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第二章:領主二年目第一部
双子の考え(二)
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私とカリンナはおそらく双子です。カリンナが少しつり目で私が少したれ目なことを除けば、見た目はほとんど変わりません。背丈もほぼ同じで、声もほとんど違いません。考え方は少し違いますけどね。
私たちは小さな町の孤児院で育てられました。双子で孤児院に預けられるのは珍しいそうです。この国の南の方には『双子は災いの元』という言葉があるらしいそうですけど、二人とも捨てることはあまりないそうです。
それはそうです。普通なら双子のどちらかを預け、もう一人は自分で育てるでしょう。一人は必要でしょうから。男女の双子なら、男の子を残して女の子を預けることがほとんどだそうです。
カリンナは姉らしく、自分が前になって色々としてくれていますけど、私からするとたまにヒヤヒヤします。特にエルマー様に対しては執着心が強い気がします。
一番最初は王都を出てこのドラゴネットに移動する時でした。私たちは巨大な鍋に入って移動することになりました。その時、カリンナが私に向かって指示を出してきました。
《私 触る 旦那様 股間 同時 あなた 触る 旦那様 股間》
双子なので以心伝心……かどうかは分かりませんけど、カリンナが言いたいことはなんとか分かります。でも不安です。すでに雇われた身なので言葉をかけるくらいなら問題はないと思いますけど、さすがに股間を触るのは不敬にならないのかと。
《股間 触る 問題 我々 首》
とりあえずそう返しました。するとすぐにカリンナから返ってきました。
《我々 女 旦那様 男 問題なし 逆 問題あり》
逆でなくても問題ではないのかと思いましたけど、カリンナは引きそうにありません。とりあえず了解と返しましたけど、本当に問題にならないかどうかドキドキしていました。
ようやく新しい仕事が決まって安心していたのに、ポイと放り出されたらどうなってしまうのか。ノルト男爵領は「北の荒野」や「死の大地」などと呼ばれている場所に作られた領地だそうです。魔獣が多いのだとか。魔獣の餌になるのは嫌です。
そして実行に移す時が来ました。当然のように触っているのは誰だと言われましたから、二人で大人しく返事をしました。それ以上は怒られませんでした。
この町に来てから分かりましたけど、エルマー様は男らしい方です。あちらの方の話ではありません。あちらはズボンの上から触った感じではかなり男らしそうでした。さすがに直に触る機会はなかなか得られそうにありませんけど。
そうではなく、院長先生や前の旦那様と違って、私たちをおかしな目で見たことはありません。カリンナが何をしても、いつも困ったような顔をしています。
そしてカリンナは気がついていないのかもしれませんけど、あの態度は小さな子供が好きな人を振り向かせたくてする態度ですよね。少し強引すぎると思いますけど。
元々はおかしな目を向けられないように下ネタを言い始めた気がしますけど、どうもカリンナは目的が変わってしまっている気がします。それに付き合ってくれるエルマー様は優しい方です。
優しい方と言って思い出しました。先日カリンナが失敗しました。止められなかった私にも責任はありますけど。
真面目に料理の勉強と仕事をしたら頭を撫でてもらえるという約束をエルマー様としました。ようやくです。エルマー様からのお触りです。場所が頭なのが残念です。
でもその次の日でした。カリンナがアンゲリカさんに料理を全て大盛りにしてほしいと頼んだのは。お金は二人の給料から支払うからと。なぜ二人なのか。前もって相談くらいはしてほしいと思います。
頑張って働いているのをお客さんたちに証明してもらおうとしたようですが、少しズレていると思います。あれでは賄賂にしかならないでしょう。でもカリンナが必死に考えたのでそのまま計画を進めることにしました。
思った通り小細工がバレました。お客さんたちも演技が下手すぎます。あれでは何かあるとしか思えません。お陰で大変なことになりかけましたけど、真面目に働いていた分は評価して頭を撫でてもらいました。初めてのお触りでした。
ここ何か月もエルマー様とカリンナを見ていますけど、エルマー様はカリンナにかなり甘いようです。言葉としてはかなり厳しいことを言っていますけど、最後には仕方がないと諦めたような感じになります。怒っているのに途中で怒らなくなるような、何とも不思議な感じがします。
もちろん私に対して厳しい訳ではありません。私に対しても優しい方です。カリンナに甘いと感じるのも、結局は行動する順番のせいです。
カリンナは姉として私よりも必ず先に行動します。でもカリンナがエルマー様に抱きつこうとして止められ、その時点で終わりということがほとんどです。意外に私は抱きつけていません。その点では少し不満が残ります。
今日もカリンナは頑張っているようです。そしていつものように相手にされていません。今も目の前でカリンナがエルマー様にじゃれつこうとして躱されています。日に日にエルマー様が身軽になっている気がします。
それにしてもカリンナはいつ自分の気持ちに気がつくのでしょうか……と思っていたら、どうやら気がついたようです。エルマー様に「そもそもどうして二人は俺に寄ってくるんだ?」と聞かれて、下ネタを口にしていた理由を思い出したようです。
おかしな目に遭わないように、気持ち悪がられるためにおかしなことをし始めましたが、エルマー様に会ってからはどうもムキになって気を引こうとして、気がついたら構ってほしくなっていた訳です。もちろん私もほとんど同じですけど、カリンナを後ろから見ていたので少し冷静でいられました。
エルマー様にカリンナを持っていくように言われたので部屋に持ち帰りましたけど、横を見ると今でも「う~ん、う~ん」と悩んでいます。どのような結論を出すのか楽しみでもあり不安でもあります。暴走しなければいいのですけど。
私たちは小さな町の孤児院で育てられました。双子で孤児院に預けられるのは珍しいそうです。この国の南の方には『双子は災いの元』という言葉があるらしいそうですけど、二人とも捨てることはあまりないそうです。
それはそうです。普通なら双子のどちらかを預け、もう一人は自分で育てるでしょう。一人は必要でしょうから。男女の双子なら、男の子を残して女の子を預けることがほとんどだそうです。
カリンナは姉らしく、自分が前になって色々としてくれていますけど、私からするとたまにヒヤヒヤします。特にエルマー様に対しては執着心が強い気がします。
一番最初は王都を出てこのドラゴネットに移動する時でした。私たちは巨大な鍋に入って移動することになりました。その時、カリンナが私に向かって指示を出してきました。
《私 触る 旦那様 股間 同時 あなた 触る 旦那様 股間》
双子なので以心伝心……かどうかは分かりませんけど、カリンナが言いたいことはなんとか分かります。でも不安です。すでに雇われた身なので言葉をかけるくらいなら問題はないと思いますけど、さすがに股間を触るのは不敬にならないのかと。
《股間 触る 問題 我々 首》
とりあえずそう返しました。するとすぐにカリンナから返ってきました。
《我々 女 旦那様 男 問題なし 逆 問題あり》
逆でなくても問題ではないのかと思いましたけど、カリンナは引きそうにありません。とりあえず了解と返しましたけど、本当に問題にならないかどうかドキドキしていました。
ようやく新しい仕事が決まって安心していたのに、ポイと放り出されたらどうなってしまうのか。ノルト男爵領は「北の荒野」や「死の大地」などと呼ばれている場所に作られた領地だそうです。魔獣が多いのだとか。魔獣の餌になるのは嫌です。
そして実行に移す時が来ました。当然のように触っているのは誰だと言われましたから、二人で大人しく返事をしました。それ以上は怒られませんでした。
この町に来てから分かりましたけど、エルマー様は男らしい方です。あちらの方の話ではありません。あちらはズボンの上から触った感じではかなり男らしそうでした。さすがに直に触る機会はなかなか得られそうにありませんけど。
そうではなく、院長先生や前の旦那様と違って、私たちをおかしな目で見たことはありません。カリンナが何をしても、いつも困ったような顔をしています。
そしてカリンナは気がついていないのかもしれませんけど、あの態度は小さな子供が好きな人を振り向かせたくてする態度ですよね。少し強引すぎると思いますけど。
元々はおかしな目を向けられないように下ネタを言い始めた気がしますけど、どうもカリンナは目的が変わってしまっている気がします。それに付き合ってくれるエルマー様は優しい方です。
優しい方と言って思い出しました。先日カリンナが失敗しました。止められなかった私にも責任はありますけど。
真面目に料理の勉強と仕事をしたら頭を撫でてもらえるという約束をエルマー様としました。ようやくです。エルマー様からのお触りです。場所が頭なのが残念です。
でもその次の日でした。カリンナがアンゲリカさんに料理を全て大盛りにしてほしいと頼んだのは。お金は二人の給料から支払うからと。なぜ二人なのか。前もって相談くらいはしてほしいと思います。
頑張って働いているのをお客さんたちに証明してもらおうとしたようですが、少しズレていると思います。あれでは賄賂にしかならないでしょう。でもカリンナが必死に考えたのでそのまま計画を進めることにしました。
思った通り小細工がバレました。お客さんたちも演技が下手すぎます。あれでは何かあるとしか思えません。お陰で大変なことになりかけましたけど、真面目に働いていた分は評価して頭を撫でてもらいました。初めてのお触りでした。
ここ何か月もエルマー様とカリンナを見ていますけど、エルマー様はカリンナにかなり甘いようです。言葉としてはかなり厳しいことを言っていますけど、最後には仕方がないと諦めたような感じになります。怒っているのに途中で怒らなくなるような、何とも不思議な感じがします。
もちろん私に対して厳しい訳ではありません。私に対しても優しい方です。カリンナに甘いと感じるのも、結局は行動する順番のせいです。
カリンナは姉として私よりも必ず先に行動します。でもカリンナがエルマー様に抱きつこうとして止められ、その時点で終わりということがほとんどです。意外に私は抱きつけていません。その点では少し不満が残ります。
今日もカリンナは頑張っているようです。そしていつものように相手にされていません。今も目の前でカリンナがエルマー様にじゃれつこうとして躱されています。日に日にエルマー様が身軽になっている気がします。
それにしてもカリンナはいつ自分の気持ちに気がつくのでしょうか……と思っていたら、どうやら気がついたようです。エルマー様に「そもそもどうして二人は俺に寄ってくるんだ?」と聞かれて、下ネタを口にしていた理由を思い出したようです。
おかしな目に遭わないように、気持ち悪がられるためにおかしなことをし始めましたが、エルマー様に会ってからはどうもムキになって気を引こうとして、気がついたら構ってほしくなっていた訳です。もちろん私もほとんど同じですけど、カリンナを後ろから見ていたので少し冷静でいられました。
エルマー様にカリンナを持っていくように言われたので部屋に持ち帰りましたけど、横を見ると今でも「う~ん、う~ん」と悩んでいます。どのような結論を出すのか楽しみでもあり不安でもあります。暴走しなければいいのですけど。
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