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特別な人
特別な人 第145話
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「友達が辛い時は一人でいちゃダメなんでしょ?」
「え?」
「だから、もし万が一葵が失恋しちゃったら、誰が葵の傍にいるの? まさか一人で泣く気じゃないよね?」
ぶっきらぼうな言い方だったけど、どうやら振られた僕の心配をしてくれているみたい。
そして何よりびっくりしたのは慶史の言葉。だって慶史が言った言葉は昔僕が慶史に言った言葉だったから……。
「……なんで笑うんだよっ!」
「え? 僕笑ってた?」
「笑ってた! なんなら今もにやけてるっ!!」
人が折角心配してあげてるのに腹立つ!!
そう怒る慶史の顔は本当に真っ赤で、睨みながら僕の頬っぺたを抓ってくる。
よっぽど恥ずかしいのか、その手は普段のからかいよりもずっと痛くて、僕も本気で痛がって抵抗してしまう。
若干涙目になりながら放してと訴える僕。慶史は「またからかったらもっと痛くするから!」って脅して手を離すと、バツのわるそうな顔をしてそっぽを向いた。
「からかってないのにぃ……。もぅ、まだ頬っぺたジンジンしてるし……」
「心配かけてるのに笑ってる葵が悪い」
「だから、笑ってるつもりなかったんだってば! なんか理不尽じゃない?」
頬っぺたを擦りながら不満を訴えるも、慶史の優しさが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう。でもここで笑ったら今度はもっと強く抓られちゃうから、我慢。
にやけるのを誤魔化す様に擦っていた手で頬っぺたを包み込んで隠すと、「らしくないこと言ってごめんねっ」て赤い顔のまま自棄になった慶史から謝られちゃった。
「あ、謝らないでよ! 凄く嬉しかったんだからっ!」
慶史が心配してくれるのが凄く嬉しかっただけだからって必死に訴えたら、まだ僅かに赤い頬のまま恨めしそうにこっちを見てくる慶史。
「……なんか、普段は全然心配とかしない冷血人間って思われてるっぽいよね。今の言い方だと」
「! そんなことないよ!? 確かに慶史は口悪いところとか、遠慮のないところとか、嘘臭いところとか色々あるけど」
「ちょっと」
「でも、本当はすごく優しくていつだって友達の事を一番に考えてくれてるって僕はちゃんと知ってるから!!」
誤解されたくなくて必死に伝える僕の声はいつの間にか大きくなっていて、気づいたら教室中に響いていた。
羞恥のあまり机に突っ伏してる慶史と、談笑を止めて何事だと視線を向けるクラスメイトに笑って誤魔化すことを試みる僕。
でも、クラスメイトからの目は突き刺さったままで居た堪れなかった。
「何騒いでんだよ。マモの愛の告白、廊下まで聞こえてるぞ?」
「慶史君と葵君が仲良しなのは分かってるけど、悠栖の前であんまり仲良くしないであげて? 自分も二人ともっと仲良くなりたいっていつも煩いんだから」
シンと静まり返っていた教室に響いたのは職員室から戻ってきた悠栖と朋喜の声で、茶化すようなその物言いの教室の空気が一変した。
それぞれの会話に戻るクラスメイトに僕はホッと胸を撫で下ろして、歩いてくる二人の助け舟に感謝する。
すると、悠栖も朋喜も助け舟のつもりはなかったって言ってきて……。
「だってさっきの『慶史の事は僕が一番知ってる!』ってアピールだろ? それって愛の告白じゃん?」
「二人が僕達の知らない話題で盛り上がった日の夜はいじけた悠栖が部屋に押しかけてきて延々泣きごと聞かされてるしね」
「! ちょ、朋喜おまっ! そういうプライバシーねぇこと言うなよ!」
「『プライバシー』じゃなくて、『デリカシー』じゃない? この場合」
騒ぎ立てる悠栖に「煩いよ?」って満面の笑顔を見せる朋喜。その笑顔が妙に威圧的で、悠栖じゃなくてもちょっと怖いと思ってしまう。
朋喜はほわほわしてて可愛くてお人形さんみたいな存在だと思ってたけど、ちょっと前にそれが全部『ポーズ』だったと教えられた。
僕を騙してるみたいで辛かったって言ってた朋喜に、これからはありのままの朋喜でいてねってお願いしたのは僕自身。でも、やっぱりこれまでとのギャップが大きくてまだ少し戸惑っちゃう。
「朋喜、葵が引いてるよ」
「! ひ、引いてないよ!? ちょっとびっくりしただけだしっ!」
ようやく顔を上げた慶史からもらうのは反撃? なのかな?
びっくりしたけど引いてないと訂正する僕に、朋喜は「ごめんね」って謝ってきた。
朋喜は何も悪くないのに謝らせてしまって罪悪感に胸が痛くなった。
「いきなり素を見せられても驚くよね。もう少し段階踏むようにするね」
「と、朋喜、ごめんね? 僕、朋喜の事、大好きだからね?」
戸惑ってしまう僕を許して欲しくて謝って、でもちゃんとありのままの朋喜と友達でいたいから自分を作ったりしないでってお願いする。
我儘な僕に、朋喜は花が綻ぶような笑顔で頷いてくれた。
「葵君はやっぱり優しいね」
「そんなことないよっ。朋喜に気を使わせてるし、全然優しくないよ……」
むしろ朋喜の方が優しいと思う。そんな言葉を返したら、朋喜が見せてくれるのは微笑みだ。
(やっぱり朋喜って可愛いなぁ)
小柄で華奢な朋喜は本当に女の子みたいに可愛い。その上こんな風に笑いかけられたら、たとえ恋愛感情を持っていなくてもドキッとしてしまうというものだ。
「え?」
「だから、もし万が一葵が失恋しちゃったら、誰が葵の傍にいるの? まさか一人で泣く気じゃないよね?」
ぶっきらぼうな言い方だったけど、どうやら振られた僕の心配をしてくれているみたい。
そして何よりびっくりしたのは慶史の言葉。だって慶史が言った言葉は昔僕が慶史に言った言葉だったから……。
「……なんで笑うんだよっ!」
「え? 僕笑ってた?」
「笑ってた! なんなら今もにやけてるっ!!」
人が折角心配してあげてるのに腹立つ!!
そう怒る慶史の顔は本当に真っ赤で、睨みながら僕の頬っぺたを抓ってくる。
よっぽど恥ずかしいのか、その手は普段のからかいよりもずっと痛くて、僕も本気で痛がって抵抗してしまう。
若干涙目になりながら放してと訴える僕。慶史は「またからかったらもっと痛くするから!」って脅して手を離すと、バツのわるそうな顔をしてそっぽを向いた。
「からかってないのにぃ……。もぅ、まだ頬っぺたジンジンしてるし……」
「心配かけてるのに笑ってる葵が悪い」
「だから、笑ってるつもりなかったんだってば! なんか理不尽じゃない?」
頬っぺたを擦りながら不満を訴えるも、慶史の優しさが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう。でもここで笑ったら今度はもっと強く抓られちゃうから、我慢。
にやけるのを誤魔化す様に擦っていた手で頬っぺたを包み込んで隠すと、「らしくないこと言ってごめんねっ」て赤い顔のまま自棄になった慶史から謝られちゃった。
「あ、謝らないでよ! 凄く嬉しかったんだからっ!」
慶史が心配してくれるのが凄く嬉しかっただけだからって必死に訴えたら、まだ僅かに赤い頬のまま恨めしそうにこっちを見てくる慶史。
「……なんか、普段は全然心配とかしない冷血人間って思われてるっぽいよね。今の言い方だと」
「! そんなことないよ!? 確かに慶史は口悪いところとか、遠慮のないところとか、嘘臭いところとか色々あるけど」
「ちょっと」
「でも、本当はすごく優しくていつだって友達の事を一番に考えてくれてるって僕はちゃんと知ってるから!!」
誤解されたくなくて必死に伝える僕の声はいつの間にか大きくなっていて、気づいたら教室中に響いていた。
羞恥のあまり机に突っ伏してる慶史と、談笑を止めて何事だと視線を向けるクラスメイトに笑って誤魔化すことを試みる僕。
でも、クラスメイトからの目は突き刺さったままで居た堪れなかった。
「何騒いでんだよ。マモの愛の告白、廊下まで聞こえてるぞ?」
「慶史君と葵君が仲良しなのは分かってるけど、悠栖の前であんまり仲良くしないであげて? 自分も二人ともっと仲良くなりたいっていつも煩いんだから」
シンと静まり返っていた教室に響いたのは職員室から戻ってきた悠栖と朋喜の声で、茶化すようなその物言いの教室の空気が一変した。
それぞれの会話に戻るクラスメイトに僕はホッと胸を撫で下ろして、歩いてくる二人の助け舟に感謝する。
すると、悠栖も朋喜も助け舟のつもりはなかったって言ってきて……。
「だってさっきの『慶史の事は僕が一番知ってる!』ってアピールだろ? それって愛の告白じゃん?」
「二人が僕達の知らない話題で盛り上がった日の夜はいじけた悠栖が部屋に押しかけてきて延々泣きごと聞かされてるしね」
「! ちょ、朋喜おまっ! そういうプライバシーねぇこと言うなよ!」
「『プライバシー』じゃなくて、『デリカシー』じゃない? この場合」
騒ぎ立てる悠栖に「煩いよ?」って満面の笑顔を見せる朋喜。その笑顔が妙に威圧的で、悠栖じゃなくてもちょっと怖いと思ってしまう。
朋喜はほわほわしてて可愛くてお人形さんみたいな存在だと思ってたけど、ちょっと前にそれが全部『ポーズ』だったと教えられた。
僕を騙してるみたいで辛かったって言ってた朋喜に、これからはありのままの朋喜でいてねってお願いしたのは僕自身。でも、やっぱりこれまでとのギャップが大きくてまだ少し戸惑っちゃう。
「朋喜、葵が引いてるよ」
「! ひ、引いてないよ!? ちょっとびっくりしただけだしっ!」
ようやく顔を上げた慶史からもらうのは反撃? なのかな?
びっくりしたけど引いてないと訂正する僕に、朋喜は「ごめんね」って謝ってきた。
朋喜は何も悪くないのに謝らせてしまって罪悪感に胸が痛くなった。
「いきなり素を見せられても驚くよね。もう少し段階踏むようにするね」
「と、朋喜、ごめんね? 僕、朋喜の事、大好きだからね?」
戸惑ってしまう僕を許して欲しくて謝って、でもちゃんとありのままの朋喜と友達でいたいから自分を作ったりしないでってお願いする。
我儘な僕に、朋喜は花が綻ぶような笑顔で頷いてくれた。
「葵君はやっぱり優しいね」
「そんなことないよっ。朋喜に気を使わせてるし、全然優しくないよ……」
むしろ朋喜の方が優しいと思う。そんな言葉を返したら、朋喜が見せてくれるのは微笑みだ。
(やっぱり朋喜って可愛いなぁ)
小柄で華奢な朋喜は本当に女の子みたいに可愛い。その上こんな風に笑いかけられたら、たとえ恋愛感情を持っていなくてもドキッとしてしまうというものだ。
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