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恋しい人
恋しい人 第106話
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「『指切り』って、なんだそれ。お前らいくつだよ?」
「外野は黙ってろよ」
そんなの今時子供でもしないぞ。
茶化してくる茂斗にカチンとするも、虎君が僕より先に茂斗を窘めてくれるから僕は唇を噛みしめ、虎君と絡んだ小指を見つめる。
「約束を破ったらどうするの?」
僕と虎君の甘い雰囲気に今度は姉さんが横やりを入れてくる。約束を破った時のペナルティを決めておかないと約束する意味がないんじゃない? と。
別にペナルティが怖いから約束を破らないわけじゃないと思うんだけど、虎君は苦笑交じりに僕を見つめ、「もしも約束を破ったら葵は俺以外の誰とも会えなくなるからな?」なんて言ってくる。
「監禁宣言かよ」
「家族の前でいい度胸してるわね、虎」
茂斗と姉さんは「愛が重い」と呆れ顔。虎君はそんな二人に「だから、煩い」と睨みを利かせ、僕の返答を促してきた。
「それでも、俺と約束してくれる?」
「当たり前でしょ……」
僕は椅子から立ち上がり虎君にぎゅっと抱き着くと、前も言ったけどペナルティにならないからね? と伝えた。
虎君がいてくれるならそれでいい。そう思っている僕にしてみれば虎君が言ったペナルティは全然怖くないし、困るものでもなかった。
「でも葵はペナルティにならないからって約束を破ったりしないだろ?」
「当たり前でしょ」
「なら、ペナルティなんてなんだっていいんだよ。……葵とずっと一緒にいられるなら、俺にはそれがすべてだから」
優しくて声だけで僕を包み込む虎君。僕は堪らず虎君のほっぺたにキスしてしまう。
「! ……茂斗、桔梗、1分だけ後ろ向いてくれ」
「お前らなぁ……」
「はいはい。今日はパンケーキに免じて言うこと聞いてあげる」
「おねーちゃん、ちゃいにぃととら、なかよしするの? ぱぱとままみたいに?」
「! やだ。パパとママ、めのうに何見せてるのよ」
「姉貴もめのうも頼むからもう喋んな……。俺のメンタルが削りつくされる……」
みんなの声に物凄く恥ずかしくなってくる。虎君のことしか見えなくなってものすごく甘えたな自分を見られてしまった。と。
でも、虎君は僕が離れることを許さないとばかりに抱きしめていて、それどころか耳元で「愛してる」なんて言ってくる。
おずおずと顔を上げれば虎君は一層優しい笑みを浮かべ、僕の頬を大きな手で包み込んでくる。
目を閉じれば唇に触れる温もり。流れ込んでくる虎君の熱に、さっきまで頭にあった恥ずかしさなんて何処か遠くに飛んで行ってしまう。
ちゅっちゅっと触れるだけのキスを何度も交わせば、深いキスが欲しくなってしまうのは仕方ない。だって大好きなんだもん。
僕が熱に潤んだ視界で虎君を見つめれば、虎君は困ったように笑う。
今は我慢して。って言われた気がした僕はもどかしい想いのまま『我慢する』と伝える代わりに目を閉じて……。
(虎君、大好き……。虎君……)
此処がリビングで傍に茂斗も姉さんもめのうも居るって分かってるのに、なんなら陽琥さんもいるって分かってるのに、大好きが溢れて虎君のこと以外考えられなくなってしまう。
「おねーちゃん、まーだー?」
「もうちょっと。頑張っておめめ隠しててね。……そろそろ1分経つわよ」
二人きりの世界にトリップしてた僕を現実に引き戻すめのうと姉さんの声。
離れた唇に目を開けば、虎君は名残惜しそうにもう一度チュッとキスを落とすと僕の顔を胸に埋めて「もういいぞ」って声をあげた。
「めのう、もうおめめ開けていいわよ」
「はーい! わぁ! まぶしぃ!」
1分間目を閉じていただろうめのうの朗らかな声に、普段の僕ならきっと可愛すぎて天使だと笑みを零していただろう。
でも、今の僕はめのうのお兄ちゃんじゃなくて虎君の恋人に意識が傾いていて、虎君に胸を埋めてこのまま離れたくないとばかりにぎゅっと抱き着いてしまう。
「あれぇ? おねーちゃん、ちゃいにぃととら、なかよししてるよ? めのう、おめめぎゅっとしなくていいの?」
「めのうは本当、気が利くイイ子ね」
「くっそ……俺も凪にあいてぇ……」
姉さんとめのうの楽しげな声。そして、我慢の限界なのか涙声に聞こえる茂斗の声。
みんなの声に、流石にこれ以上虎君に甘えていたら今度は怒られるかもしれないと僕は虎君の胸から顔を上げてみる。
すると虎君は僕を見下ろし、顔をまじまじと見つめてきた。
「……ん。もういいよ」
「? 何が?」
訳が分からない僕を余所に、虎君は抱きしめていた手をパッと解いてしまう。
でも、僕が頼りない顔をしてしまったからか、困ったように笑うと「こら、ダメだろ?」って今度は髪を撫でる手でそのまま僕に引き寄せてきた。
「外野は黙ってろよ」
そんなの今時子供でもしないぞ。
茶化してくる茂斗にカチンとするも、虎君が僕より先に茂斗を窘めてくれるから僕は唇を噛みしめ、虎君と絡んだ小指を見つめる。
「約束を破ったらどうするの?」
僕と虎君の甘い雰囲気に今度は姉さんが横やりを入れてくる。約束を破った時のペナルティを決めておかないと約束する意味がないんじゃない? と。
別にペナルティが怖いから約束を破らないわけじゃないと思うんだけど、虎君は苦笑交じりに僕を見つめ、「もしも約束を破ったら葵は俺以外の誰とも会えなくなるからな?」なんて言ってくる。
「監禁宣言かよ」
「家族の前でいい度胸してるわね、虎」
茂斗と姉さんは「愛が重い」と呆れ顔。虎君はそんな二人に「だから、煩い」と睨みを利かせ、僕の返答を促してきた。
「それでも、俺と約束してくれる?」
「当たり前でしょ……」
僕は椅子から立ち上がり虎君にぎゅっと抱き着くと、前も言ったけどペナルティにならないからね? と伝えた。
虎君がいてくれるならそれでいい。そう思っている僕にしてみれば虎君が言ったペナルティは全然怖くないし、困るものでもなかった。
「でも葵はペナルティにならないからって約束を破ったりしないだろ?」
「当たり前でしょ」
「なら、ペナルティなんてなんだっていいんだよ。……葵とずっと一緒にいられるなら、俺にはそれがすべてだから」
優しくて声だけで僕を包み込む虎君。僕は堪らず虎君のほっぺたにキスしてしまう。
「! ……茂斗、桔梗、1分だけ後ろ向いてくれ」
「お前らなぁ……」
「はいはい。今日はパンケーキに免じて言うこと聞いてあげる」
「おねーちゃん、ちゃいにぃととら、なかよしするの? ぱぱとままみたいに?」
「! やだ。パパとママ、めのうに何見せてるのよ」
「姉貴もめのうも頼むからもう喋んな……。俺のメンタルが削りつくされる……」
みんなの声に物凄く恥ずかしくなってくる。虎君のことしか見えなくなってものすごく甘えたな自分を見られてしまった。と。
でも、虎君は僕が離れることを許さないとばかりに抱きしめていて、それどころか耳元で「愛してる」なんて言ってくる。
おずおずと顔を上げれば虎君は一層優しい笑みを浮かべ、僕の頬を大きな手で包み込んでくる。
目を閉じれば唇に触れる温もり。流れ込んでくる虎君の熱に、さっきまで頭にあった恥ずかしさなんて何処か遠くに飛んで行ってしまう。
ちゅっちゅっと触れるだけのキスを何度も交わせば、深いキスが欲しくなってしまうのは仕方ない。だって大好きなんだもん。
僕が熱に潤んだ視界で虎君を見つめれば、虎君は困ったように笑う。
今は我慢して。って言われた気がした僕はもどかしい想いのまま『我慢する』と伝える代わりに目を閉じて……。
(虎君、大好き……。虎君……)
此処がリビングで傍に茂斗も姉さんもめのうも居るって分かってるのに、なんなら陽琥さんもいるって分かってるのに、大好きが溢れて虎君のこと以外考えられなくなってしまう。
「おねーちゃん、まーだー?」
「もうちょっと。頑張っておめめ隠しててね。……そろそろ1分経つわよ」
二人きりの世界にトリップしてた僕を現実に引き戻すめのうと姉さんの声。
離れた唇に目を開けば、虎君は名残惜しそうにもう一度チュッとキスを落とすと僕の顔を胸に埋めて「もういいぞ」って声をあげた。
「めのう、もうおめめ開けていいわよ」
「はーい! わぁ! まぶしぃ!」
1分間目を閉じていただろうめのうの朗らかな声に、普段の僕ならきっと可愛すぎて天使だと笑みを零していただろう。
でも、今の僕はめのうのお兄ちゃんじゃなくて虎君の恋人に意識が傾いていて、虎君に胸を埋めてこのまま離れたくないとばかりにぎゅっと抱き着いてしまう。
「あれぇ? おねーちゃん、ちゃいにぃととら、なかよししてるよ? めのう、おめめぎゅっとしなくていいの?」
「めのうは本当、気が利くイイ子ね」
「くっそ……俺も凪にあいてぇ……」
姉さんとめのうの楽しげな声。そして、我慢の限界なのか涙声に聞こえる茂斗の声。
みんなの声に、流石にこれ以上虎君に甘えていたら今度は怒られるかもしれないと僕は虎君の胸から顔を上げてみる。
すると虎君は僕を見下ろし、顔をまじまじと見つめてきた。
「……ん。もういいよ」
「? 何が?」
訳が分からない僕を余所に、虎君は抱きしめていた手をパッと解いてしまう。
でも、僕が頼りない顔をしてしまったからか、困ったように笑うと「こら、ダメだろ?」って今度は髪を撫でる手でそのまま僕に引き寄せてきた。
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