愛してると言いたかった

アタラン

文字の大きさ
上 下
11 / 17

箱の秘密

しおりを挟む
「忍・・何故ここに?」

「ああ、登にここまで送ってもらった。」

忍は怒っているわけでもなく俺が持っている箱に目を落として一言いった。


「やっぱりあの場所だったんだな。」

「ああ。」

俺は、直観的にあの場所だった意味を知っていると思った。

咲から聞いていたならあの時咲は、寝ていなかったと言う事で、目撃されていたのなら・・・。

「お前、見ていたのか?」

忍はあっさりと「ああ、見たよ偶然だったけどね。あの時咲が寝ていなかった事も俺は知っていたよ。」と言った。

咲は、あの後すぐに起きて赤い顔をして嬉しそうに唇に手をあてていたのを見たんだと忍は話してくれた。

俺達は、いつも四人でいて俺と咲の二人だけと言う事は何回もない。

だから、その数回の一回のこの場所での出来事かもとまさかと言う思いは封印して来てみた。

「咲は、起きていたのか・・今さらだが恥ずかしいものだな。」

20年以上前の話なのに俺は異常に恥ずかしかった。

まるで数時間前に咲とキスをしてそれを忍に目撃されたような感覚だった。

「まあ可愛い思い出じゃないか?」

忍は、笑いながらそう言うが何故か忍が遠くを見ているように感じた。

戻って家で開けるか一度別の場所であけるかという話になって、桜の父親に関係する物が入っていたら色々困ることもあるかも知れないと考えて俺達のいつもの場所の

「俺の」に行く事にした。

時間は、まだ早く開店時間前だがマスターに事情を電話で説明したら快く店を開けて俺達を待っていてくれる事になった。

まだ客が誰もいない店のカウンター席に座って空き缶を三人で見つめた。

「開けるか。」俺がそう言うと忍も短く「ああ。」と返事そした。

意外と埋まっていた箱の蓋は固くて上の蓋を強く掴んで下の箱の部分を俺は、自分の太ももに挟んで思いっきり上蓋のヘリに爪をひっかけて力を入れて開けた。

「開いた。」

そっと蓋を開けて一番上にあったのはパスポートだった。

その下には開封されていない手紙と小さなんビニール袋に入れられたUSBメモリーそして箱の一番底に航空券があった。

「パスポートの期限は切れてるか・・。」

黒だから10年有効のパスポートは咲の物で有効期限はきれていた。

まだ若い時の咲の写真のパスポートを確認していた俺の横で箱の底にあった未使用の航空券を忍は凝視していた。

「凱お前が渡米したのは、桜が産まれる前年の8月3日か?」

「ああ、8月3日の便だったかな。」


なんだよ、まさか同じ日の便なのか?

俺は、忍が差し出してきた航空券を震える手で受け取って確認した。

そこには、確かに咲の名前と日付が印刷されていて行先も同じだった。

「咲と何があったんだ?最後に会ったのはいつだ?」

忍は、冷静を装っている様だったが俺には解るんだ忍は冷静でもない俺に対しての怒りを向けないようにぶつけないように冷静になろうとしているだけだ。

「7月の最初の週末が最後だよ。」

「お前咲と何があった?何をした?」

忍は、俺の胸倉を掴み今にも殴りそうな勢いだった。

マスターも止めに入ったが本気で止めようとしてはいないマスターも怒っているのか?

「まあ落ち着け忍。凱俺も聞きたい何があったんだ?」

俺は、俺で今まで聞くのが怖くて聞いていなかった事を二人に聞いた。

「この年の7月の終わりくらいに咲に男がいたんだよな?」

「いないよ、お前誰から何を聞いてそう言うんだ?」

マスターも咲には男の影かなかったと言う。

俺は騙されたのか?

「篠原って女じゃないよな?」

何故、篠原を忍やマスターが知ってるんだ?

「ああ、少しだけ付き合って別れた女だけど何で篠原の名前が出てくるんだ?確かに俺と寄りを戻したいって9月頃にアメリカに来た時に咲には恋人がいるって写真を持ってきたが。」

写真が本物だと思ったからあの女の言う事を俺は信じたんだ。

「ああ、あの女のやりそうな事だな。」

マスターは、眉間に皺をよせて嫌な顔をした。

「俺は、篠原を突き放したから彼女はすぐに帰国したし彼女とは関係はなかった。」


忍は俺を睨んで言った。

「でもその女の言う事を信じたんだろう?」

俺達に裏も取らないでただ一枚の写真でその女の言う事を信じたのだろうと忍は責めるように俺に言った。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】つぎの色をさがして

蒼村 咲
恋愛
【あらすじ】 主人公・黒田友里は上司兼恋人の谷元亮介から、浮気相手の妊娠を理由に突然別れを告げられる。そしてその浮気相手はなんと同じ職場の後輩社員だった。だが友里の受難はこれでは終わらなかった──…

私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

景華
恋愛
顔いっぱいの眼鏡をかけ、地味で自身のない水無瀬海月(みなせみつき)は、部署内でも浮いた存在だった。 そんな中初めてできた彼氏──村上優悟(むらかみゆうご)に、海月は束の間の幸せを感じるも、それは罰ゲームで告白したという残酷なもの。 真実を知り絶望する海月を叱咤激励し支えたのは、部署の鬼主任、和泉雪兎(いずみゆきと)だった。 彼に支えられながら、海月は自分の人生を大切に、自分を変えていこうと決意する。 自己肯定感が低いけれど芯の強い海月と、わかりづらい溺愛で彼女をずっと支えてきた雪兎。 じれながらも二人の恋が動き出す──。

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

逢う魔が時

みるみる
恋愛
 ロクシー侯爵夫妻の息子ラウールの結婚が決まり、屋敷が喜びに包まれる中‥侯爵夫人は深い悲しみの中にいました。  息子の結婚前日に突然屋敷に現れた愛人とその娘‥。  夫は愛人を屋敷に迎え入れ、その娘を正式に養女として迎え入れると言い出しました。  夫人は悲しみのあまり部屋に引きこもってしまいますが‥。  

処理中です...