328 / 552
恋しい人
恋しい人 第43話
しおりを挟む
「たった数時間じゃ、そんなこと分からないよね? 個人情報だし……。ネットで調べても出てくるわけないだろうし……」
「本当、ごめん……。白状するから、嫌いにならないでくれるか……?」
虎君は頼りない表情で懇願してくる。
本当、臆病な虎君。僕の想いは絶対に揺るがないって言ってるのに、僕のことが大好きだからこんなに不安になってしまうなんて、ますます好きになることはあれど嫌いになんて絶対にならない。
僕は頷き、教えて欲しいと虎君を見つめた。
「一週間ぐらい前、瑛大が家に来ただろ?」
「うん。慶史達と一緒に来た時のことだよね? すぐに帰っちゃったけど……」
思い出すのは一週間とちょっと前の三月末のこと。僕は虎君とのことで沢山迷惑をかけた友達にお詫びを兼ねて慶史達を家に招待してもてなそうとした。
その時瑛大も勿論招待したんだけど、僕と慶史とあまりうまくいっていない瑛大は居心地の悪さに耐えられなくなったのかすぐに帰ってしまった。
瑛大から聞いたのかな? って思ったんだけど、でも、すぐに帰った瑛大から何か聞くなんてこと、できなかったはずだ。
そんな疑問を抱きながらも虎君の言葉を待つ僕。虎君はちゃんと説明してくれるはずだ。と。
「あの時、データを受け取ったんだ。俺がその……、頼 んでた。……外部から入学してくる生徒の名前と、要注意な在校生の名前を洗い出しとけって……」
「……! それって、USBのこと?」
「そう。それのこと」
思い出した。瑛大、帰る前に虎君に確かに何か渡してた。
その時は何を渡していたのか全然気にしていなかったけど、納得だ。瑛大は渡した何かの見返りにテスト対策を求めていたから。
僕は驚きながらも、そっか。と気の抜けた声を零した。
「……こういう事、今回が初めて?」
「いや、結構定期的に……」
本当に正直に答えてくれる虎君。
俯き「ごめん」と謝る大好きな人に、僕はその腕にぎゅっと抱き着き、謝らないで欲しいと小さく呟いた。
「怒らないのか……?」
「? どうして? ちょっとびっくりしたけど、でも、虎君は理由なくそんなことしないでしょ?」
「葵……。……葵が心配だったんだ。傍で守れない代わりに、できる限り危険なことから遠ざけたかったんだ」
頬を撫でられ、愛を告げられる。
僕は虎君の手に頬を摺り寄せ、本当にいつでも僕のことを守ってくれていたんだと胸が暖かくなる。
(きっと慶史が聞いたら『過保護だ』って呆れちゃうんだろうけど、でも、僕って本当、大事にされてるなぁ……)
素直に嬉しいと伝えれば、虎君は安心したように笑ってくれた。
僕はその笑顔が愛しくて、やっぱり虎君の傍にいたいと思ってしまう……。
「虎君、キス、したい……」
「! 俺もしたいと思ってた」
チュッと触れるだけのキスをくれる虎君。僕の大好きな人……。
唇が離れても僕は虎君から離れられなくて、その腕により強くしがみついてしまう。
(好き……虎君、大好き……)
自分でも驚くほど虎君に触れたいと思ってる。虎君に触れて欲しいと思っている。
でも、今日はこれ以上触れ合うことはできない。それが凄くもどかしい……。
「虎君、どうしよう……」
「どうした?」
「好きが溢れて苦しいよぉ……」
まるで発情期が来た動物のように、虎君と触れ合うことを望んでしまう。
それが凄く恥ずかしい。けど……。
(でも、好きなんだもん……。虎君のこと、大好きなんだもん……)
虎君と愛し合いたい気持ちが、どうしても止められない。
虎君を困らせるだけだって分かってるのに、それなのに……。
「葵、そんな可愛いこと言わないでくれ……。……いい加減、理性が負ける……」
「ごめんなさい……」
虎君の困惑が手に取るようにわかる。
僕はこんな浅ましい自分を恥ずかしいと思う。でも、本心は偽れない……。
「僕、やっぱり虎君に触って欲しい……」
燻り続けていた熱を完全に消すことは困難ということか。一度は治まったはずの熱は、いとも簡単にぶり返して体躯を熱くしてしまう。
「本当、ごめん……。白状するから、嫌いにならないでくれるか……?」
虎君は頼りない表情で懇願してくる。
本当、臆病な虎君。僕の想いは絶対に揺るがないって言ってるのに、僕のことが大好きだからこんなに不安になってしまうなんて、ますます好きになることはあれど嫌いになんて絶対にならない。
僕は頷き、教えて欲しいと虎君を見つめた。
「一週間ぐらい前、瑛大が家に来ただろ?」
「うん。慶史達と一緒に来た時のことだよね? すぐに帰っちゃったけど……」
思い出すのは一週間とちょっと前の三月末のこと。僕は虎君とのことで沢山迷惑をかけた友達にお詫びを兼ねて慶史達を家に招待してもてなそうとした。
その時瑛大も勿論招待したんだけど、僕と慶史とあまりうまくいっていない瑛大は居心地の悪さに耐えられなくなったのかすぐに帰ってしまった。
瑛大から聞いたのかな? って思ったんだけど、でも、すぐに帰った瑛大から何か聞くなんてこと、できなかったはずだ。
そんな疑問を抱きながらも虎君の言葉を待つ僕。虎君はちゃんと説明してくれるはずだ。と。
「あの時、データを受け取ったんだ。俺がその……、頼 んでた。……外部から入学してくる生徒の名前と、要注意な在校生の名前を洗い出しとけって……」
「……! それって、USBのこと?」
「そう。それのこと」
思い出した。瑛大、帰る前に虎君に確かに何か渡してた。
その時は何を渡していたのか全然気にしていなかったけど、納得だ。瑛大は渡した何かの見返りにテスト対策を求めていたから。
僕は驚きながらも、そっか。と気の抜けた声を零した。
「……こういう事、今回が初めて?」
「いや、結構定期的に……」
本当に正直に答えてくれる虎君。
俯き「ごめん」と謝る大好きな人に、僕はその腕にぎゅっと抱き着き、謝らないで欲しいと小さく呟いた。
「怒らないのか……?」
「? どうして? ちょっとびっくりしたけど、でも、虎君は理由なくそんなことしないでしょ?」
「葵……。……葵が心配だったんだ。傍で守れない代わりに、できる限り危険なことから遠ざけたかったんだ」
頬を撫でられ、愛を告げられる。
僕は虎君の手に頬を摺り寄せ、本当にいつでも僕のことを守ってくれていたんだと胸が暖かくなる。
(きっと慶史が聞いたら『過保護だ』って呆れちゃうんだろうけど、でも、僕って本当、大事にされてるなぁ……)
素直に嬉しいと伝えれば、虎君は安心したように笑ってくれた。
僕はその笑顔が愛しくて、やっぱり虎君の傍にいたいと思ってしまう……。
「虎君、キス、したい……」
「! 俺もしたいと思ってた」
チュッと触れるだけのキスをくれる虎君。僕の大好きな人……。
唇が離れても僕は虎君から離れられなくて、その腕により強くしがみついてしまう。
(好き……虎君、大好き……)
自分でも驚くほど虎君に触れたいと思ってる。虎君に触れて欲しいと思っている。
でも、今日はこれ以上触れ合うことはできない。それが凄くもどかしい……。
「虎君、どうしよう……」
「どうした?」
「好きが溢れて苦しいよぉ……」
まるで発情期が来た動物のように、虎君と触れ合うことを望んでしまう。
それが凄く恥ずかしい。けど……。
(でも、好きなんだもん……。虎君のこと、大好きなんだもん……)
虎君と愛し合いたい気持ちが、どうしても止められない。
虎君を困らせるだけだって分かってるのに、それなのに……。
「葵、そんな可愛いこと言わないでくれ……。……いい加減、理性が負ける……」
「ごめんなさい……」
虎君の困惑が手に取るようにわかる。
僕はこんな浅ましい自分を恥ずかしいと思う。でも、本心は偽れない……。
「僕、やっぱり虎君に触って欲しい……」
燻り続けていた熱を完全に消すことは困難ということか。一度は治まったはずの熱は、いとも簡単にぶり返して体躯を熱くしてしまう。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる