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第二章:領主二年目第一部
新しい屋敷の準備(三):土地を買うということ
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数回に渡ってライマーに付き添ってもらって建物の解体と地下室の埋め戻しを行った。商会ができてからは数日王都にいたら数日領地に戻るという風に過ごしているので、それに合わせて仕事をすることにしていた。
俺としてはライマーはいつもいる必要はないと思うんだが、根が真面目なのか、俺が仕事をする日には商会を訪れて、俺に同行している。
ライマーは工部省の若い役人で、偶然だろうが俺と同い年だったので話しやすい。
土木工事は工部省の管轄になる。俺に土地購入の提案をしたエクムント殿は一時期は工部省にいたらしく、そのせいで土地関係も強いらしい。
ちなみに土地の契約や税は財務省だ。工部省は掘ったり埋めたりするのが仕事になる。
「ノルト男爵、色々な方からあなたの話は聞いていましたが、やはり見ると聞くとは大違いですね」
「色々な方なあ。レオナルト殿下か?」
「はい。主には殿下です。それ以外には財務省のエクムント殿や、先日から商会の方にお邪魔していますので、アントン殿を始めとした商会の人たちですね。他にはあの貧民街の現場にいる人たちですね。もう貧民街とは呼べないでしょうが」
「そう言えば、あの街区はどういう扱いになるんだ?」
「本来あった番地がまた使われます。第五一区の三八番から四六番です」
「番地なんて意識しなかったが、うちの屋敷にも番地があったんだな」
王都を上から見て一二分割し、一番北を第一区、その右を第二区、と右回りに第一二区まで順番に割り振られている。
王都は何度か城壁が外へ動いたので、第一区の外側に第一三区、第二区の外側に第一四区、と新たに右回りに一二の区が増えた。現在は五重になっていて、うちは第三区の外の外の外の外にある第五一区の中にある。
そのような構造になっているので、外側に行けば行くほど区は広くなる。つまり外側の方が土地が手に入りやすく、内側の土地は貴重だ。
第一区から第一二区で大きな土地を買って大きな屋敷を建てるのは貴族なら夢だと言える。
ちなみに、俺が新しく買った裏の土地は第五一区の中でも一番王城寄りで、道の向かいは第三九区の一番外側になる。
「生活する上ではほとんど使わないと思いますが、王城以外は全て番地がありますから」
「それはそうだが、うちの土地がものすごい寄せ集めになったと思ってな」
「貴族街ではありませんので、細分化されていますからね」
元の土地、教会と孤児院の土地、新しく買った土地。その三つで凸に近い土地になっている。その両側にL字と逆L字の土地を貰うことになったが、それぞれ三つの土地でできているので、全部で九つの土地を寄せ集めて四角い土地になった。
しかしまあ、そろそろ新しい屋敷を建てなければならない。だがこれが終われば土地を貰えるので、そうなると敷地全体の構成が変わってくる。だからまずは仕事を終わらせて、屋敷はそれからということになっている。
もっとも王都で建築に関わっている工房や商会は貴族の屋敷の改修などで大忙しなので、結局は自分のところで建てることになるだろう。フランツたちに頼むか、それとも俺が頑張るか。新しい街区の方もそろそろ終わりそうだが、さてどうなるか。
◆ ◆ ◆
「ノルト男爵、ではこちらが王太子殿下からお預かりした書類になります」
「たしかに受け取った。この土地も合わせて立派な屋敷を建てると殿下に伝えてほしい」
「間違いなくお伝えします。それではありがとうございました」
ライマーが書類を渡して帰って行く。土地の譲渡証明書だ。元々はどこかの貴族の関係者が持っていた土地のようだが、今回は仕事の報酬として俺に譲渡されたことになる。
うちの屋敷は貧民街に近い。けっして貴族が近付きたい場所ではないが、おそらく隠れ蓑として使われていた物件がいくつもあったのだろう。それらがまとめて国によって差し押さえられることになった。
それが分かったのは、四半期ごとの支払いがなかったからで、その所有者を調べたら、いなくなった貴族と繋がりがあったということだらしい。
よく「土地を買う」という言い方をするが、王都の城壁内に関しては買う訳ではない。王都の土地は全て国が所有している。だから売買とはその土地の利用権を変更するということになる。
その際には国に届け出ることになる訳だが、その手続には当然ながらそれなりの金がかかる。その金額は場所や広さによって違うが、けっして安くはない。
さらに言えば、国としては土地が購入され、その土地がそのまま代々使われるのでは困る。土地は有限だからだ。だから税として一定の賃料を徴収することになっていて、それは四半期ごとに徴収される。
俺は商会の建物をヨーゼフから譲り受けたが、その際にヨーゼフから権利書を預かり、その土地を今度は俺が所有するように国に届け出て変更してもらった。
後で確認するとヨーゼフはあらかじめ今年の第一四半期の分まで支払っていた。今年の頭までは王都にいたから仕方がない。その分は何らかの形で彼らに返すことになるだろう。
貴族というのは、例え爵位は一番下であっても、平民の家よりも狭い敷地に住む訳にはいかない。おそらく反骨心のある父はそう考えていたのだろうと思われる。
うちの屋敷がある場所は貧民街に近いのでそれほど高くはないが、それでも土地は狭くはない。そこそこの広さがあるとなれば、四半期ごとの支払いは銀貨一枚や二枚程度ではない。
もちろん一度支払いが遅れたくらいで何かを言われることはないが、それでも二度三度と続けば確実に追い出されるだろう。それが今回の俺の仕事に繋がった訳だ。
「これで一つの土地として扱いやすくなったが、その前に解体だな」
「ご苦労様です」
土地は貰ったが上物は残っている。俺が何日か働いたくらいであれだけの土地が貰えたのであれば、上物の片付けくらいは喜んでしようというものだ。
俺としてはライマーはいつもいる必要はないと思うんだが、根が真面目なのか、俺が仕事をする日には商会を訪れて、俺に同行している。
ライマーは工部省の若い役人で、偶然だろうが俺と同い年だったので話しやすい。
土木工事は工部省の管轄になる。俺に土地購入の提案をしたエクムント殿は一時期は工部省にいたらしく、そのせいで土地関係も強いらしい。
ちなみに土地の契約や税は財務省だ。工部省は掘ったり埋めたりするのが仕事になる。
「ノルト男爵、色々な方からあなたの話は聞いていましたが、やはり見ると聞くとは大違いですね」
「色々な方なあ。レオナルト殿下か?」
「はい。主には殿下です。それ以外には財務省のエクムント殿や、先日から商会の方にお邪魔していますので、アントン殿を始めとした商会の人たちですね。他にはあの貧民街の現場にいる人たちですね。もう貧民街とは呼べないでしょうが」
「そう言えば、あの街区はどういう扱いになるんだ?」
「本来あった番地がまた使われます。第五一区の三八番から四六番です」
「番地なんて意識しなかったが、うちの屋敷にも番地があったんだな」
王都を上から見て一二分割し、一番北を第一区、その右を第二区、と右回りに第一二区まで順番に割り振られている。
王都は何度か城壁が外へ動いたので、第一区の外側に第一三区、第二区の外側に第一四区、と新たに右回りに一二の区が増えた。現在は五重になっていて、うちは第三区の外の外の外の外にある第五一区の中にある。
そのような構造になっているので、外側に行けば行くほど区は広くなる。つまり外側の方が土地が手に入りやすく、内側の土地は貴重だ。
第一区から第一二区で大きな土地を買って大きな屋敷を建てるのは貴族なら夢だと言える。
ちなみに、俺が新しく買った裏の土地は第五一区の中でも一番王城寄りで、道の向かいは第三九区の一番外側になる。
「生活する上ではほとんど使わないと思いますが、王城以外は全て番地がありますから」
「それはそうだが、うちの土地がものすごい寄せ集めになったと思ってな」
「貴族街ではありませんので、細分化されていますからね」
元の土地、教会と孤児院の土地、新しく買った土地。その三つで凸に近い土地になっている。その両側にL字と逆L字の土地を貰うことになったが、それぞれ三つの土地でできているので、全部で九つの土地を寄せ集めて四角い土地になった。
しかしまあ、そろそろ新しい屋敷を建てなければならない。だがこれが終われば土地を貰えるので、そうなると敷地全体の構成が変わってくる。だからまずは仕事を終わらせて、屋敷はそれからということになっている。
もっとも王都で建築に関わっている工房や商会は貴族の屋敷の改修などで大忙しなので、結局は自分のところで建てることになるだろう。フランツたちに頼むか、それとも俺が頑張るか。新しい街区の方もそろそろ終わりそうだが、さてどうなるか。
◆ ◆ ◆
「ノルト男爵、ではこちらが王太子殿下からお預かりした書類になります」
「たしかに受け取った。この土地も合わせて立派な屋敷を建てると殿下に伝えてほしい」
「間違いなくお伝えします。それではありがとうございました」
ライマーが書類を渡して帰って行く。土地の譲渡証明書だ。元々はどこかの貴族の関係者が持っていた土地のようだが、今回は仕事の報酬として俺に譲渡されたことになる。
うちの屋敷は貧民街に近い。けっして貴族が近付きたい場所ではないが、おそらく隠れ蓑として使われていた物件がいくつもあったのだろう。それらがまとめて国によって差し押さえられることになった。
それが分かったのは、四半期ごとの支払いがなかったからで、その所有者を調べたら、いなくなった貴族と繋がりがあったということだらしい。
よく「土地を買う」という言い方をするが、王都の城壁内に関しては買う訳ではない。王都の土地は全て国が所有している。だから売買とはその土地の利用権を変更するということになる。
その際には国に届け出ることになる訳だが、その手続には当然ながらそれなりの金がかかる。その金額は場所や広さによって違うが、けっして安くはない。
さらに言えば、国としては土地が購入され、その土地がそのまま代々使われるのでは困る。土地は有限だからだ。だから税として一定の賃料を徴収することになっていて、それは四半期ごとに徴収される。
俺は商会の建物をヨーゼフから譲り受けたが、その際にヨーゼフから権利書を預かり、その土地を今度は俺が所有するように国に届け出て変更してもらった。
後で確認するとヨーゼフはあらかじめ今年の第一四半期の分まで支払っていた。今年の頭までは王都にいたから仕方がない。その分は何らかの形で彼らに返すことになるだろう。
貴族というのは、例え爵位は一番下であっても、平民の家よりも狭い敷地に住む訳にはいかない。おそらく反骨心のある父はそう考えていたのだろうと思われる。
うちの屋敷がある場所は貧民街に近いのでそれほど高くはないが、それでも土地は狭くはない。そこそこの広さがあるとなれば、四半期ごとの支払いは銀貨一枚や二枚程度ではない。
もちろん一度支払いが遅れたくらいで何かを言われることはないが、それでも二度三度と続けば確実に追い出されるだろう。それが今回の俺の仕事に繋がった訳だ。
「これで一つの土地として扱いやすくなったが、その前に解体だな」
「ご苦労様です」
土地は貰ったが上物は残っている。俺が何日か働いたくらいであれだけの土地が貰えたのであれば、上物の片付けくらいは喜んでしようというものだ。
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