そうゆう薬があるんです! それよりも! C様でしたっけ? 私の理想そのものです!!」
女のスマホを再度見る。ジャラジャラとアイドルのストラップが複数かかっていた。
職場にこんなものを持ち込むとは……。
うん、これはオタクだな……。
さっきから、泣き喚くわけでもなく、ぼーっとCを見ているから、肝が据わっているのか、頭がおかしくなったのかと思っていたが、恐怖よりも、Cの人間姿への興味のほうが勝ったのか。
女は鼻息荒く、俺の持っていたスマホを奪い取ると、ひょいひょいと器用に操作し「今ならこれがオススメです! 今すぐ買いに行きましょう! 割引券もありますよ!!」とバックを持って服を着直すと、Cを引きずるようにして職員室を出ていった。
「親父殿。俺も行ったほうがいいか……? ついでに俺の着替えも買ったほうがいいんじゃね?」
「今日はやめとけ。女の買い物は長いぞ。服なんてスキルで洗って乾かせば何度も使えるだろ。それよりAは、スマホの操作を覚えておけ」
「スマホって、あの女が持って行ったやつか?」
「そうだったな……。今人間に別のスマホを用意させる」
心配そうにCが出て行った扉を見ているAを見て、兄弟愛かなと、ほっこりするのだった。
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