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恋しい人
恋しい人 第37話
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「虎君……?」
手を伸ばせば、虎君はその手を取ると身を屈め指先にキスを落としてくる。
熱い吐息交じりに「愛してる」と呟きを落とす虎君。僕はさっきまでの熱を手放しきれなくて、続きをして欲しいと浅ましく求めてしまう。
「虎君、ヤダ……。もっと傍に来てよ……」
虎君の手を握り締め、引き寄せる。でも虎君は僕の手からすり抜けてしまって……。
「葵、本当にごめん……」
「どうして……? 僕のこと、嫌いなの……?」
「! そんなわけないだろっ」
求めてくれていたのに、どうして?
疑っていない愛を疑う言葉が口から漏れる。でもそれは虎君がすぐに否定してくれて、安心。
「だったらどうして……?」
「本当に、本当に愛してるからだよ。葵を心から愛してる……。本当に、どうしようもないほど愛してるんだ……」
歪む表情に滲む色香に、心臓が飛び出しそうなほどドキドキする。
虎君は僕から離れ、ベッドに座り込むとその顔を大きな手で覆い隠してしまった。
「僕も虎君のこと、大好きだよ……?」
「ああ。分かってる……。でも、……でも、ダメなんだ……」
「どうして? 僕達、想い合ってるのにどうしてダメなの……?」
上体を起こし、虎君に尋ねる。
本当は傍に居たかったけど、近づいてはダメな気がして我慢した。
「…………一度暴走したら、俺は自分を絶対に止められない。絶対、何があっても、止められない」
顔を上げ僕を見る虎君の眼差しはいつになく真剣で、その男らしい表情に僕はまた虎君を好きになる。
僕は少しだけ虎君に近づき、尋ねる。それがどうしてダメなの? と。
「鍵もかけてない部屋で葵を抱けるわけないだろ」
ため息交じりに頭を抱える虎君。僕はというと、虎君も僕と深く愛し合いたいと思ってくれていると分かってドキドキしっぱなしだった。
「なら、鍵、掛けたら―――」
「下には茂さん達も桔梗も茂斗もいるだろ。いくら家族と言えど葵の声を俺以外の誰かが聞くかもしれない状況ではできない」
食い下がる僕に虎君は絶対にダメだと頑な。葵の可愛い声を聞いていいのは俺だけだ。と。
「か、『可愛い声』って……」
「普段の声ですらできることなら他人に聞かせたくないって思ってるんだ。愛し合ってる時の声を俺以外の誰かが聞こうものなら、俺はそいつを殺してしまいそうだよ」
自分の独占欲の強さは分かってる。
そう苦笑する虎君はふと笑い顔を真顔に戻し、僕を見据えるともう一度「ごめん」と謝ってきた。
「どうしても、この家では葵を抱けない……」
「僕が、虎君だけのものだから……?」
「そうだ。俺だけの葵だ……」
虎君の前に座り、尋ねる。僕が好きだから、愛し合えないんだよね? と。僕と愛し合いたいとは想ってくれているんだよね? と。
「葵に触りたいよ。本当なら今すぐにでも葵を抱きたいよ……」
「虎君……」
「でも、愛しているから、どうしてもできない……。葵を愛してるから、……本当に愛してるから……」
虎君は手を伸ばし、僕の頬っぺたに触る。苦し気に囁かれる愛の言葉の数々に、僕は堪らなくなる。
虎君の傍に居たい。虎君と深く愛し合いたい。
でも、僕も虎君と同じ気持ちだから、触れ合いたい欲求を我慢した。
(僕も虎君が僕を愛してくれる声、誰にも聞かせたくない……)
できることなら、今すぐ二人きりの空間に飛んで行ってしまいたい。
僕は少し躊躇いながらも虎君に抱き着く。虎君は僕を抱き締め、背中を擦ってもう一度「愛してる」と囁いてくれた。
「ねぇ虎君、今度、二人きりになれるところに行きたい……」
「! ……分かった。探しておくよ」
「絶対、だよ……?」
「ああ。絶対だ。……約束、な?」
我慢しながらもやっぱり虎君と愛し合いたくて堪らなくて、エッチのお誘いにしか思えない言葉を口にしてしまう。
虎君はそれに驚きながらも薄く笑い、約束だと触れるだけのキスを僕にくれた。
手を伸ばせば、虎君はその手を取ると身を屈め指先にキスを落としてくる。
熱い吐息交じりに「愛してる」と呟きを落とす虎君。僕はさっきまでの熱を手放しきれなくて、続きをして欲しいと浅ましく求めてしまう。
「虎君、ヤダ……。もっと傍に来てよ……」
虎君の手を握り締め、引き寄せる。でも虎君は僕の手からすり抜けてしまって……。
「葵、本当にごめん……」
「どうして……? 僕のこと、嫌いなの……?」
「! そんなわけないだろっ」
求めてくれていたのに、どうして?
疑っていない愛を疑う言葉が口から漏れる。でもそれは虎君がすぐに否定してくれて、安心。
「だったらどうして……?」
「本当に、本当に愛してるからだよ。葵を心から愛してる……。本当に、どうしようもないほど愛してるんだ……」
歪む表情に滲む色香に、心臓が飛び出しそうなほどドキドキする。
虎君は僕から離れ、ベッドに座り込むとその顔を大きな手で覆い隠してしまった。
「僕も虎君のこと、大好きだよ……?」
「ああ。分かってる……。でも、……でも、ダメなんだ……」
「どうして? 僕達、想い合ってるのにどうしてダメなの……?」
上体を起こし、虎君に尋ねる。
本当は傍に居たかったけど、近づいてはダメな気がして我慢した。
「…………一度暴走したら、俺は自分を絶対に止められない。絶対、何があっても、止められない」
顔を上げ僕を見る虎君の眼差しはいつになく真剣で、その男らしい表情に僕はまた虎君を好きになる。
僕は少しだけ虎君に近づき、尋ねる。それがどうしてダメなの? と。
「鍵もかけてない部屋で葵を抱けるわけないだろ」
ため息交じりに頭を抱える虎君。僕はというと、虎君も僕と深く愛し合いたいと思ってくれていると分かってドキドキしっぱなしだった。
「なら、鍵、掛けたら―――」
「下には茂さん達も桔梗も茂斗もいるだろ。いくら家族と言えど葵の声を俺以外の誰かが聞くかもしれない状況ではできない」
食い下がる僕に虎君は絶対にダメだと頑な。葵の可愛い声を聞いていいのは俺だけだ。と。
「か、『可愛い声』って……」
「普段の声ですらできることなら他人に聞かせたくないって思ってるんだ。愛し合ってる時の声を俺以外の誰かが聞こうものなら、俺はそいつを殺してしまいそうだよ」
自分の独占欲の強さは分かってる。
そう苦笑する虎君はふと笑い顔を真顔に戻し、僕を見据えるともう一度「ごめん」と謝ってきた。
「どうしても、この家では葵を抱けない……」
「僕が、虎君だけのものだから……?」
「そうだ。俺だけの葵だ……」
虎君の前に座り、尋ねる。僕が好きだから、愛し合えないんだよね? と。僕と愛し合いたいとは想ってくれているんだよね? と。
「葵に触りたいよ。本当なら今すぐにでも葵を抱きたいよ……」
「虎君……」
「でも、愛しているから、どうしてもできない……。葵を愛してるから、……本当に愛してるから……」
虎君は手を伸ばし、僕の頬っぺたに触る。苦し気に囁かれる愛の言葉の数々に、僕は堪らなくなる。
虎君の傍に居たい。虎君と深く愛し合いたい。
でも、僕も虎君と同じ気持ちだから、触れ合いたい欲求を我慢した。
(僕も虎君が僕を愛してくれる声、誰にも聞かせたくない……)
できることなら、今すぐ二人きりの空間に飛んで行ってしまいたい。
僕は少し躊躇いながらも虎君に抱き着く。虎君は僕を抱き締め、背中を擦ってもう一度「愛してる」と囁いてくれた。
「ねぇ虎君、今度、二人きりになれるところに行きたい……」
「! ……分かった。探しておくよ」
「絶対、だよ……?」
「ああ。絶対だ。……約束、な?」
我慢しながらもやっぱり虎君と愛し合いたくて堪らなくて、エッチのお誘いにしか思えない言葉を口にしてしまう。
虎君はそれに驚きながらも薄く笑い、約束だと触れるだけのキスを僕にくれた。
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