拗らせ専務は溺愛したい

みんなで動けば怖くない

鷹崎は、言いたくありませんと拒否したが相川はそんな彼を無視して話した。

「相川・・お前。」

意気揚々と知っているほぼすべての事を二人に話す相川は、楽しそうに話を聞く二人とは裏腹に極寒の地のような冷気を隣にいる鷹崎から自分に向けられているのを感じた。

「隼人怒るのは間違いよ。貴方ほんと不器用ね。」

花は、呆れ顔で息子に溜息をつきながら言った。

「ええ。僕は不器用ですよ！今後は女性を紹介してこないで下さい。」

表情を変えないようにしていても鷹崎を知りすぎている花と相川にはかなり顔が赤くなって
いるよに見えた。

アランは笑いながら「恋愛以外は完璧な男なのにな～。」と言うからそれを聞いた鷹崎は嫌な顔をした。

「息子の気持ちは解ったけど肝心の美鈴ちゃんはどうなの？」

息子に聞いてもまとも答えを得る事ができないと思った花は相川に聞く。

「それ聞きます？聞いちゃいます？」


「焦らすなよどうなんだ？」

「どうなの？」

二人は相川の回答を今か今かと待つが・・。

「いい加減にしてください。相川も！」

そう言う鷹崎の言葉は、完全に無視されて三人の会話が盛り上がる。

「美鈴ちゃんは、鷹崎を受け入れてるから気にはなってるんだと俺は思うんだよ。あと一押しって感じかもね。」

相川の言葉にいち早く花は反応する。

「こうなったらグズグズしてられないわ！作戦を考えないと。」

花がそう言うと、相川もアランも一緒に考える。

「撮影は、一週間後だよな。その一週間の間で撮影で倒れないようにしないといけないから
って二人でデートに行けば？」

相川は、今考えましたという風に発言したが、本当は鷹崎に提案する機会を狙っていた。

今この二人がいるから少し強引な事を提案してもどうにかなりそうだと考えたからだがその期待を協力者二人は裏切らない。

「そうねそれが良いと思うわ。最初は二人でなくバーベキューパーティーはどう？」

この提案については、鷹崎も考える。

二人きりというハードルの高い事でなく皆でとなれば彼女のストレスにならないかもしれないと考えたからだ。

「そうと決まれば私の別荘がいいかしら？そんな遠くもないし海も見えるのよ。」

海の見える高台にあって、アトリエとして使うつもりの場所らしく、撮影用の服の打ち合わせもかねての懇親会という計画になった。

相川は、加奈子と美鈴と千秋を誘うらしいから大輔も来るだろう。

三日後に決行するバーベキュー大作戦そう決まって三人は張り切って準備するから、鷹崎は大船に乗ったつもりでいろと相川は言う。

「美鈴さんが嫌だと言ったら中止ですよ。」

「嫌だと言わせないから大丈夫よ！」

力強い花の言葉だったが鷹崎は大きな溜息をつきながら「一番貴女に任せるのが怖いです。」
と言った。

そんな親子のやり取りを微笑ましくアランはみていた。

歪んでいた親子の関係が少し歪みが矯正されていくような感覚で止まっていた親子の時間が
動き出したように見えたからだ。
息子を他人以上に他人に感じるとよく花は言っていたが・・

よかったな花・・息子と話せたじゃないか！

「これから忙しくなるわ～。こうしてはいられない！用意があるから帰るわ。」

アランも帰るわよとアランは、花に急かされて帰って行った。


「相川、楽しそうですね。」

「いや楽しいよ。問題が解決して親友の長年の恋を応援できるそりゃ楽しいよ。」

ここまで楽しそうな顔をされたら何も言えなくなった鷹崎はソファーに持たれた。

「ここまで来たら腹をくくるしかないぞ！」

わかってますよ。と答えて鷹崎はスマホに届いた王からのメッセージに目を通す。

「脅迫については心配はなくなりました。拘束したみたいですね。」

花を脅迫していた会社の人物の処理も終わったと言う連絡が来たと言った。

「心配事は無くなったし俺は、千秋に相談してくるわ～。」

手を振って専務室を後にした相川はその足で秘書室にむかった。

「遊ばれていますよね。」

そう独り言を言ってから鷹崎はまた自分の仕事を再開するのだった。

相川が秘書室に相談するなり千秋は凄いスピードで参加者にメールやラインをいれる。

「社長、この企画には社運がかかってます！参加者はすでに参加了解済みです。」

千秋は参加者名簿なるものを作りその書類を相川に手渡した。その名簿の人数が少しばかり多い気がして千秋に聞くと。

「そんな社運とか大げさだけど・・参加人数多くない？」

「そんな事はありません。バーベキューするなら男手も必要です。もし美鈴さんがですよ専務を拒否したらどうなると思います？専務は仕事にならなくなるとかなりの確率で我が社の業績は落ちます！」

鼻息も荒く千秋は熱弁している、言ってる事は理解できるが・・昔から鷹崎を知っている相川は、鷹崎がそうそう簡単に美鈴を逃す事はないと確信していた。

「一理あるけど。鷹崎は大丈夫だよ・・美鈴ちゃんに対してだけ不器用だけどね。」

「美鈴さんにだけ？」

どういう意味？と千秋は聞いた。

余計な事を言ったかなと思った相川だったが既に遅くどういう意味なのかを問い詰められた。

「まーね。鷹崎は自分から誰かを愛したのは初めてだっただけで仕事同様に女に対しては・・
これ以上は言えない！」

どんなにその先を千秋が聞いても言いません言えませんと繰り返す相川からはそれ以上は聞き出せなかった。

今の鷹崎からは想像も出来ないような恋愛遍歴をどう考えても想像できない千秋は・・


何時か聞き出してやろうと心に決めたが少し聞くのも怖かった。