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第四章:領主二年目第三部
アルマの出産
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エルザの出産から一日遅れてアルマも男の子を産んだ。一日ずれで立て続けだった。もし一緒だったら産婆たちが大変なことになっただろう。少しだけずらして生まれてくるとは親孝行で産婆孝行な子供たちだ。
「名前は前に決めた通りでもいいですか?」
「ああ、陛下たちが選んだ名前だからな」
エルザの子供はディオン王とクロエ王妃、アルマの子供はカミル陛下とヘルミーナ王妃の希望が伝えられている。もっともそうでなければ駄目だというわけではなく、これも候補に入れてほしいと渡されたものだ。
「ではカールハインツでお願いします」
「それなら次男はカールハインツで決まりだ」
カミル陛下のKとヘルミーナ王妃のHが入っている。カール=ハインツと区切る書き方もある。このように複数の名前を合わせた複合名も見かけることがある。理屈で考えればどんな名前でも複合名にすることができるが、よく聞く名前は限られる。
カールハインツ以外にカール=グスタフ、フランツ=ヨーゼフなどもよくある名前だ。女性ならマリー=ルイーゼ、区切ることは滅多にないが、アンネマリー、アンネリーゼ、ハイデマリー、リーゼロッテもそうだな。
ここしばらく子供の名前ばかり考えていたが、こうやって見ていると男はカール、女はマリーが複合名になりやすい。ゴール王国でも女性にはマリーが付く名前が多いそうだ。
アルマはヘルミーナ王妃の血は引いていないが、それでもぜひにということだった。ちなみにアルマの母親の名前はロッテだ。
エルザの方はディオン王がクロエ王妃の希望を聞いていて、先ほど父娘二人で名前を考えていた。こちらもDとCを候補に入れているが……。
「エルザは自分の希望はなかったのか?」
「そういうわけではないのですが、それは次ということで」
「まあそうだな」
何も子供はこの双子だけとは決まっていない。子作りを仕事と割り切るつもりはないが、俺もエルザもまだ若い。いずれまた作ることになるだろう。
「でもゴール王国風の読み方も可愛いですね」
アルマン王国ならツェツィリアという名前はゴール王国ならセシリアになる。国境近くでは混ざることもあるのでおかしくはならないだろう。エルザの名前がエルサと発音される地域もある。
「それならセシリアとダニエラでいいのか?」
「はい」
子供のことは国に届け出る。これは跡継ぎで揉めないようにするためにだ。そして領民たちには子供たちのお披露目をするとともに名前を公表する。いずれはここの領主だからだ。
「長男アウグスティン、次男カールハインツ、双子の長女セシリア、次女ダニエラ。この順番にするぞ」
「「「はい」」」
「私も早くお仲間に入りたいですわ」
「次の春の楽しみだな」
「はい」
ナターリエも無事に妊娠した。時期的には俺が戦争に出かける前の五月あたりだろうか。来年の三月から四月あたりが予定日になるんだろう。
「来年は私、ヘルガさん、アンゲリカさん、カサンドラさん、アメリアさん、ジョゼさん、それとゴール王国の貴族の娘たちでしたか?」
「そちらは嫁ぎにくるわけじゃないぞ」
ディオン王から聞いたのは、ゴール王国でヘルガを侮辱してローサを怒らせたご婦人たちの娘たちが移民を率いてこちらに向かっている途中らしい。俺はてっきり移民を連れてくるだけだと思っていたが、そうじゃないことが分かった。
「彼女たちはここの留まるぞ。身内の不始末を償うために来るわけだからな。お主が妻にしようが奴隷のようにこき使おうが、彼女たちにはそれに逆らうことはできない。もし逃げたと分かればその元凶が罰せられるだけだ」
ディオン王からそんなことを聞いた。ローサを怒らせたのは七人で、その七人が選んだ娘たちは間違いなく来るそうだ。娘がいない婦人もいて、その場合は一族から一人選ばせたそうだ。ここに来させられる娘からするととばっちりもいいところだが、そういう決まりらしい。
それ以外にも希望者があれば一緒に来させるようにとディオン王はリシャール王子に伝えたそうで、それなりに増えるだろうということだった。そんなに増えるか? わざわざゴール王国の王都からここまでだぞ? どう考えても二か月では無理だろう。そんな苦労をしたがる貴族の娘がいるとも思えないんだが。
俺としてはその七人の娘たちに対して何か思うところがあるわけではない。ヘルガもローサもあれからはそのことについては何も言っていない。聞けば聞くほど厳しい話だと思うが、それが身内の不始末ということだ。
ゴール王国では、もし成人が大罪を犯した場合、当人は打ち首にされる。功績のある貴族なら名誉ある死、つまり毒酒を選ぶことも可能だそうだ。そして血の繋がりのある三親等以内は全員奴隷落ちで強制労働。貴族は横の繋がりを維持するのに政略結婚を繰り返しているため、三親等以内とするとかなり影響が多い。だからディオン王は一人差し出させることで婦人たちの責任を問わないことにした。
アルマン王国の貴族の場合、成人が大罪を犯せば親は関係なく、責任を負うのは自分と妻と子供だけだったはずだ。当人の扱いは同じく打ち首か毒酒で、成人男性は処刑、女性と未成年は生涯を修道院の中で暮らすことになる。平民の場合は当人は処刑、当人以外は財産を没収して町から放り出される。
子供が生まれたばかりなのにそんな物騒なことを考えてしまったが、その七人が無事にここに到着すれば役人のような仕事をしてもらいたいと思う。これ以上妻や愛人は必要ないからだ。ディオン王は俺に「好きに扱えばいい」と言った。カレンは「貰っておいたら?」と言っていたが、いきなり七人も増やしてどうするんだという話だ。
「名前は前に決めた通りでもいいですか?」
「ああ、陛下たちが選んだ名前だからな」
エルザの子供はディオン王とクロエ王妃、アルマの子供はカミル陛下とヘルミーナ王妃の希望が伝えられている。もっともそうでなければ駄目だというわけではなく、これも候補に入れてほしいと渡されたものだ。
「ではカールハインツでお願いします」
「それなら次男はカールハインツで決まりだ」
カミル陛下のKとヘルミーナ王妃のHが入っている。カール=ハインツと区切る書き方もある。このように複数の名前を合わせた複合名も見かけることがある。理屈で考えればどんな名前でも複合名にすることができるが、よく聞く名前は限られる。
カールハインツ以外にカール=グスタフ、フランツ=ヨーゼフなどもよくある名前だ。女性ならマリー=ルイーゼ、区切ることは滅多にないが、アンネマリー、アンネリーゼ、ハイデマリー、リーゼロッテもそうだな。
ここしばらく子供の名前ばかり考えていたが、こうやって見ていると男はカール、女はマリーが複合名になりやすい。ゴール王国でも女性にはマリーが付く名前が多いそうだ。
アルマはヘルミーナ王妃の血は引いていないが、それでもぜひにということだった。ちなみにアルマの母親の名前はロッテだ。
エルザの方はディオン王がクロエ王妃の希望を聞いていて、先ほど父娘二人で名前を考えていた。こちらもDとCを候補に入れているが……。
「エルザは自分の希望はなかったのか?」
「そういうわけではないのですが、それは次ということで」
「まあそうだな」
何も子供はこの双子だけとは決まっていない。子作りを仕事と割り切るつもりはないが、俺もエルザもまだ若い。いずれまた作ることになるだろう。
「でもゴール王国風の読み方も可愛いですね」
アルマン王国ならツェツィリアという名前はゴール王国ならセシリアになる。国境近くでは混ざることもあるのでおかしくはならないだろう。エルザの名前がエルサと発音される地域もある。
「それならセシリアとダニエラでいいのか?」
「はい」
子供のことは国に届け出る。これは跡継ぎで揉めないようにするためにだ。そして領民たちには子供たちのお披露目をするとともに名前を公表する。いずれはここの領主だからだ。
「長男アウグスティン、次男カールハインツ、双子の長女セシリア、次女ダニエラ。この順番にするぞ」
「「「はい」」」
「私も早くお仲間に入りたいですわ」
「次の春の楽しみだな」
「はい」
ナターリエも無事に妊娠した。時期的には俺が戦争に出かける前の五月あたりだろうか。来年の三月から四月あたりが予定日になるんだろう。
「来年は私、ヘルガさん、アンゲリカさん、カサンドラさん、アメリアさん、ジョゼさん、それとゴール王国の貴族の娘たちでしたか?」
「そちらは嫁ぎにくるわけじゃないぞ」
ディオン王から聞いたのは、ゴール王国でヘルガを侮辱してローサを怒らせたご婦人たちの娘たちが移民を率いてこちらに向かっている途中らしい。俺はてっきり移民を連れてくるだけだと思っていたが、そうじゃないことが分かった。
「彼女たちはここの留まるぞ。身内の不始末を償うために来るわけだからな。お主が妻にしようが奴隷のようにこき使おうが、彼女たちにはそれに逆らうことはできない。もし逃げたと分かればその元凶が罰せられるだけだ」
ディオン王からそんなことを聞いた。ローサを怒らせたのは七人で、その七人が選んだ娘たちは間違いなく来るそうだ。娘がいない婦人もいて、その場合は一族から一人選ばせたそうだ。ここに来させられる娘からするととばっちりもいいところだが、そういう決まりらしい。
それ以外にも希望者があれば一緒に来させるようにとディオン王はリシャール王子に伝えたそうで、それなりに増えるだろうということだった。そんなに増えるか? わざわざゴール王国の王都からここまでだぞ? どう考えても二か月では無理だろう。そんな苦労をしたがる貴族の娘がいるとも思えないんだが。
俺としてはその七人の娘たちに対して何か思うところがあるわけではない。ヘルガもローサもあれからはそのことについては何も言っていない。聞けば聞くほど厳しい話だと思うが、それが身内の不始末ということだ。
ゴール王国では、もし成人が大罪を犯した場合、当人は打ち首にされる。功績のある貴族なら名誉ある死、つまり毒酒を選ぶことも可能だそうだ。そして血の繋がりのある三親等以内は全員奴隷落ちで強制労働。貴族は横の繋がりを維持するのに政略結婚を繰り返しているため、三親等以内とするとかなり影響が多い。だからディオン王は一人差し出させることで婦人たちの責任を問わないことにした。
アルマン王国の貴族の場合、成人が大罪を犯せば親は関係なく、責任を負うのは自分と妻と子供だけだったはずだ。当人の扱いは同じく打ち首か毒酒で、成人男性は処刑、女性と未成年は生涯を修道院の中で暮らすことになる。平民の場合は当人は処刑、当人以外は財産を没収して町から放り出される。
子供が生まれたばかりなのにそんな物騒なことを考えてしまったが、その七人が無事にここに到着すれば役人のような仕事をしてもらいたいと思う。これ以上妻や愛人は必要ないからだ。ディオン王は俺に「好きに扱えばいい」と言った。カレンは「貰っておいたら?」と言っていたが、いきなり七人も増やしてどうするんだという話だ。
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