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特別な人
特別な人 第53話
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「マモのその目、マジでずるい。そんな目で見られたら絶対断れないじゃん!」
「分かるわー。偶に捨てられた子犬みたいな目するんだよねぇ、葵は」
犬とか猫とかハムスターとか可愛い動物が大好きな悠栖は、困ったと言わんばかりの笑い顔を僕に見せてくる。
ただ普通に見てたつもりの僕はそれに困惑。でも、慶史は悠栖に分かる分かるって頷いてて、更には朋喜まで同意してるし、三人の目は悪いんじゃないかって真剣に心配してしまう。
「葵君って純真そのものだもんね。無邪気って言うか無垢って言うか」
「そうそう。マジでそれ! 朋喜の嘘臭い無邪気さじゃないって言うかさー」
「ちょっと悠栖君、失礼だよ!」
たとえるなら『足跡のついてない新雪』。
悠栖が納得したように頷いてるんだけど、朋喜はそんな悠栖に不機嫌を露わにする。
頬っぺたを膨らませて怒る朋喜を僕は『可愛い』って思うんだけど、慶史と悠栖は「その顔があざとい」って切り捨ててしまう。
「二人ともなんでそんな酷いこと言うの?」
「酷いか?」
「全然。事実だし?」
友達からそんな風に言われたら朋喜、泣いちゃうよ?
そう僕が窘めるけど、さっきまで言い合いしてたと思えないぐらい息ぴったりに悪びれない慶史と悠栖。それどころか「葵は人を信じすぎ」って僕の心配をして見せる。
「外面ばかり見てたら本心なんて一生わからねぇーよ?」
「僕だってちゃんと人の内面見てるよ」
「ふーん……。朋喜、どう思う? 葵は人を見る目あると思う?」
悠栖の意地悪な言い方に言い返したら、慶史は自分が怒らせた朋喜に話を振って『自分と悠栖は間違ってないよな?』って言わんばかりの顔をする。
朋喜に謝ることが先なのに……って呆れる僕。でも、感じる視線に隣に目を向ければ、さっきまで膨れっ面してたはずの朋喜が僕をじっと見ていてちょっと驚いた。
「と、朋喜……? どうしたの……?」
「はぁ……。そうだね、このまま一人でゼウスに進学させるのは心配なぐらい葵は人を信じやすいよね……」
朋喜がため息交じりに零した言葉に衝撃を受けた。だって、いつもの朋喜ならそんなこと絶対言わないから。ほわほわして優しい朋喜なら、僕の肩を持ってくれると思ったから。
でも朋喜は頬杖をついてまた溜め息をついて、何故か外部受験を止めないかと言ってきた。
「な、なんで今受験の話になってるの……?」
「だって別々の高校になったら誰が葵君を変態の毒牙から守るの? ここだったら僕達がいるし柊先生もいるし安心なのに、なんで自分から危ない方に行っちゃうの?」
本当に心配してるって言う朋喜だけど、全然理解が追い付かない。
なんで今受験の話になってるのかも分からないし、『変態の毒牙』っていうのが何かも分からない。そもそも友達なら初等部はゼウスに通ってたんだからちゃんとあっちにもいるし、柊先生はクライストで中等部と高等部を行き来する養護教諭なのに安心ってどういうこと?
「朋喜、話端折りすぎ。マモが固まってるぞ」
「まぁ葵は朋喜に夢見てるからなぁ。いきなり本性覗かされたらそうなるよな」
え? 分かってないのは僕だけ?
楽しそうな悠栖と慶史に僕は説明を求める様に視線を向ける。
そしたら、二人は声を合わせて「こいつめちゃくちゃ性格悪いから」って朋喜をさした。
「! えぇ?!」
「だからなんで誤解招く言い方するの? ……葵君、僕は友達以外どうでもいいってだけで、意地悪ってわけじゃないからね?」
呆然とする僕に向き直って「誤解しないでね?」って言ってくる朋喜。その表情はやっぱり可愛くて、僕は頭が付いて行かないながらも頷いて分かったと返事をしていた。
「よかった! 葵君に誤解されたらどうしようってずっと不安だったんだ!」
「本当よかったな、朋喜。マモは裏表ないしみんなに優しいから本性がバレたら嫌われるってずーっと不安だったもんなぁ?」
安心したように笑う朋喜の笑顔は綻ぶ花のように愛らしくて綺麗。
でも慶史と悠栖はそんな朋喜の笑顔には裏があるって言う。そして朋喜も二人の言葉を否定せずに、それがバレたら絶対に嫌われるって思ってたって苦笑い。大事な友達だから嫌われたくないし、軽蔑もされたくない。って。
朋喜の内面を僕だけ知らなかったっていう事実は凄く悲しいしショックだったけど、でも大事な友達にそんな風に思わせてしまっていた自分がダメだったんだって素直に思えた。
だから、僕は朋喜に向き直ると「気づかなくてごめんね?」って謝るんだ。
「っ―――! やっぱり葵君、可愛い!」
「! と、朋喜っ、苦しい! 苦しいよ!?」
許してくれる? て尋ねたら、何故か抱き着かれた。ぎゅーって力いっぱい抱き着いてくる朋喜に、僕は突然の抱擁に息が止まりそうになってしまった。
「葵君、やっぱり外部受験止めよう? 心配すぎて僕達授業に集中できないよっ!」
「だ、だからなんで受験の話になるの……? 関係ないよ、ね……?」
「さっきも言ったでしょ? 純真な葵君に人間の裏の顔を見せたくないのっ!」
純粋で無垢なままでいて欲しいの! って、朋喜の中で僕ってどういうイメージなんだろう……?
「えっと……、朋喜の気持ちは嬉しいけど、僕、純粋でもなければ無垢でもないよ……? 僕だって嫌な事だってあるし、嫌いなものだってあるよ?」
だからそんな風に心配してくれなくていいよ?
そりゃ周りから見れば頼りないかもしれないけど、僕だって日々成長してるんだから、大丈夫。
「分かるわー。偶に捨てられた子犬みたいな目するんだよねぇ、葵は」
犬とか猫とかハムスターとか可愛い動物が大好きな悠栖は、困ったと言わんばかりの笑い顔を僕に見せてくる。
ただ普通に見てたつもりの僕はそれに困惑。でも、慶史は悠栖に分かる分かるって頷いてて、更には朋喜まで同意してるし、三人の目は悪いんじゃないかって真剣に心配してしまう。
「葵君って純真そのものだもんね。無邪気って言うか無垢って言うか」
「そうそう。マジでそれ! 朋喜の嘘臭い無邪気さじゃないって言うかさー」
「ちょっと悠栖君、失礼だよ!」
たとえるなら『足跡のついてない新雪』。
悠栖が納得したように頷いてるんだけど、朋喜はそんな悠栖に不機嫌を露わにする。
頬っぺたを膨らませて怒る朋喜を僕は『可愛い』って思うんだけど、慶史と悠栖は「その顔があざとい」って切り捨ててしまう。
「二人ともなんでそんな酷いこと言うの?」
「酷いか?」
「全然。事実だし?」
友達からそんな風に言われたら朋喜、泣いちゃうよ?
そう僕が窘めるけど、さっきまで言い合いしてたと思えないぐらい息ぴったりに悪びれない慶史と悠栖。それどころか「葵は人を信じすぎ」って僕の心配をして見せる。
「外面ばかり見てたら本心なんて一生わからねぇーよ?」
「僕だってちゃんと人の内面見てるよ」
「ふーん……。朋喜、どう思う? 葵は人を見る目あると思う?」
悠栖の意地悪な言い方に言い返したら、慶史は自分が怒らせた朋喜に話を振って『自分と悠栖は間違ってないよな?』って言わんばかりの顔をする。
朋喜に謝ることが先なのに……って呆れる僕。でも、感じる視線に隣に目を向ければ、さっきまで膨れっ面してたはずの朋喜が僕をじっと見ていてちょっと驚いた。
「と、朋喜……? どうしたの……?」
「はぁ……。そうだね、このまま一人でゼウスに進学させるのは心配なぐらい葵は人を信じやすいよね……」
朋喜がため息交じりに零した言葉に衝撃を受けた。だって、いつもの朋喜ならそんなこと絶対言わないから。ほわほわして優しい朋喜なら、僕の肩を持ってくれると思ったから。
でも朋喜は頬杖をついてまた溜め息をついて、何故か外部受験を止めないかと言ってきた。
「な、なんで今受験の話になってるの……?」
「だって別々の高校になったら誰が葵君を変態の毒牙から守るの? ここだったら僕達がいるし柊先生もいるし安心なのに、なんで自分から危ない方に行っちゃうの?」
本当に心配してるって言う朋喜だけど、全然理解が追い付かない。
なんで今受験の話になってるのかも分からないし、『変態の毒牙』っていうのが何かも分からない。そもそも友達なら初等部はゼウスに通ってたんだからちゃんとあっちにもいるし、柊先生はクライストで中等部と高等部を行き来する養護教諭なのに安心ってどういうこと?
「朋喜、話端折りすぎ。マモが固まってるぞ」
「まぁ葵は朋喜に夢見てるからなぁ。いきなり本性覗かされたらそうなるよな」
え? 分かってないのは僕だけ?
楽しそうな悠栖と慶史に僕は説明を求める様に視線を向ける。
そしたら、二人は声を合わせて「こいつめちゃくちゃ性格悪いから」って朋喜をさした。
「! えぇ?!」
「だからなんで誤解招く言い方するの? ……葵君、僕は友達以外どうでもいいってだけで、意地悪ってわけじゃないからね?」
呆然とする僕に向き直って「誤解しないでね?」って言ってくる朋喜。その表情はやっぱり可愛くて、僕は頭が付いて行かないながらも頷いて分かったと返事をしていた。
「よかった! 葵君に誤解されたらどうしようってずっと不安だったんだ!」
「本当よかったな、朋喜。マモは裏表ないしみんなに優しいから本性がバレたら嫌われるってずーっと不安だったもんなぁ?」
安心したように笑う朋喜の笑顔は綻ぶ花のように愛らしくて綺麗。
でも慶史と悠栖はそんな朋喜の笑顔には裏があるって言う。そして朋喜も二人の言葉を否定せずに、それがバレたら絶対に嫌われるって思ってたって苦笑い。大事な友達だから嫌われたくないし、軽蔑もされたくない。って。
朋喜の内面を僕だけ知らなかったっていう事実は凄く悲しいしショックだったけど、でも大事な友達にそんな風に思わせてしまっていた自分がダメだったんだって素直に思えた。
だから、僕は朋喜に向き直ると「気づかなくてごめんね?」って謝るんだ。
「っ―――! やっぱり葵君、可愛い!」
「! と、朋喜っ、苦しい! 苦しいよ!?」
許してくれる? て尋ねたら、何故か抱き着かれた。ぎゅーって力いっぱい抱き着いてくる朋喜に、僕は突然の抱擁に息が止まりそうになってしまった。
「葵君、やっぱり外部受験止めよう? 心配すぎて僕達授業に集中できないよっ!」
「だ、だからなんで受験の話になるの……? 関係ないよ、ね……?」
「さっきも言ったでしょ? 純真な葵君に人間の裏の顔を見せたくないのっ!」
純粋で無垢なままでいて欲しいの! って、朋喜の中で僕ってどういうイメージなんだろう……?
「えっと……、朋喜の気持ちは嬉しいけど、僕、純粋でもなければ無垢でもないよ……? 僕だって嫌な事だってあるし、嫌いなものだってあるよ?」
だからそんな風に心配してくれなくていいよ?
そりゃ周りから見れば頼りないかもしれないけど、僕だって日々成長してるんだから、大丈夫。
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