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最終章
思わぬ来客(一)
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「エルマー様、お久しぶりです。末永くよろしくお願いいたします」
「……お久しぶりですね、ラドミラ殿下。お元気でしたか?」
「はい。エルマー様とまたお会いできる日が来るのを心待ちにしておりました」
胸の前で手のひらを合わせているのはシエスカ王国のラドミラ王女。
なぜ来るのか。
「しかし急ですね。一言お知らせいただければ迎えをやりましたものを」
「いえ、エルマー様はここしばらくお忙しくされているようで、ご迷惑にならないようにと考えてのことです。叔父からも、大人になったのだからそろそろ身の振り方を自分で考えなさいと言われました」
王女といってもラドミラ王女はエヴシェン王の娘ではない。王弟の娘になるので、エヴシェン王の姪だ。それでも王族なのに間違いはないが。
かつてビアンカ殿下の結婚式の折に、当時のカミル陛下から相談された。エヴシェン王が俺に王族から一人か二人嫁がせたいと言っているがどうかと。頭の片隅にでも置いておいてくれと。そこでまだ幼かったラドミラ王女に会ったこともある。忘れてはいない。さすがに失礼だからな。
たしかに忘れてはいなかった。だが普通ならここまで来る前に俺に確認の一つもするだろう。そう思ってお付きの貴族らしい男性を見ると……顔を背けられた。おそらく分かってやったのだろう。ここまで連れてくれば俺なら受け取るだろうと。レオナルト陛下か、もしくはカミル先王陛下の入れ知恵かもしれない。
「もしかしてご迷惑でしたか?」
「いや、迷惑というほどでは」
もしかしたら表情に出たかもしれない。いや、別に彼女が嫌いなわけではない。そもそも嫌うほど話をしたわけでもない。だが困っているのも分かってほしい。
「とりあえずお疲れでしょう。まずは部屋に案内させましょう」
「ありがとうございます」
そのまま帰らせるようなことはしない。どうしてここまで来たのか、まあ嫁ぐためというのは分かっているが、どうして今さらなのか、あとで確認しなければな。
◆ ◆ ◆
「どうやらアルマン王国が別の大陸と交易を始める計画をしていると伯父から聞きまして」
今ではアルマン王国、ゴール王国、シエスカ王国の王城がつながり、定期的に会談が行われている。あの転移ドアは素晴らしい。国王や役人が行き来すれば、ちょっとした考えのすれ違いで揉め事になる機会は大きく減る。この三か国に関しては戦争になる可能性はほぼないだろう。
「私の母はこの大陸の出身ではありません。母の祖国につきましては幼いころより話を聞いております。何かお役に立てればと」
「なるほど」
「そう言えば大丈夫だろうと母が」
「素直ですね」
「常に素直であれと育てられました」
「素直すぎると損をすることもありますよ」
後ろではお付きのヴォイチェフ殿がハラハラしている。彼のことを付き人だと思っていたら宮廷伯だった。俺がゴール王国に大臣として行った時と同じ立場だ。
「ではここに向かっている二〇台の輿入れの馬車はどうすればよろしいでしょうか? 今回の婚礼のためにすべて用意されたものなのですが」
「……」
「私がこのまま祖国に帰れば、婚礼を拒否されたことが赤子にでも分かるでしょう。生き恥をさらしたまま修道院で余生を送ることになりますのね」
「……拒まれたらそう言えとお母様に言われたのですか?」
「はい。よくお分かりですね」
この子は素直なのではなく……真正直と呼ぶのが正しいか。嘘がつけない性格……いや、嘘をつくつもりがないのだろう。正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると言いそうだ。
「分かりました。現在は領地の端を開拓しているところです。領内が落ち着かない状態ですが、それでよろしければ婚礼の準備を進めさせましょう」
「ありがとうございます。嫁ぐと決めたからには私の生涯をエルマー様にお任せいたします」
「……私の生涯と言っても、まだ一〇歳でしょうが」
「年齢は関係ありません。私の心も体もエルマー様のものです。けっして他の者のものにはなりません」
こうしてシエスカ王国のラドミラ王女が俺に嫁ぐことになった。正直なところ、今は開拓で忙しい。できれば終わってからのほうが嬉しかったんだが。それに王女もまだ一〇歳。初めて会った時は六つになるかならないか。よくまあ俺のところへ嫁ぐ気になったものだ。
◆ ◆ ◆
転移ドアというのは素晴らしい。ありとあらゆる準備があっという間に終わる。貴族の結婚で大変なのが移動。貴族の移動は途中の領地に金を落とすために大切なことではあるが、今回はそれは無視して転移ドアで呼び集めることにした。それはレオナルト陛下の許可をとっている。
しかしまあ……どうしてここまでになったのか。俺は単なる準男爵の息子だったのにな。気分的に疲れた日には酒を飲みたくなる。上等な酒が届いているので、それを一つ開けた。
「喜ばしいことではないのですか?」
誰かと思ったらレイナウトだった。マリーナたちの従兄だが、彼女たちと違って俺とは少し距離があった。見た目は俺よりも少し上なだけだが、実際の年齢はずっと上だろう。竜の年齢は分からない。クラースは三〇〇〇歳を超えているらしいからな。
「喜ばしいか喜ばしくないかで考えたら喜ばしい。誰にとってもな。異国の姫を妻として迎えられる機会なんて滅多にない」
「ではどうしてそのような表情を?」
「誰も俺に対して一言も説明せず、気がつけば妻になる女性を押し付けられるからだ。それも何度となく」
「断ることはできないのですか?
「それを決めているのが俺よりも上の人たちだからな。俺に拒否権はない」
「……」
「それに……感じの悪い相手なら拒否もしようものが……」
ラドミラ王女本人に罪はない。エヴシェン王や両親に言われたからだろう。それが王族の務めだと。俺が本気で嫌だと言えば引き下がってくれるかもしれないが、そこまでしてシエスカ王国との関係を悪くしたくはない。
それにいろいろなことがあったが、その結果として辺境伯なんて過分な地位を与えられている。今回の話も自分としても悪い話ではない。国益にもなる。そうなると断ることはできない。
「思った以上に大変なんですね」
「どうだろう。もう少し俺に説明してくれれば気が楽になるはずなのにな。どうして誰も彼も俺が断れない状況を作ってから説明するのかと。まあ今さら愚痴っても仕方ないが」
「一杯付き合います」
「いい酒が届いている。山のようにな」
俺はレイナウトとグラスを傾けた。
「……お久しぶりですね、ラドミラ殿下。お元気でしたか?」
「はい。エルマー様とまたお会いできる日が来るのを心待ちにしておりました」
胸の前で手のひらを合わせているのはシエスカ王国のラドミラ王女。
なぜ来るのか。
「しかし急ですね。一言お知らせいただければ迎えをやりましたものを」
「いえ、エルマー様はここしばらくお忙しくされているようで、ご迷惑にならないようにと考えてのことです。叔父からも、大人になったのだからそろそろ身の振り方を自分で考えなさいと言われました」
王女といってもラドミラ王女はエヴシェン王の娘ではない。王弟の娘になるので、エヴシェン王の姪だ。それでも王族なのに間違いはないが。
かつてビアンカ殿下の結婚式の折に、当時のカミル陛下から相談された。エヴシェン王が俺に王族から一人か二人嫁がせたいと言っているがどうかと。頭の片隅にでも置いておいてくれと。そこでまだ幼かったラドミラ王女に会ったこともある。忘れてはいない。さすがに失礼だからな。
たしかに忘れてはいなかった。だが普通ならここまで来る前に俺に確認の一つもするだろう。そう思ってお付きの貴族らしい男性を見ると……顔を背けられた。おそらく分かってやったのだろう。ここまで連れてくれば俺なら受け取るだろうと。レオナルト陛下か、もしくはカミル先王陛下の入れ知恵かもしれない。
「もしかしてご迷惑でしたか?」
「いや、迷惑というほどでは」
もしかしたら表情に出たかもしれない。いや、別に彼女が嫌いなわけではない。そもそも嫌うほど話をしたわけでもない。だが困っているのも分かってほしい。
「とりあえずお疲れでしょう。まずは部屋に案内させましょう」
「ありがとうございます」
そのまま帰らせるようなことはしない。どうしてここまで来たのか、まあ嫁ぐためというのは分かっているが、どうして今さらなのか、あとで確認しなければな。
◆ ◆ ◆
「どうやらアルマン王国が別の大陸と交易を始める計画をしていると伯父から聞きまして」
今ではアルマン王国、ゴール王国、シエスカ王国の王城がつながり、定期的に会談が行われている。あの転移ドアは素晴らしい。国王や役人が行き来すれば、ちょっとした考えのすれ違いで揉め事になる機会は大きく減る。この三か国に関しては戦争になる可能性はほぼないだろう。
「私の母はこの大陸の出身ではありません。母の祖国につきましては幼いころより話を聞いております。何かお役に立てればと」
「なるほど」
「そう言えば大丈夫だろうと母が」
「素直ですね」
「常に素直であれと育てられました」
「素直すぎると損をすることもありますよ」
後ろではお付きのヴォイチェフ殿がハラハラしている。彼のことを付き人だと思っていたら宮廷伯だった。俺がゴール王国に大臣として行った時と同じ立場だ。
「ではここに向かっている二〇台の輿入れの馬車はどうすればよろしいでしょうか? 今回の婚礼のためにすべて用意されたものなのですが」
「……」
「私がこのまま祖国に帰れば、婚礼を拒否されたことが赤子にでも分かるでしょう。生き恥をさらしたまま修道院で余生を送ることになりますのね」
「……拒まれたらそう言えとお母様に言われたのですか?」
「はい。よくお分かりですね」
この子は素直なのではなく……真正直と呼ぶのが正しいか。嘘がつけない性格……いや、嘘をつくつもりがないのだろう。正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると言いそうだ。
「分かりました。現在は領地の端を開拓しているところです。領内が落ち着かない状態ですが、それでよろしければ婚礼の準備を進めさせましょう」
「ありがとうございます。嫁ぐと決めたからには私の生涯をエルマー様にお任せいたします」
「……私の生涯と言っても、まだ一〇歳でしょうが」
「年齢は関係ありません。私の心も体もエルマー様のものです。けっして他の者のものにはなりません」
こうしてシエスカ王国のラドミラ王女が俺に嫁ぐことになった。正直なところ、今は開拓で忙しい。できれば終わってからのほうが嬉しかったんだが。それに王女もまだ一〇歳。初めて会った時は六つになるかならないか。よくまあ俺のところへ嫁ぐ気になったものだ。
◆ ◆ ◆
転移ドアというのは素晴らしい。ありとあらゆる準備があっという間に終わる。貴族の結婚で大変なのが移動。貴族の移動は途中の領地に金を落とすために大切なことではあるが、今回はそれは無視して転移ドアで呼び集めることにした。それはレオナルト陛下の許可をとっている。
しかしまあ……どうしてここまでになったのか。俺は単なる準男爵の息子だったのにな。気分的に疲れた日には酒を飲みたくなる。上等な酒が届いているので、それを一つ開けた。
「喜ばしいことではないのですか?」
誰かと思ったらレイナウトだった。マリーナたちの従兄だが、彼女たちと違って俺とは少し距離があった。見た目は俺よりも少し上なだけだが、実際の年齢はずっと上だろう。竜の年齢は分からない。クラースは三〇〇〇歳を超えているらしいからな。
「喜ばしいか喜ばしくないかで考えたら喜ばしい。誰にとってもな。異国の姫を妻として迎えられる機会なんて滅多にない」
「ではどうしてそのような表情を?」
「誰も俺に対して一言も説明せず、気がつけば妻になる女性を押し付けられるからだ。それも何度となく」
「断ることはできないのですか?
「それを決めているのが俺よりも上の人たちだからな。俺に拒否権はない」
「……」
「それに……感じの悪い相手なら拒否もしようものが……」
ラドミラ王女本人に罪はない。エヴシェン王や両親に言われたからだろう。それが王族の務めだと。俺が本気で嫌だと言えば引き下がってくれるかもしれないが、そこまでしてシエスカ王国との関係を悪くしたくはない。
それにいろいろなことがあったが、その結果として辺境伯なんて過分な地位を与えられている。今回の話も自分としても悪い話ではない。国益にもなる。そうなると断ることはできない。
「思った以上に大変なんですね」
「どうだろう。もう少し俺に説明してくれれば気が楽になるはずなのにな。どうして誰も彼も俺が断れない状況を作ってから説明するのかと。まあ今さら愚痴っても仕方ないが」
「一杯付き合います」
「いい酒が届いている。山のようにな」
俺はレイナウトとグラスを傾けた。
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