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闇の勇者
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「俺が怖くないのか? どう見ても人間ではないぞ?」
「そうだな。喋るゴブリンだな。人間の勉強よっぽど頑張ったんだろ? ペラペラだもんな、すごいな!」
「勉強はしていない。スキルで覚えたのだ」
「何それ??」
石島良太のレベルは1だ。
おそらくは基本的な知識すら授けずに身体拘束をして、牢屋に入れられていたのだ。衰弱しているわりには、魂の色が濃い気がして、ステータスを見たら、思った通りだった
彼は闇の勇者だった。
だからこそ石島良太は殺されもせず、牢屋の中に入るだけで済んだのだ。
切り札として、生かさず殺さず置いておいたのかもしれない。
池崎翔の所有スキルを詳細に鑑定した時に、闇の勇者の存在を匂わせるような記述があった。
つまり二人は共に協力しあえば、互いの短所と長所を補う役目だったのだ。
片方だけだったから、あんなにも弱かったのだ。
両方が揃っていたら、この俺でも苦しい戦いになったかもしれない。
今更ながらに運もあったのだな、と思う。
「石島良太は今後どうする? ここを出たら、仲間の転移者のところへ身を寄せるか?」
「ああ~ それはパスで。今更仲間面なんて出来ないからな」
クラスメイトは自殺などを防ぐためにも、犯していない者はいない。俺の子を妊娠して出産間近の女もいるし、どうするかな、と頭の中で考えていたが、良太の言葉に少し安心する。
「この国の王は死んだ。魔王退治もしなくていい。それは俺がやるからな。さぁ、牢屋から出るがいい」
「え? いいのか??? 悪いな!! ――い、いや、俺は牢屋出ないぞ??」
良太の口から飛び出した言葉に、俺は驚嘆した。
「なんでだ? 今後の生活に必要な金も渡すぞ。住居が必要なら確保しよう。もしあれなら、就職も斡旋しようか?」
「……至れり尽くせりだな!? 気持ちはありがたく受け取っておくけど、俺は人間を見殺しにしてしまったんだ。だから殺人者なんだ。ここで罪を償うよ」
「……そうか、気が済むまで、ここにいればいい。だが、出たければいつでも見張りにいってくれ。すぐに出そう」
「ありがとうな」
俺が死んだ後、良太が俺の机に縋りついて泣いていたのを、うろ覚えながらに記憶している。死ぬ事は俺が選んだことだし、良太は無関係だが、露骨に避けても、めげずに接してくれた優しい奴だ。泣かないで欲しいな、とぼんやり思った事を思い出す。
無理に出しても、彼は喜ばないだろう。
正義感が強く―― 曲がったことが大嫌いなやつだ。人間だった頃は、ずっと俺の味方でいてくれたが、俺がやってる事を見たら、どう思うか分からない。
この牢屋の中に居れば、俺がやろうと思っている事を見なくても済む。
「C、早急に囚人の待遇を改善しろ、これは最優先だ」
「はい。王の御心のままに」
牢屋から出て、良太の姿が見えなくなってから、指示を出す。
他の囚人よりガリガリにやせ細っていた良太。きっと、俺の時みたいに、他の囚人に食事を分け与えていたのだろう。
俺は良太にまだ恩を返せていない。
それまでは、彼を見守ろうと心に誓った。
「そうだな。喋るゴブリンだな。人間の勉強よっぽど頑張ったんだろ? ペラペラだもんな、すごいな!」
「勉強はしていない。スキルで覚えたのだ」
「何それ??」
石島良太のレベルは1だ。
おそらくは基本的な知識すら授けずに身体拘束をして、牢屋に入れられていたのだ。衰弱しているわりには、魂の色が濃い気がして、ステータスを見たら、思った通りだった
彼は闇の勇者だった。
だからこそ石島良太は殺されもせず、牢屋の中に入るだけで済んだのだ。
切り札として、生かさず殺さず置いておいたのかもしれない。
池崎翔の所有スキルを詳細に鑑定した時に、闇の勇者の存在を匂わせるような記述があった。
つまり二人は共に協力しあえば、互いの短所と長所を補う役目だったのだ。
片方だけだったから、あんなにも弱かったのだ。
両方が揃っていたら、この俺でも苦しい戦いになったかもしれない。
今更ながらに運もあったのだな、と思う。
「石島良太は今後どうする? ここを出たら、仲間の転移者のところへ身を寄せるか?」
「ああ~ それはパスで。今更仲間面なんて出来ないからな」
クラスメイトは自殺などを防ぐためにも、犯していない者はいない。俺の子を妊娠して出産間近の女もいるし、どうするかな、と頭の中で考えていたが、良太の言葉に少し安心する。
「この国の王は死んだ。魔王退治もしなくていい。それは俺がやるからな。さぁ、牢屋から出るがいい」
「え? いいのか??? 悪いな!! ――い、いや、俺は牢屋出ないぞ??」
良太の口から飛び出した言葉に、俺は驚嘆した。
「なんでだ? 今後の生活に必要な金も渡すぞ。住居が必要なら確保しよう。もしあれなら、就職も斡旋しようか?」
「……至れり尽くせりだな!? 気持ちはありがたく受け取っておくけど、俺は人間を見殺しにしてしまったんだ。だから殺人者なんだ。ここで罪を償うよ」
「……そうか、気が済むまで、ここにいればいい。だが、出たければいつでも見張りにいってくれ。すぐに出そう」
「ありがとうな」
俺が死んだ後、良太が俺の机に縋りついて泣いていたのを、うろ覚えながらに記憶している。死ぬ事は俺が選んだことだし、良太は無関係だが、露骨に避けても、めげずに接してくれた優しい奴だ。泣かないで欲しいな、とぼんやり思った事を思い出す。
無理に出しても、彼は喜ばないだろう。
正義感が強く―― 曲がったことが大嫌いなやつだ。人間だった頃は、ずっと俺の味方でいてくれたが、俺がやってる事を見たら、どう思うか分からない。
この牢屋の中に居れば、俺がやろうと思っている事を見なくても済む。
「C、早急に囚人の待遇を改善しろ、これは最優先だ」
「はい。王の御心のままに」
牢屋から出て、良太の姿が見えなくなってから、指示を出す。
他の囚人よりガリガリにやせ細っていた良太。きっと、俺の時みたいに、他の囚人に食事を分け与えていたのだろう。
俺は良太にまだ恩を返せていない。
それまでは、彼を見守ろうと心に誓った。
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