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恋しい人
恋しい人 第154話
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「ダメだ。葵が可愛すぎてまた勃ちそう」
「! ちょ、話! まだ終わってない!」
必死に訴えてる僕のことなんてお構いなしにキスしようとしてくる虎君。
本当はそのキスを受け入れたかったけど、うやむやにされたら困るから僕は『今はダメ!』と近づいてくる虎君の顔を押し退けた。
「雲英さんと二人きりで会わないって約束してっ」
「最初からそこまで親しくもないから大丈夫だって。過去に二人で会ったのも、海音に彼女ができて愚痴に付き合わされただけだから」
「でも! でも――――、え……? 海音、君……?」
それでもダメ! と言おうとしたんだけど、虎君の言葉に『ん?』と引っ掛かりを覚えた。それは虎君が雲英さんと二人で会っていた理由のせい。
(『海音君に彼女ができたから』? それって、まさか……)
「雲英さん、は、海音君が好きなの……?」
「まぁ、そういうこと」
呆然としながらも確認すれば、虎君は笑顔で頷き「だから眼中にないって言ってるだろ?」と僕がさっき拒んだキスを落としてきた。
「で、でも……」
「もし仮に雲英が俺を好きだったとしても、俺が靡くと思う?」
「それは……、思わない、けど……」
僕だけを見つめてくれる虎君の愛は、疑いようがない。きっと絶世の美女と呼ばれる人に求愛されても、虎君は見向きもしないだろうとは思う。
でも、たとえ信じていても平静でいられるかどうかは別問題。僕は当然、ヤキモチを妬くに決まってる。
「それでも、不安?」
「うん……。信じてるけど、やっぱりヤダ……」
「はは。だよな」
疑ってるわけじゃないと弁解する僕に、虎君は自分も経験済みだから分かってると笑った。
その言葉に、僕の眉は下がってしまう。僕が知らないところで虎君がこんな辛い思いをしていたなんて、考えるだけで心が痛くなる。
「僕、虎君のこと、不安にさせてたの……?」
「違うよ。これは葵のせいじゃなくて、俺のせい」
「? どうして虎君のせいなの?」
「俺が葵を愛しすぎてるから、本当にどうしようもないほど愛してるから、俺以外のヤツに葵が笑いかけてるのを見ると相手が憎くて堪らなくなる」
僕の目をじっと見つめ、頬を撫でてくる虎君。その眼差しに、温もりに、凄くドキドキしちゃう……。
「俺にとって姫神君が葵にとっての雲英だよ」
「! 慶史じゃないんだ……?」
出てきた名前に思わず反応をしてしまう。すると虎君は「藤原は別格だよ」と苦笑を浮かべた。なら海音君あたりに喩えるのかな? って思ってたけど、それは悠栖と朋喜だって否定されてしまった。
「藤原クラスの奴は俺の周りには居ないだろ?」
「慶史クラスって」
「俺がどれだけあいつに嫉妬してると思うんだ」
「『してる』って、今もなの?」
「今もだよ。昔も今もこの先も、あいつを憎く思わない日は来ない気がする」
おどけた口調でヤキモチを全面に出してくる虎君が可愛くて、僕もつられて笑う。
きっと慶史が聞いたら激怒した上で呆れられるだろうけど、今は二人きりだから虎君のヤキモチを素直に喜んだ。
「雲英とどうこうなるとか絶対ありえないけど、でも葵が不安なら二人で会わないよう気を付けるよ」
「いいの?」
「もちろん。葵に嫉妬してもらうのは嬉しいけど、俺の傍で幸せだって笑っててくれた方がそれ以上に嬉しいから」
だから少しでも笑顔を曇らせる要因があるなら、俺は喜んでそれを全力で排除するよ。
そう真摯に告げられたら、心が震えないわけがない。
僕は感じた喜びのまま虎君に抱き着く。抱きついて、虎君にばかり我慢させてごめんなさいと謝った。同じことを言われても僕には虎君のように決断できないから……。
「いいんだよ。……言っただろ? 俺は、俺の傍で葵が幸せだって笑ってくれるなら、それだけで十分だよ」
「! 幸せだよっ……僕、凄く、凄く幸せだよ!」
大好きな虎君に大切に想われて幸せじゃないわけがない。
必死に幸せだと、大好きだと伝えれば、虎君は興奮している僕の口を塞ぐようにキスしてきた。そして―――。
「ほら、もうこんなに幸せになった」
優しく微笑み、愛してると言ってくれた……。
「うぅ……虎君、大好きぃ……」
ああ、ダメだ。幸せ過ぎて泣けてきた。
「! ちょ、話! まだ終わってない!」
必死に訴えてる僕のことなんてお構いなしにキスしようとしてくる虎君。
本当はそのキスを受け入れたかったけど、うやむやにされたら困るから僕は『今はダメ!』と近づいてくる虎君の顔を押し退けた。
「雲英さんと二人きりで会わないって約束してっ」
「最初からそこまで親しくもないから大丈夫だって。過去に二人で会ったのも、海音に彼女ができて愚痴に付き合わされただけだから」
「でも! でも――――、え……? 海音、君……?」
それでもダメ! と言おうとしたんだけど、虎君の言葉に『ん?』と引っ掛かりを覚えた。それは虎君が雲英さんと二人で会っていた理由のせい。
(『海音君に彼女ができたから』? それって、まさか……)
「雲英さん、は、海音君が好きなの……?」
「まぁ、そういうこと」
呆然としながらも確認すれば、虎君は笑顔で頷き「だから眼中にないって言ってるだろ?」と僕がさっき拒んだキスを落としてきた。
「で、でも……」
「もし仮に雲英が俺を好きだったとしても、俺が靡くと思う?」
「それは……、思わない、けど……」
僕だけを見つめてくれる虎君の愛は、疑いようがない。きっと絶世の美女と呼ばれる人に求愛されても、虎君は見向きもしないだろうとは思う。
でも、たとえ信じていても平静でいられるかどうかは別問題。僕は当然、ヤキモチを妬くに決まってる。
「それでも、不安?」
「うん……。信じてるけど、やっぱりヤダ……」
「はは。だよな」
疑ってるわけじゃないと弁解する僕に、虎君は自分も経験済みだから分かってると笑った。
その言葉に、僕の眉は下がってしまう。僕が知らないところで虎君がこんな辛い思いをしていたなんて、考えるだけで心が痛くなる。
「僕、虎君のこと、不安にさせてたの……?」
「違うよ。これは葵のせいじゃなくて、俺のせい」
「? どうして虎君のせいなの?」
「俺が葵を愛しすぎてるから、本当にどうしようもないほど愛してるから、俺以外のヤツに葵が笑いかけてるのを見ると相手が憎くて堪らなくなる」
僕の目をじっと見つめ、頬を撫でてくる虎君。その眼差しに、温もりに、凄くドキドキしちゃう……。
「俺にとって姫神君が葵にとっての雲英だよ」
「! 慶史じゃないんだ……?」
出てきた名前に思わず反応をしてしまう。すると虎君は「藤原は別格だよ」と苦笑を浮かべた。なら海音君あたりに喩えるのかな? って思ってたけど、それは悠栖と朋喜だって否定されてしまった。
「藤原クラスの奴は俺の周りには居ないだろ?」
「慶史クラスって」
「俺がどれだけあいつに嫉妬してると思うんだ」
「『してる』って、今もなの?」
「今もだよ。昔も今もこの先も、あいつを憎く思わない日は来ない気がする」
おどけた口調でヤキモチを全面に出してくる虎君が可愛くて、僕もつられて笑う。
きっと慶史が聞いたら激怒した上で呆れられるだろうけど、今は二人きりだから虎君のヤキモチを素直に喜んだ。
「雲英とどうこうなるとか絶対ありえないけど、でも葵が不安なら二人で会わないよう気を付けるよ」
「いいの?」
「もちろん。葵に嫉妬してもらうのは嬉しいけど、俺の傍で幸せだって笑っててくれた方がそれ以上に嬉しいから」
だから少しでも笑顔を曇らせる要因があるなら、俺は喜んでそれを全力で排除するよ。
そう真摯に告げられたら、心が震えないわけがない。
僕は感じた喜びのまま虎君に抱き着く。抱きついて、虎君にばかり我慢させてごめんなさいと謝った。同じことを言われても僕には虎君のように決断できないから……。
「いいんだよ。……言っただろ? 俺は、俺の傍で葵が幸せだって笑ってくれるなら、それだけで十分だよ」
「! 幸せだよっ……僕、凄く、凄く幸せだよ!」
大好きな虎君に大切に想われて幸せじゃないわけがない。
必死に幸せだと、大好きだと伝えれば、虎君は興奮している僕の口を塞ぐようにキスしてきた。そして―――。
「ほら、もうこんなに幸せになった」
優しく微笑み、愛してると言ってくれた……。
「うぅ……虎君、大好きぃ……」
ああ、ダメだ。幸せ過ぎて泣けてきた。
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