愛してると言いたかった

アタラン

文字の大きさ
上 下
6 / 17

桜の父親は誰?

しおりを挟む
「桜の父親は誰なんだ?」

そう聞いた俺に二人は「俺達も知りたいし知りたかった。」と言ってビールを飲む。

登は、あの手この手で咲に父親は誰なのかを聞いたが咲は息を引き取るその時も言わなかったらしい。

俺は、密かに二人に憤りを感じていた。

「お前らが知らないのは理解できたけど、そんな状況だと何故俺には言わなかったんだよ!」

俺が何よりも許せないと思っているのは、この二人が15年も咲が一人で子供を産んで育てている事を俺には黙っていた事だ。

二人は、一瞬だけ押し黙ったが・・登が意を決したように言った。

「咲がお前に怒られるのは嫌だから言わないでくれって。最初はな桜が無事に産まれたら言うと言ってたんだけど、でも桜が産まれてからも凱には言わないと言ったんだ。俺には、内緒でもし凱に言ったら二度と桜に会わせないって言われたんだよ。」

登は、桜が産まれた時に一緒に産院まで行ったらしく、産まれた直後から見てきた桜が可愛くて仕方なかったから会わせないと言う言葉には
逆らえなかったと言う。

「俺も同じだよ。」

忍まで同じだと言う。

「お前らは、どれだけ咲が怖かったんだよ・・。」

咲が怖いわけじゃないけど、桜に会えなくなるのが怖かったしと二人は言う、お前が俺達と同じ立場ならどうだよと言われると・・・

俺も同じ行動をすると思うから何も言えなくなった。

「俺達は、昔から咲に本気でお願いされたら昔から断れなし逆らえない。凱は、一番咲に間違ってるとか注意していたけど、俺達二人は咲に勝った事がないだろう?人として桜が大好きだったからな。」

登は、泣きながらビールを空けると冷蔵庫からまたビールを持ってきて飲んでいる。

弱いのに辛い時や悲しい時に酔いつぶれるまで登は飲む。

そんな登を見ていたら思い出した。

登は、女に振られるとよく酒を持って咲の部屋に上がり込んで飲んでいた。

咲から俺達に電話がきて「登が失恋して飲んでるから来て。」と何回あった事か。

時間のある時は、よく俺も咲の家に行って飲んだ記憶もある。

咲の家で飲む時は、大抵水曜日で「俺の」が定休日の日だったなと思い出していた。

忍は、俺に「咲の妊娠を一番初めに聞いたのは俺だと思う。」と言い出した。

「咲が顔色が悪くて風邪かと聞いたんだよ。」

咲は、困った顔をして違うといって白状したらしい。

「咲は、その時には妊娠四か月を超えてて、堕胎は出来ない時期になっていたから俺は、その時も当然父親は誰だと聞いたんだ。悪阻もきつかったはずなのに一人で抱え込んでいたようだったよ。俺は、医者だよ子供を諦めろなんて言わないのに言われると思ったみたいなんだ。」

何かを思い出したように忍は立ち上がり桜の部屋からアルバムを持ってきた。

「アルバム見るか?」

そう言ってアルバムを開くとそこには笑顔で赤ちゃんを抱く咲がいた。

咲お前幸せそうだな・・こんな咲をみたら俺は説教なんてしなかったと思う。

子供を産んでこんな幸せそうな顔をみたら何も言えないだろう?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】つぎの色をさがして

蒼村 咲
恋愛
【あらすじ】 主人公・黒田友里は上司兼恋人の谷元亮介から、浮気相手の妊娠を理由に突然別れを告げられる。そしてその浮気相手はなんと同じ職場の後輩社員だった。だが友里の受難はこれでは終わらなかった──…

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

終わりと始まりのセレナーデ

伊能こし餡
恋愛
「これで私を殺して」 変わらない日常をただダラダラ過ごすだけ、時間さえ過ぎればいい 私とみんなの差は常に開いてる、時間なんて過ぎなければいいのに 交錯するはずのない思い、もし交わることがあるのなら・・・・ これはきっと、あなたの心を暖めてくれる 2作目まして、こし餡です。読んでもらえると嬉しいです。お気に入りを貰えるともっと嬉しいです。 誤字脱字などありましたら教えていただけるとありがたいです。 Twitterやってます。気になった方もそうでない方もどうぞ→@ko_shian1022

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

処理中です...